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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

干潟再生に向けて

2021年04月05日
神戸 中村高也

 皆さまこんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。桜の開花宣言とともに暖かい空気が流れ込み、神戸にも春がやってきたと感じている今日この頃ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。今回は先日行ってきました兵庫県西宮市にある甲子園浜の様子をご紹介いたします。

甲子園浜の干潟【甲子園浜の干潟】

 このAR日記でも何度か紹介させていただいておりますが、この甲子園浜は大阪湾に残された数少ない干潟の1つであり、渡り鳥の中継地として非常に重要な役割を担っていることから、昭和53年11月に国指定鳥獣保護区として指定されております。鳥たちの渡りが行われる春もにぎやかになりますが、冬季にも越冬のためにたくさんのカモが飛来し、観察する人の心をいやしてくれています。

2月に行われた冬鳥観察会の様子2月に行われた冬鳥観察会の様子】

エサをとるヒドリガモとユリカモメ【エサをとるヒドリガモとユリカモメ】

 さて、今回こちらにやってきたのは、昨年7月に干潟の中に投入した割石の調査のためです。

 (※前回の様子はこちらをご参照ください。)

 あれから8か月ほど経ちましたが、果たして本当に生き物たちの住処になっているのか私も気になっておりました。

残っていた割石(一部)【残っていた割石(一部)

 皆さんで協力して干潟に入れたたくさんの割石でしたが、今回の調査時に干潟の上に残っていたのは全体のおよそ半分もありませんでした。他の石は砂の中に埋もれてしまったのか。または波で流されてしまったのかもしれません。予想以上に石が少なくなっており、雲行きが怪しくなっておりましたが、残った石をひっくり返して見てみると・・・

いました!イソガニです【いました!イソガニです】

この石の間にたくさんのカニが生息していました【この石の間にたくさんのカニが生息していました】

他にもゴカイの仲間や貝の生息がありました【他にもゴカイの仲間や貝の生息がありました】

 まだ石を置いてから1年もたっておりませんが、それでも生き物たちは順調に住み着いてくれていることがわかりました。石を投入した箇所では、鳥たちがエサをついばむような姿は見られませんでしたが、こうしてカニや貝といった底生生物が住みつく環境があれば、それをエサにする魚や鳥たちが寄り付き、生物多様性の観点からもより良い環境になっていくのではないでしょうか。私はこれからもこの干潟を見守っていきたいと思います。

立入禁止ののぼりと標識 甲子園浜では、渡り鳥が飛来する4月~5月の2か月間、えさ場の確保のため、西宮市の条例により一部干潟の立入りが制限されておりますのでご注意ください。干潟へ降りることはできませんが、遊歩道からの観察は可能ですので、鳥を驚かさないように静かに見守っていただきます様お願いします。

※甲子園浜生物保護地区への立入禁止のお願い(西宮市)