ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

近畿地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

RSS

吉野熊野国立公園 吉野

606件の記事があります。

2009年10月02日園地 【利用・施設】【動物】

吉野熊野国立公園 吉野 朝倉和紀

 皆さん、こんにちは。
10月1日に天川村洞川(どろがわ)へ行ってきました。天川村洞川には、修験で有名な山上ヶ岳や稲村ヶ岳の登山口があり、この辺りは洞川園地(どろがわえんち)となっています。

 「園地」とは何だ?と思われる方のため、ちょっと説明を・・・「園地」とは、簡単に言えば、国立公園の利用拠点です。そして、この地域で言えば、登山の起終点で、登山道の案内標識や駐車場・トイレ・広場・休憩所などがある場所であり、登山利用・観光利用・環境保全などの拠点となる場所のことです。
 ちょっと長くなってしまいましたが、今回はこの洞川園地周辺の巡視を行って来ました。では、洞川がどのような所なのか、写真をご覧下さい。


写真:面不動鍾乳洞前から見た洞川の町並み(10月1日撮影)

 このように、洞川は山々に囲まれた清々しいところです。左右の山の谷筋から見えている山(この写真では、平らに見えます)が山上ヶ岳です。双眼鏡など(面不動鍾乳洞前に双眼鏡が設置してあります)を使えば、修験の修行で有名な「西ノ覗」や行者さんや登山者の休憩所である「洞辻茶屋」を見ることができます。洞川は清々しいだけではなく、面不動鍾乳洞や龍泉寺、洞川エコミュージアムセンターなど、見所がたくさんあります。

 洞川エコミュージアムセンター前の川では、初めてカワガラスを見ることができました。このカワガラスは、「カラス」と名前がついていますが、カラスではなく、スズメに近い仲間です。スズメの様に体は小さいですが、「カラス」という名で頷きたくなる体色をしています。カワガラスは、渓流などの水辺で見ることができます。


写真:カワガラス(カワガラス科)写真の中央にいます。

 また、「イカリモンガ」という蝶(チョウ)に似た「蛾(ガ)」を見つけました。蝶はきれい、蛾は地味というイメージを持ちがちですが、「イカリモンガ」を見ていただくと分かるように、蝶と蛾を分ける明確な線引きはできないのです。この蛾の幼虫は、「イノデ」というシダの仲間を食べる珍しい生態をしています。


写真:アザミで吸蜜するイカリモンガとハナバチ(10月1日撮影)

 洞川は、これらのような風景、動植物観察、温泉などの観光に加え、登山もでき、とても楽しめるところです!皆さんもぜひ一度天川村洞川へお出かけになってはいかがでしょうか?

ページ先頭へ↑

2009年09月28日自然観察会【イベント】

吉野熊野国立公園 吉野 青谷咲子

 9月20日に、今年度最後のアクティブ・レンジャーによる自然観察会「苔の森でミニエコツアー」が終了しました。参加してくださった皆様、どうもありがとうございました。そして悪天候などの理由で参加できなかった皆様、どうかこれに懲りずに来年また大台ヶ原に来てください!

 大台ヶ原は吉野熊野国立公園の一部であり、守られた自然の美しさや豊かさが魅力です。しかし大台ヶ原の魅力は、それだけではありません。自然災害やシカの食害などによる自然環境の変化、それに対して自然を再生する人々の取り組みが、そこかしこで見ることができます。

 自然のすばらしさや面白さだけでなく、いま自然界で何が起きていて、沢山の人々がそれにどう取り組んでいるのか、それを目の前で紹介し、多くの人に実際に知ってもらえる。こうしたイベントを行うのに、大台ヶ原はとても良い場所だなあ~思っています。



↑クリックで拡大
写真:(左)シカの食害(シカが木の皮をはがした跡)の説明をしています。木は皮をはがされてしまうと、枯れてしまうこともあります。(右)それを防ぐため、木に金網を巻くという取り組みを実際に見てもらいながら紹介しています。

 また来年度も、より内容を充実させたものにしていきたいと思っておりますので、私たちの自然観察会を、どうぞよろしくお願いいたします!

★★★ 大台ヶ原の紅葉情報 ★★★



写真は9月20日の山の上の駐車場付近。カエデが少しずつ色をつけ始めています。大台ヶ原の詳しい紅葉情報は、大台ヶ原ビジターセンターへお問い合わせください!
大台ヶ原ビジターセンター:TEL 0746-83-0312(午前9時~午後5時まで)

ページ先頭へ↑

2009年09月25日大峯の秋 【植物】【その他】

吉野熊野国立公園 吉野 朝倉和紀

皆さん、こんにちは。

いきなりですが、「秋の山と言えば紅葉!」ということで、今回は9月18日に弥山(みせん)の防鹿柵(ぼうろくさく)設置調査に行ってきた際にかき集めた大峯山系の写真をご紹介しましょう。

「紅葉なんてもうちょっと後のことじゃ・・・」と思われがちですが、山の上は平地よりも気温が低く、一足先に秋が訪れるのです。一般的に、100m標高が上がると約0.6℃気温が下がると言われています。弥山の標高は1895mなので、山頂の気温は平地に比べ、約11.4℃低いという計算になります。

 それでは、大峯山系(弥山)の初秋をご覧下さい!写真3連発です!!


写真:行者還トンネル(西口)の登山口(9月18日撮影)


写真:弥山山頂付近で実を付けるフウリンウメモドキ(9月18日撮影)


写真:弥山から狼平避難小屋間で見られるオオヤマレンゲの種子(9月18日撮影)

いかがでしょうか?冒頭で「山の秋は早い」などと期待を持たせてしまいましたが、御覧の通り、実はまだほとんど紅葉していませんでした・・・。すみません。
しかし!フウリンウメモドキ、オオヤマレンゲの実を確認することができ、「紅葉するまでもう少しだなぁ・・・」と実感できるほどに、秋の足音は確実に近づいてきています。

ページ先頭へ↑

2009年09月18日ナガレヒキガエル【動物】

吉野熊野国立公園 吉野 青谷咲子

 9月のはじめに、大台ヶ原の渓流でオタマジャクシを発見しました。
 そのオタマジャクシは、大台ヶ原でよく見かける「ナガレヒキガエル(*)」の子供のようでした。このカエルは水の流れのあるところで子供が成長します。そこから「ナガレ(流れ)」という名がついたそうで、私もその姿を見つけては「ナガレさん」という愛称で呼んでいます。


↑水に流されないよう、吸盤のようになっている口で石などにへばりついています。

 しかしなぜ今ごろナガレさんの子供が?せっかく水から出てきても、大台ヶ原の一足早い冬が待っているのに・・・。と子供達の今後が心配になってきた青谷でした。
--------------------------------------------------------
*:ナガレヒキガエル・・・・大台ヶ原でよく見られるヒキガエルの仲間。他のヒキガエルに比べて手足が長く、鼓膜が明瞭でないのが特徴と言われている。ほとんど鳴くことがなく、人間に出くわしてもいつもクールに構えている(目撃者談)。

↑吉野自然保護官事務所でこれまで撮りためてきたナガレさん(大人)達の写真。大台ヶ原周辺で見られるナガレヒキガエルはこんなに色の違いがあります。
--------------------------------------------------------

ページ先頭へ↑

2009年09月15日お彼岸の花 【植物】

吉野熊野国立公園 吉野 朝倉和紀

 皆さん、こんにちは。
最近道端や河原、林道沿いで、はっとするほど真っ赤な花が咲き始めています。

 皆さんご存じかと思いますが、「ヒガンバナ」という花です。
お彼岸の時期に花を咲かせることから、「彼岸花」という名称になったと言われています。また、曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれているようです。「曼珠沙華」はお彼岸ということで、仏教関係に由来しており、「赤い花」という意味があるようです。

 このヒガンバナは、ヒガンバナ科に属しており、リコリンという毒を持っています。「ヒガンバナには毒がある」という話は有名(?)ですよね。取扱いには十分御注意ください。

 さらには、(毒とは無関係なのですが・・・)ヒガンバナは、種子を実らせません(実らせることができない?)。これは、「ヒガンバナが3倍体である」からだと言われています。3倍体とは、遺伝子の組(通常は2組)が3組あるということです。3倍体の代表として、「種なしスイカ」があります。これも3倍体です。なので、種子がありません(遺伝子の組数が多く、特殊だからです)。

 何だか小難しい話になってしまいましたが、まとめると、ヒガンバナは種子ができないのです。チューリップの様に「球根」で増える植物なのです。ヒガンバナの花を見かけたら、花の「その後」を観察してみてはいかがでしょうか?種子をつくることなくしおれていく様は、どこか不思議に感じてしまいます。

ページ先頭へ↑

2009年09月10日ARとは・・・ 【その他】

吉野熊野国立公園 吉野 朝倉和紀

 皆さん、こんにちは。
 吉野では、また一段と涼しくなりました。朝、外に出て息を吐くと、なんと!!わずかですが息が白く・・・吉野では秋を通り越して冬になったのでは?と思ってしまうほどでした。季節の変わり目は体調を崩しやすいので、皆さん、お体には十分お気を付けください。

 さて、今回は知られざるAR(アクティブ・レンジャー)の生態について一部ご紹介したいと思います。まず、日本には29ヶ所の国立公園があり、この国立公園を「レンジャー(自然保護官)」が管理しています。AR(アクティブ・レンジャー)は、日本語で「自然保護官補佐」と言います。読んで字のごとく、ですが、国立公園を管理している「レンジャー」の補佐をしています。


写真:「日本の国立公園」のポスター

 では、どんな仕事をしているかというと、レンジャーに同行しての国立公園の巡視(見回り)のほか、国立公園内で自然観察会の実施などを行うこともあります。
 これだけを見ると、正に「アクティブ」なのですが、外に出ない日(外に出ない日の方が多い!?)は、書類作成から今皆さんが読まれているAR日記の作成など、パソコンに向かっての作業を行っています。

 このように、国立公園について勉強しながら、レンジャーの皆さんや国立公園を利用してくださる皆様のお役にたてるよう、日々頑張っているのです!!
 
 ☆国立公園について詳しく知りたい方はこちらへ↓
        http://www.env.go.jp/park/

ページ先頭へ↑

2009年09月07日定点写真【その他】

吉野熊野国立公園 吉野 青谷咲子

 アクティブ・レンジャー(AR)の仕事のひとつとして、国立公園の魅力を伝える写真を撮影し、AR日記などで掲載しています。その他にも公園内の自然環境の移り変わりも撮影し、記録として残すこともしています。

 大台ヶ原には「正木峠」と呼ばれる、枯れた木が立ち並ぶ風景が印象的な場所があります。枯れた木々はやがて倒れていくのですが、同じ場所を、年月を経て繰り返し撮影(=定点写真)することで、その変化をみることができます。



画像:3年前に撮影された写真(左)と今年撮影した写真(右)。若干角度に違いがありますが、同じ場所で同じ季節に撮ったものです。

 見比べてみると、どうでしょうか。3年の間に、左側の立ち枯れの後の景色が、木が倒れていることで少しスッキリしていませんでしょうか?
 この場所には、昭和30年頃に同じ場所で撮影した写真を載せた看板も設置されています。「百聞は一見にしかず」と言いますが、こうして撮影を続けていくことで目に見える変化を残していければと思います。

※正木峠の変化については大台ヶ原HPをご覧ください。
http://c-kinki.env.go.jp/nature/odaigahara/odai_top.htm
(左メニュー:大台ヶ原自然再生→自然再生に至るまで→大台ヶ原の森林の推移へGO!)

ページ先頭へ↑

2009年09月04日パークボランティア【その他】

吉野熊野国立公園 吉野 青谷咲子

 日本の国立公園には「パークボランティア」と呼ばれる多くのボランティアさん達が活躍されています。主に国立公園の維持管理を手伝って下さったり、利用者にマナーを伝えたり、自然観察会を行って広く自然の素晴らしさを伝えてくださったりと、幅広い活動をされています。
 大台ヶ原にも現在68人の方が登録されています。年々メンバーの高齢化が進んではいるものの、パワーはいっこうに衰えない頼もしい皆様です。

 夏休みも終わる直前の8月末に、パークボランティアの皆さんに歩道の手直しをしていただきました。
 エイサエイサと手際よく作業が進められていく横で、私はただ写真をとるばかり・・・。

画像:8月30日(日)

歩道に水が滞らないように「水を流す道」つまり溝が作られているのですが、ここは大台ヶ原に降る大量の雨によって、流れた土がたまっていました。今更ながら「この溝は、こんなに深かったの!?知らなかった。」と自分の無知さを反省しました・・・。

 今回も作業のため、遠いところから大台ヶ原のために駆けつけてくださったパークボランティアの皆様、ありがとうございました!

ページ先頭へ↑

2009年09月03日秋を彩る蝶 Part2 &花 【動物】【植物】

吉野熊野国立公園 吉野 朝倉和紀

 皆さん、こんにちは。
 今回は、前回(8月27日「秋を彩る蝶」)に引き続き、「秋を彩る蝶」+「花」のパワーアップバージョンでご紹介したいと思います。

 今回ご紹介するチョウは、「ヤマトシジミ」というとても小さなチョウです。まったく同じ名前で「ヤマトシジミ」という貝もいます(お味噌汁の具に使われる貝です)。ちょっとややこしいですが、漢字で書くと一目瞭然で、チョウは「大和小灰蝶」、貝は「大和蜆」です。今回の主役は、「大和小灰蝶:ヤマトシジミ」です。

このヤマトシジミの幼虫は、「カタバミ」を食べて成長します。カタバミは都市部などでもちょっとした土があればどこにでも生える、いわゆる雑草です。なので、ヤマトシジミも都市部などでもよく目にします。「わざわざ探さなくても見かける…」ほど、私たちの身近にいるチョウのひとつです。とても小さくて可愛らしいチョウですよ!


写真:ヤハズソウの花の蜜を吸うヤマトシジミのメス(9月3日撮影)

 もう一つご紹介する「花」は、上の写真のヤマトシジミが蜜を吸っている「ヤハズソウ」という植物です。このヤハズソウは「矢筈草」と書き、名前の由来は、葉の先をつまみ、引っ張ると「矢筈(やはず:弓の末端で、弦を掛けるところ)」の形に切れることから付けられたと言われています。道端などに生えているので、ちょっと遊んでみてはどうでしょう?ちゃんと「矢筈」形に切れる様は、感心してしまいます。ヤハズソウの花は、8月から10月頃に見られるようです。こちらも小さく可愛らしい花です。


写真:ヤハズソウの花(9月3日撮影)


写真:「矢筈」形に切れた葉(引っ張った後)

ページ先頭へ↑

2009年08月28日ツキヨタケ【植物】

吉野熊野国立公園 吉野 青谷咲子

 大台ヶ原では夏から秋にかけて、ある光るものを見ることができます。それは星でもなく蛍でもなくロマンチックな都会の夜景※でもありません。
 それはキノコです!発光キノコは八丈島などが有名ですが、ここ大台ヶ原でもツキヨタケという光るキノコを見ることができます。



参考写真:ツキヨタケ。夏から秋にかけて枯れたブナの木などにぴょこっと顔を出します。

 ごくわずかな光を放つので、真っ暗なところでないと発光を確認するのは難しいかもしれません。それでも、真っ暗な夜にぼんやりとその存在を示す姿に、自然の不思議を感じてしまいます。

※ロマンチックな都会の夜景を見たい方は、兵庫県の六甲山地(瀬戸内海国立公園に指定されています)へどうぞ!

ページ先頭へ↑

ページ先頭へ