ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

近畿地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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吉野熊野国立公園 熊野

355件の記事があります。

2010年12月14日自分好みのクリスマス作品を 【イベント】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 12月に入り、街中には、色彩豊かなイルミネ-ションが綺麗に飾り付けられ、クリスマスソングとともにクリスマスムードが高まっています。

 那智勝浦町にある宇久井ビジターセンターでは、これまで宇久井半島の代表的な樹木の紹介やそれらを使ったクラフト体験企画展示「宇久井の森へようこそ」を実施してきました。
http://c-kinki.env.go.jp/blog/2010/11/01/index.html
クリスマスシーズン到来ということで、クラフト体験の一部にこの時期に相応しい自然物を使ったリース作りを取り入れています。

リース作品例

 リースの基礎となる大枠の材料はサネカズラのツルです。ビジターセンターの周辺に生育しているツル植物で、近くにある木々に巻き付いて生長します。かなり太くなるため使いやすく、自然の曲線が独特の風合いを醸し出していますので、素材にはぴったりです。


サネカズラの実 マツブサ科

 このリースに飾り付ける装飾物も宇久井で見られる木の枝、ドングリ、ツバキの実などで、自分の好きな素材を選ぶことができ、楽しみながら自然と触れ合うことができます。
 お陰様で好評を頂いていて、お子さんだけでなく、親御さんも楽しまれています。どなたでも無料で参加できますので、機会があれば是非自分だけの作品を作ってみてはいかがでしょうか。
宇久井ビジターセンターホームページ:http://www.ugui-vc.jp/

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2010年12月09日針山の岩 【植物】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 先日巡視の際に裁縫道具の一つ、針山の様な姿をした岩を見ました。


見事にびっしりと覆われていました。

 この岩はシダの一種、ヒトツバに覆われています。シダといえば切れ目がたくさん入ったり、葉軸から複数の葉が付いているイメージがありますが、このシダはシンプルな1枚の葉っぱです。
 根元は岩ですので、ほとんど土はありません。過酷な環境下にも関わらず、岩一面に針山の針のごとくヒトツバが生育していました。条件によっては屋根の上にも生育することがあるそうです。
 たくましい生命力を感じ自分も寒さに負けず、暖房の設定温度を20度以下にしよう※という気持ちにさせてくれた一時でした。

※環境省はウオームビズを推進していて、暖房の設定温度を20度以下にする事を推奨しています。
http://www.challenge25.go.jp/practice/warmbiz/warmbiz2010/office.html

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2010年11月29日錦秋の湖岸

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 11月も残すところ僅かとなり、地域によっては冬の到来が本格化しているかと思いますが、ここ紀南地域は未だ秋の雰囲気を見てとることができます。

 和歌山県那智勝浦町にあるゆかし潟という海水と真水が混じり合う汽水湖があります。現在ゆかし潟では、水面に映える錦秋の光景を目にすることができます。冬の訪れを前にして、冬鳥のカモたちが渡ってきて、背景の紅葉と相まって奥ゆかしき自然美を醸し出しています。


ゆかし潟にて
写真には写っていないのですが、対岸の遠いところに羽毛がとても綺麗なオシドリをはじめ、マガモ、カルガモ等が群れていました。

 温暖な紀南地域は照葉樹と呼ばれる一年中葉っぱをつけている樹木が多いのですが、中には一部落葉をする樹木が見られ、紅葉を楽しむことができます。


ヌルデ ウルシ科
見事な赤色で、思わず撮影しました。

 ゆかし潟のある湯川周辺は温泉地であり、その昔熊野三山を巡った熊野詣での人々にも利用されたそうです。
 紅葉をまだ楽しめていない方やもっと見たい方、温泉好きな方には特にお勧めスポットです。

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2010年11月25日晩秋のトンボ 【動物】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 このところ朝晩の冷え込みが厳しさを増し、初雪や初氷などの便りが全国から届くようになりました。
 
 下の写真は晩秋を迎えた良く晴れた温かな日に、出会ったトンボです。


キトンボ トンボ科

 キトンボはトンボ科アキアカネ属で、一般的に赤トンボと呼ばれる仲間です。
 キトンボというだけあって、羽の色が黄色味を帯びています。紀南地域ではあまり確認されておらず、次回の和歌山県レッドリスト※に絶滅危惧Ⅱ類として登録される予定になっています。


連結して器用に飛びながら産卵します。
 
 観察していると、陸と池の水際で上から草が被る様な場所を選択しながら産卵していました。
 多くの赤トンボの仲間は、秋になると冬に急かされるように産卵をします。既に立冬から、2週間が経ちました。冬がそこまで近づいています。

※絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト

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2010年11月16日草むらの中に卵? 【その他】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 先日宇久井ビジターセンターの園地の管理を行って下さっている方から、宇久井ビジターセンターにある遊歩道脇の草むらの中に、動物の卵の様な白い物体が発見されたとの情報を受けました。ビジターセンターに居た時だったので急行しました!


ピンポン球大の卵のような丸い形状で、結構弾力性をもっていました。

こちらは断面写真です。



 断面からきのこの仲間かなと思い、きのこに詳しい方に伺った結果、スッポンタケ(スッポンタケ科)の幼菌ということが確認できました。
成長すると、2枚目の写真にある中心の白い部分が長くなり、外側の膜を突き破り、通常「きのこ」から連想されるような傘と柄からなる姿へ変貌を遂げるそうです。
 ちなみに成長したものでは、ゆがくなどの処理をすると、中華風のスープの具として食べることができます。(食べることは知識がないと危険が伴います。)
 きのこは菌類の仲間です。菌としての生活史からみると、きのこが地上に姿を見せる「子実体」の時期は、一時に過ぎません。きのことの出会いも一期一会と思って観察してみると、面白いものです。

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2010年11月09日い○え○祭り 【イベント】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 最近食べるものが何でも美味しくてたまらなく、食欲の秋を満喫している熊野ARです。
 ここ熊野地域は太平洋が眼前にあり、日頃から多くの海の幸の恩恵を受けています。地元のスーパーに行くと、近くの漁港から水揚げされた種々の魚介類が陳列されていて、自然の豊かさを実感できます。

 先日から高級食材の一つとされるあるものの漁が解禁されています。11/6に和歌山県那智勝浦町にて、この食材を採りあげたお祭りが開催されました。

 そのあるものとは「イセエビ」です!


いせえび祭り会場

イセエビの販売風景。
まだ元気に動いていました。

 イセエビは、多くの方にとって普段食する機会が少ないのではないかと思いますが、当日はイセエビ汁が無料で振る舞われたり、イセエビを使ったカレー、チャーハン、お寿司等がお手頃価格で販売されたりと、高い敷居を感じることなく堪能する事ができました。
 まだ漁期は続きますので、すばらしい海の味覚を味わいに是非一度お越し下さい。

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2010年11月01日宇久井の森へようこそ 【イベント】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 今日から11月、秋もずいぶんと深まり、実りの時期を迎えました。
 
 那智勝浦町にある宇久井ビジターセンターでは、先日より、宇久井半島の植生について皆さんにより身近に感じていただくため、企画展「宇久井の森へようこそ」を実施中しています!


展示及び体験コーナー

 宇久井半島の森は、主に照葉樹と呼ばれる木々によって構成されています。照葉樹は、光沢感のある葉をもち、一年中葉をつけている(冬になっても落葉しない)のが特徴です。そのため、宇久井半島の森では紅葉はあまり見られず、冬でも緑色の森が観察できます。
 今回の企画展では、宇久井半島の森で見られるスダジイ、ウバメガシ、ホルトノキ等の代表的な照葉樹や、かつての人々と森の関わり方についてご紹介しています。

 このほかにもビジターセンターの周辺でみられる自然物を利用して、アクセサリーやオブジェを作成する木工体験を実施中です。


様々な自然物。材料にします。

自然物を使った作品例

 様々な材料を組み合わせて思い思いの作品を作りあげることができます。
 子供だけでなく、大人の方にも記念の品として好評をいただいています。
 世界に一つだけの自分の作品を作ってみるのも面白いのではないかと思います。

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2010年10月29日瀞峡ウオーク開催と北山村 【イベント】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 和歌山県には飛び地があることを皆さんはご存じでしょうか。
地図でご覧頂くと、和歌山県の北東部に四方を奈良県と三重県に囲まれた離れ小島のような場所があります。その場所は日本で唯一の飛び地の村、北山村です。

 北山村の村会議員や職員の方々にご協力いただいて、「瀞峡ウオーク」~筏師のみち散策と川舟で瀞峡めぐり~を開催しました!

ウオーキング風景

 北山村は林業が盛んで、木材を筏にして下流の新宮まで搬出していました。今でこそトンネルが貫通して、陸路からの往来が楽になっていますが、かつては川路の方が利便性が高かったと思います。
 今回のイベントでは、筏師達が筏を流した下流から上流に戻って来る際に利用していた道の一部を散策しました。近畿自然歩道の一部にもなっています。
 人工林が多いのですが、南北朝時代に関係するお墓や集落跡が見られ、歴史を感じられました。


川舟にて瀞峡巡り
 
 瀞峡の一部やその付近は、吉野熊野国立公園特別地域、国特別名勝、天然記念物と多数の評価を受けている非常に風光明媚な場所です。
 陸路からは近づけない程の切り立った峡谷ですので、舟で見るほかありません。川舟に乗ると瀞峡の峡谷を間近で観察でき、私も自然が生み出した造形美に圧倒されてしまいました!

 参加者の多くは、この近隣にお住まいの方だったのですが、普段は川舟にあまり乗船しないようでした。「普段見慣れない風景を探勝できた」、「ウオーキングが適度な運動になった」等の声が聞かれ、満足していただけたようでした。


 また北山村は、ゆずやかぼすのような柑橘系の果物「じゃばら」が特産品です。じゃばらは絶妙な酸味と甘みが特徴的で、独特の味わいが楽しめます。お酒やジュース、ジャム等にも加工されています。

北山村特産のじゃばらジュース

 このほどじゃばらの出荷が始まったそうです。是非一度北山村へ訪れてみてはいかがでしょうか。

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2010年10月18日熊野速玉大社例大祭 【その他】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

 先日気持ちの良い秋晴れの下、和歌山県新宮市にある熊野速玉大社の例大祭が執り行われました。熊野速玉大社は、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されていて、熊野本宮大社、熊野那智大社と合わせ、熊野三山の一つです。

 大社では毎年10月15、16日に例大祭「御船祭」が開催されています。このお祭りの最大の見どころは締めを飾る早舟競漕です!熊野川の河口から上流へ約2km離れた御船島を3周回ってゴールとなります。
 

多くの観客が見守る出発前

神官達が見守る中、御船島を3周します。
とてもハードそうに感じられました。

 早舟は新宮市内にある9地区の全9槽で争われ、上半身は裸でねじりはちまきをした若人たちが漕ぎ手となって、地区の期待を背負って競漕します。
応援する人の中にも出発地点から最終地点の御船島まで舟の動きに合わせて、慌てて移動する人もいて、観客にも意気込みが感じられました。

 熊野川も「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産の登録地で、世界遺産を舞台にした神事が身近に行われる光景を見て、改めて熊野に居ることを再認識しました。


【イベント情報】
 今週末、吉野熊野国立公園内にある深淵な峡谷が魅力の瀞峡(国指定特別名勝、天然記念物)において、近畿地方環境事務所主催の吉野熊野国立公園「瀞峡ウオーク」筏師のみち散策と川舟で秋の瀞峡めぐり~を開催いたします。


ご興味のある方は、是非お申し込みください。
申込先:熊野自然保護官事務所 0735-22-0342

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2010年10月15日【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで1日前】

吉野熊野国立公園 熊野 畝井良幸

吉野熊野国立公園  ~シギのくちばしからみる多様性~

 皆さんは鳥のくちばしを思い浮かべて下さいと言われたら、どんな形を連想されますか。ワシやタカなど猛禽類の鋭いくちばし、カモ類などの幅広いくちばし、スズメなどの小さなくちばし等々・・・ 
 様々ある中で、今回は海辺で観察されるシギ類のくちばしに着目したいと思います。

 下の写真は熊野地域の海岸近くに飛来するシギ類の野鳥達です。


左)シギ科 オオソリハシシギ
右)シギ科 チュウシャクシギ

左)シギ科 キアシシギ
右)シギ科 キョウジョシギ

 海辺で採餌するシギ類のくちばしが、狩りと呼ばれる採餌を行う猛禽類と異なることは、想像に難くないと思います。しかし上の写真の様に同様の環境で採餌するシギ科の中においても、種によってくちばしが大きく異なります。
 
 オオソリハシシギのくちばしは、長く、上に反っています。一方チュウシャクシギは内側に大きく湾曲しています。このくちばしを砂浜などに奥深く突っ込んで、カニや貝などを採餌します。
 キアシシギのくちばしは前の2種よりも短く、同じ砂浜や磯場で採餌し、より浅い場所にいるゴカイ等の生き物を餌にします。
 キョウジョシギは太いくちばしで、磯辺の石ころをひっくり返して餌を見つけます。カタカタとひっきりなしに音を立てながら探します。
 
 シギ類の多くは、シベリアなどの北方で繁殖し、東南アジアなどの南方で越冬します。その中継地として春と秋に日本へ立ち寄ります。その期間、干潮時の砂浜や磯場が採餌場になるので、他種と競合する確率が大きくなります。このため各々の種の採餌方法や採餌場所が重複しないように、くちばしを多様に変化させて進化してきたものと考えられます。
 
 生き物を見つめると、それぞれの種が様々な環境に適応することで巧みに共存していることに気づきます。私たちも地球上の生き物の一員として、長い進化の歴史の中で作り上げられてきた生物多様性を壊すことがないよう歩んでいきたいものです。

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