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アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

近畿地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年11月

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2021年11月29日白浜のはしっこから地球を体感〜ジオ冒険!

吉野熊野国立公園 田辺 戸口協子

冷えた朝の通勤時に、沿岸で蒸気霧を見ることができる日が多くなってきました。

(蒸気霧:海面で蒸発した水蒸気が、陸からの冷たい大気によって急激に冷やされることで湯気のように立つ霧が見られる現象です。)

みなさま、こんにちは。

田辺管理官事務所の戸口です。

空の青色が鮮やかな秋晴れの10月30日に、白浜町で開催したふれあいイベントの様子をお伝えしたいと思います。

紀南地域の小学生を対象に、三段壁と千畳敷の成り立ちをジオガイドさんに教えてもらうジオツアーを開催しました。

白浜町にある三段壁と千畳敷は、近隣の円月島と共に「円月島(高嶋)・千畳敷・三段壁」の名称で国指定の名勝地もなっていて、白浜に観光にくる人は三段壁・千畳敷とセットで必ずというくらい訪れる場所です。地元の皆さんにもお馴染みの観光地で、今回参加いただいた子どもたちもみんな「一度来たことがある」と答えてくれました。

しかし、今回のツアーは「冒険」。一般的には雄大な海の景色を見て楽しむ場所となりますが、違う角度から探検し、壮大な地球の営みを体感することを目的としています。

さて、どんな冒険になるでしょう!

01_sandanpeki(2021.02.03) 02_senjojiki(2020.07.16)

小学生8名と同伴の保護者ら合わせて13名の参加者が集まり、ツアースタート。

ジオガイドさんからは、三段壁の名前の由来は、見段(みだん)→ミ段→三段と変化したと説明を受けました。見段とは高い場所から見通す場所を意味し、かつてボラ漁に利用されていたと言います。見張り役が沖に集まるボラの群れを見つけると、のろしを上げて仲間に知らせ、一斉に漁に出ていたそうです。

三段壁は高低差40mの切り立った崖になっています。このような地形ができるのは大地が南から押され山型に押し上げられたところにヒビが入り、そこから崩れていくためですが、ジオガイドさんからはその様子を、なんとコッペパンを使って分かりやすく説明していただきました。

03_sandanpeki-setumei1(2021.10.30) 04_sandanpeki-setumei2(2021.10.30)

次に、2018年9月台風21号の後に突然現れた大きな石の塊「サドンロック」(2021年4月に命名)について。波によって運ばれたと考えられているとの説明がなされ、こんな大きな石が波で運ばれてくることを聞いて、みんな一様にビックリしていました。水の動きの力の大きさに驚かされます。

ちなみにサドンロックの「サドン」は〝突然に〟を意味する英語の「sudden」と「三段」が掛けられた名前になっています。

05_sadonrokku(2021.10.30)
サドンロック

次からいよいよ冒険に入ります。ちょっとしたけもの道と少し段差になっている岩を降りて、三段壁のうちで主だって観光地となっているエリアから少し外れたところにワクワクしながら向かいました。

06_sandanpeki-anaba(2021.10.30)

周辺を散策していると、ガイドさんが立ち止まり、地面を指さします。これは一体...?

07_seikon-kaseki(2021.10.30)
「これ、な-んだ?」

これは「昔の生物が住んでいた巣穴の跡」。"生痕化石(せいこんかせき)"と呼ばれるもので、色んな形があります。この生痕化石はサラシノイデスという生物のものだそうです。

そのほかにも、波など水の動きや流れの跡が水底に付けた模様が化石となって残っている"漣痕化石(れんこんかせき)"も教えてもらいました。

08_renkon-kaseki(2021.10.30)
漣痕化石

説明を受けて、みんなで化石探しです! 子どもたちはみな、化石探しにワクワクし、目が輝いていました。よく目を凝らすと、いろんなところにいろんな化石が見られ、それぞれ違った形の化石を見つけて、何の化石かを尋ねていました。

化石探しのあとはちょっとした岩登りのアドベンチャーコースを進みます。

09_aadobencha-ko-su(2021.10.30) 10_adobecha-ko-su(2021.10.30)

ガイドさんから先頭で手足の付き方を教わり、ほかのスタッフも要所で目を離さずに補助をし、みんな無事に登りきれました。

その後、千畳敷に移動し地層の観察です。千畳敷でも生痕化石や漣痕化石をたくさん見つけることができましたが、上から観察した三段壁と異なり、それらを横から観察することができました。

11_renkon-kaseki(2021.11.16)12_seikon-kaseki(2021.11.16)

漣痕化石の断面             縦に伸びた生痕化石

                     (上下面にも生痕化石が見られる)

生痕化石は、横から観察すると、生物が縦方向にも巣穴を広げ、立体的に動いていた様子が分かりました。漣痕化石は、ところにより波の打ち方が異なる様子が分かりました。参加した子どもたちに見えている世界は、大昔の時代へ想像が広がったことと思います。

千畳敷では、ジオガイドさんから「ユビナガコウモリ」の紹介もありました。

千畳敷の側にある海食洞が、近畿で唯一のユビナガコウモリの繁殖地になっていることを初めて知った子が多かったです。子どもたちからは、コウモリは何を食べているのか、飛んでいるときに人間にぶつかったりしないのか、などの質問が飛び交いました。ユビナガコウモリの出産・子育て時期は初夏であるため、今はもういませんでしたが、また来年にユビナガコウモリにも会えるといいですね。

なお、ユビナガコウモリについては以前私がアクティブ・レンジャー日記で取り上げたものがあるので、参考までに紹介いたします。

URL:https://kinki.env.go.jp/blog/2021/07/post-187.html

13_sejojiki-kansatu(2021.10.30

さて、最後に一つ、このように冒険を楽しめる場所で残念なことがあります。

それは、落書きです。訪れた子どもたちも「文字がいっぱい書いてある」とあちこち指をさしていました。

14_chokoku-rakudaki(2021.10.30) 15_chokoku-rakugaki(2021.10.30)

やわらかい砂岩質の千畳敷では、靴で地面をこするだけでも跡は残り、たとえば石などで削れば文字を刻むことも可能です。観光でいらっしゃる方の一部には、やってきた記念にと、自身の名前や日付を刻む方がいらっしゃいます。長い長い年月を経て形成された大地に刻まれた落書きは、容易には元の状態に戻すことはできず、何十年と未来に残されてしまいます。

千畳敷の素晴らしい風致景観は多くの人の記憶に刻まれ、愛されるものです。そんなとき、目に入ってきてしまう個人的な落書きは大変残念でなりません。訪れる方に感動を与える人類共通の財産は、未来に渡ってみんなで守っていきたいものです。

今回の三段壁・千畳敷ジオツアーで、子どもたちは見るだけではなく、体感して雄大な地形の成り立ちを知り、また化石探しや岩登りでドキドキワクワクの冒険を全身で楽しんでくれました。それだけではなく、地域の宝を未来に繋げていくことの大切さについても考えてくれて、とても実りある1日でした。

イベントが終わった後には、「このようなイベントはほかにもないか」と興味を示してくれる子どももいて、私としても身の引き締まるような思いになりました。参加者の皆さん、そしてご協力いただいたジオガイドさんや白浜町役場の皆さん、ありがとうございました。

16_azetona-no-hana(2021.10.30)
9月~12月海岸に咲くアゼトウナ(畦唐菜)

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