2022年04月25日初めての管内巡視で感動
山陰海岸国立公園 浦富 堀田利明
みなさん、はじめまして。この4月からアクティブ・レンジャーとして浦富自然保護官事務所で勤務している堀田です。どうぞよろしくお願いします。
直前まで職場は変わりながらも、鳥取砂丘に関わる仕事に永年従事してきました。その間、ガイドとしても多くのお客様に鳥取砂丘の魅力を案内してきました。出身は、大山隠岐国立公園大山の西麓で学生時代から大山の自然も存分に楽しんでいました。もちろん山陰海岸国立公園も学生時代、社会人となってからも仕事や釣り、撮影小旅行などプライベートでもよく通ったところです。このたび、アクティブ・レンジャーとして山陰海岸国立公園の仕事ができることを大変うれしく、幸せ者だと思っています。皆様の期待に応えられるかは、少し不安はありますが・・・。
自己紹介は、さておき、先日、自然保護官と管内の施設点検など巡視に出かけましたのでそのときの様子などを紹介させていただきます。
まずは、鳥取砂丘ビジターセンターへ。来館者は、春休みに入り少し増えた感じでしたが、春休みが終わるとまた静かな鳥取砂丘に戻り、ビジターセンターでは来館者もゆったりと過ごされていました。
【春休みの鳥取砂丘】
つづいて、岩戸(いわど)海岸、大谷(おおたに)海岸と車で看板などを確認しながら進み、鴨ヶ磯(かもがいそ)へ。
鴨ヶ磯では、海岸に沿って整備された遊歩道を歩いて巡視します。鴨ヶ磯展望駐車場から高低差約50mの遊歩道を下っていくと白砂のポケットビーチ的な小鴨ヶ磯にたどり着きます。続いて石英斑岩の柱状節理が見事な椿谷を抜けると大鴨ヶ磯へ。ここも花崗岩由来の少し粗い粒の白い砂浜で、永年鳥取砂丘の黄色っぽい砂ばかり見ていた私は、その様に感動しました。また視線を海に向けるとマツの生える大小の小島が浮かんでいます。これまでは、展望駐車場(海抜約50m)から俯瞰するばかりでしたが、磯浜から間近にみる景色は、絶景です。椿谷手前の遊歩道は、満潮時は通行に支障があるため注意看板を数カ所設置していますが、特に異常はありませんでした。この後、遊歩道沿いの落石など確認しながら令和3年3月に開通したショートカットコースで県道に戻り、車道をしばらく歩き元の場所へ着くと汗ばむ位の運動量でした。
【椿谷付近からの島々】
【大鴨ヶ磯】
途中、数組の観光客とすれ違いましたが、皆さん感動されている様子で何よりでした。
さらに車で東に向かい、兵庫県は新温泉町の諸寄港を見下せる城山園地へたどり着くと昼の時間となりました。ここでは、案内看板などに支障が無いか確認しました。桜の花も満開で、花見をしながらお弁当を食べる方々もいらっしゃいました。桜の花咲く時期に初めて来ましたが、他の利用者も風景を撮影するなどここの景観に感動されている様子でした。
【諸寄港】
【城山の桜】
山陰海岸は、いつ来ても素晴らしい。ここから見る日本海に沈む夕日もきっと素晴らしいでしょう。 機会があれば是非夕陽の時間に様子を見てみたいです。
まだ巡視は、続きましたが、今回はここらで初日記をさせていただきます。
山陰海岸一帯は、2月下旬から大量の注射器の漂着が続いています。危険ですので、海岸を散策される際はご注意いただき、発見された場合は、手を触れずに最寄りの県事務所や市町村にご連絡ください。
2022年04月15日浜甲子園の遊歩道工事が終了しました
瀬戸内海国立公園 神戸 中村高也
みなさん、こんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。今年度もどうぞよろしくお願いいたします。
さっそくですが、兵庫県西宮市の国指定鳥獣保護区である浜甲子園に行ってまいりました。
浜甲子園は昨年6月から今年の3月末までの約10か月の間、遊歩道が県の防潮堤かさ上げ工事による立ち入り禁止区域となっておりましたが、無事に工事も終わり、一般の方々が立ち入りできるようになっております。
環境省では、防潮堤の刷新にあわせて、浜甲子園に設置している看板を新しくしました。
【鳥獣保護区域を示す案内看板は一般の方に親しみやすいようなデザインに】
また、防潮堤かさ上げ工事が行われる中で、遊歩道沿いに以前になかった干潟が一望できる展望スペースが出来ましたので、干潟で休む野鳥を観察しやすくなりました。
ちょうど今のシーズンは浜甲子園でシギ・チドリ類(略して「シギチ」と呼ばれます)を観察することが出来る時期。私が見に行ったときはまだシギチたちは飛来していませんでしたが、展望スペースからは干潟で休む黒い頭巾をかぶったような夏羽に変わったユリカモメや、魚を追いかけるコサギなどを観察することが出来ました。
展望スペースでは野鳥を驚かさないよう、なるべく静かにして観察するようにしてくださいね。
また、西宮市では4~5月の間、シギチの餌場を守るため一定区画への干潟への侵入を市の条例により禁止しておりますので、ご注意ください。
※西宮市の条例については、詳しくは以下をご確認ください
2022年03月28日カラフル海藻観察会~天神崎で海の春を体感!~
吉野熊野国立公園 田辺 戸口協子
みなさま、こんにちは。田辺管理官事務所の戸口です。
紀州和歌山では三寒四温が続いていますが、梅、桜の順に春を届けてくれています。
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みなべの梅の花 | 田辺・闘鶏神社の桜の花 |
さて、今月3月5日、田辺管理官事務所で実施した「カラフル海藻観察会〜天神崎で海の春を体感!〜」についてご報告いたします。
今回の自然観察会では、紀南の海で「ヒロメ」というワカメの仲間の海藻を研究されている講師をお招きし、ご応募いただいた小学4年生から大人までを対象に天神崎で海藻について教えていただきました。
(海藻については、1月のアクティブ・レンジャー日記でも取り上げておりますので、是非ご覧ください。 URL:https://kinki.env.go.jp/blog/2022/01/2022.html )
田辺市にある天神崎は、ナショナル・トラストの先駆けとなった場所でもあり、地域住民のみなさんの手で、山から海へ一帯となった豊かな自然環境を守られてきた場所です。
天神崎には海岸部分にシンボルとなっている丸山があり、満潮時にはその周辺一面が水面下となるものの、潮が引くと平らで広大な磯が姿を現します。
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干潮時の天神崎・丸山 |
集合場所で安全対策などの話をしてから、いざ出発。
磯場への降り口にはこんな看板がありました。
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警告板 |
講師からも、海藻の中には水産資源として管理されるものがあり、場所によっては採取が禁止されているところもあることを教えていただきました。海藻の採取についても魚や貝と同じで、規則があるので、守らないといけませんね。
磯場につながるスロープを降りた場所の周辺に、早速、満潮時に打ち上がった海藻が集まっているところがありました。その中に、小さな丸いものが付いている海藻を発見。この海藻はホンダワラという海藻の仲間であることを教えてもらいました。
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ホンダワラの仲間 |
この丸いものは、海の中で浮きの役割をしているものだそうです。海の中で生息している海藻は、光合成をするため、太陽のある上に向かって伸びますが、その時に体を安定させるため、浮きをもつものがあるそうです。
この浮きは、指で潰すと
「プチッ」
音を鳴らして潰れます。これはやってみるとなかなかおもしろく、みんなでプチプチ鳴らして遊びました。
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「プチッ」を体験 |
次に、磯の先端を目指して波打際沿いに移動しながら、海藻を観察しました。緑色をした海藻と、茶色をしたひげのような海藻が多く見られるところがありました。岩礁にくっついている状態ではなんてことのない海藻に見えますが、実は、普段私たちの生活の身近にあるものです。
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緑が鮮やかなアオサ・茶色をしたひげのようなフノリ |
緑が鮮やかな"アオサ"や、ひげのような"フノリ"は、お味噌汁の具にもなる海藻です。 "アオサ"は、焼きそばやお好み焼きなどにかける青のりの1種としても食べたことがあるかと思います。また、 "フノリ"は、食材としての他、古くには「天然糊(のり)」として漆喰の材料や織物の糊付けに利用されてきました。そのため漢字では「布糊」という字が当てられています。相撲力士が廻しにつける「下がり」を糊付けするのにも用いられているそうです。
岩礁の先端近くで、波が比較的強くあたる場所には、さらにたくさんの海藻を見ることができました。
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カヤモノリ | タイドプールの海藻 | ウミトラノオ、と...? |
その中にあるこの海藻、何だか分かりますか?
ヒントは給食のレギュラーメニューで、きっと、ほとんどの人が食べたことのある海藻です。
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お馴染みの海藻です |
これは、なんと、あの「ヒジキ」です!参加してくれた小学生からは、「いつも食べているヒジキからは想像がつかない」という声があがっていました。
ヒジキは生の時は写真のように黄褐色をしており、渋みが多くてそのままでは食べられません。生のヒジキはお湯にくぐらせると、苦み成分のポリフェノールがお湯に移ることでお湯は茶色くなりますが、ヒジキ自体は鮮やかな緑色になるそうです。
茹でる時間が長くなるほど、ヒジキの色がくすんできます。長く茹でることで苦みが取れ、鍋の素材が鉄である場合、その鉄と反応してヒジキはより黒くなるそうです。
茹でた後、天日干しをして、みなさん、お馴染みの黒いヒジキとなります。ヒジキは思いのほか、手間のかかった食べ物であることを勉強し、今後はヒジキをしっかりありがたくいただこうとみんなで話しました。
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観察会の様子 |
その後は室内で、海藻についてお話しを聞きました。
「かいそう」には、「海草」と「海藻」があること、
「海藻」には大きく分けると緑色(緑藻類)、茶色(褐藻類)、紅色(紅藻類)の3種類があること、
茶色の海藻はお湯にくぐらせると鮮やかな緑色に変化することなどを教えていただきました。
最後に、これらの海藻を紙に押し当て、乾燥させて絵を作る「おしば体験」をしました。
(※おしば体験で使用した海藻は、講師が事前に適切に準備したものです)
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1.海藻選び | 2.紙に海藻を広げ、絵にする |
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3.水切り | 4.乾燥準備 |
おしば体験 |
みんな初めてのおしば体験がおもしろく、独創性のある作品が次々に並んでいました。これら作品は乾燥後、ラミネート加工して完成となります。
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参加者の作品 |
今の季節は海岸で観察できる海藻の種類が多く、いろいろな発見があると思います。多種多様なカラフルな海藻を探しに、ぜひ、春の海岸へ足を運んでみてください。繰り返しになりますが、採ってはいけない海藻は、無断で取らないようにしてくださいね。
※天神崎は干潮時には広大な磯場が広がりますが、潮が満ちて来ると、帰り道が海水で見えなくなることがあります。お越しの際は、事前に干満の時間を確認し、安全に気を付けて楽しんでください。また、磯場には滑りやすいところがあるので、足元にはよく注意してください。
皆さん、こんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。
街中での桜の季節は終わってしまいましたが、六甲山ではまだコバノミツバツツジが咲いていました。小ぶりなツツジではありますが、この花が咲いているのを見ると、私は六甲山の春の訪れを感じます。
今日はそんな六甲山系の山の一つである『東お多福山』をご紹介いたします。
【山頂付近には草原と阪神間が見渡せる眺望があります】
六甲山系では珍しい草原が特徴の山として人気の『東お多福山』ですが、この草原は自然にできたものではありません。
もともと東お多福山は、茅葺き屋根の材料や生活の燃料を得るための茅場として人の手が入ることによってススキが優占する草原が広がっておりましたが、戦後、人々の暮らしの変化によりススキが利用されなくなったことで、ネザサが優占する草原へ変化していきました。そこで、ススキが優占する草原を再生しようと、「東お多福山草原保全・再生研究会」が関係行政機関などと協力して、平成18年度から継続的にネザサの刈り取りを行い、ススキ草原の回復に取り組んでいます。
【ネザサ刈りの様子】
また、同研究会では毎月、東お多福山とその周辺に生息する植物の定期的な調査と並行して、一般の方向けの植物観察会を実施しており、事前申し込みをすればどなたでも参加することができます。
【観察した植物をモニタリングしていきます】
【今の時期は様々なスミレが観察できました】
東お多福山はススキを目当てに秋に来られる方が多いのですが、この時期にもスミレなどに代表される様々な春の植物をたくさん観察することができます。この機会にぜひ一度、東お多福山へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
兵庫県主催 春の東お多福山ハイキング:「2022 春の東お多福山ハイキング」の参加者募集