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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

不思議な漂着物(タコブネ・卵)とウミプラー

2024年12月23日
田辺 戸口協子
みなさま、こんにちは。吉野熊野国立公園 田辺管理官事務所の戸口です。
12月に入り、冬らしい気温に包まれてきました。紀南でも一気に紅葉が過ぎ去りそうです。
 
今回は11月末に田辺市で開催された生涯学習フェスティバルの様子をお伝えします。
11月は田辺市で「田辺市学びの月間」となっていることもあり、その一環として毎年、生涯学習フェスティバルが開催されています。色々なブースがあるなかで、持続可能な社会への取り組みをしている団体のブースでは、「SDG’s17のゴール」のうち、その取り組み沿った内容のシールを配布しています。参加者は17のシールをすべて集めることでスタンプラリーができる仕組みになっていて、子どもから高齢者まで楽しむことができる催しです。
SDG'sの割当てロゴ
田辺管理官事務所のSDG’sテーマ
田辺管理官事務所のブースでは、吉野熊野国立公園の見所として、美しい自然の景観の写真パネルで紹介し、このような自然・景観が将来まで持続できるように、漂着物のなかから宝探しを楽しみながら、ついでにゴミも拾ってきれいな地球にしよう!というコンセプトで、「SDG’s17のゴール」の以下写真の3つのテーマに沿った展示を行いました。
吉野熊野国立公園の紹介パネル
海岸で拾ったもののなかで、おもしろいもの・きれいなもの・興味引かれるものを、2022年と同様に展示しました(参照URL:フェスティバル・ブース出展(前編:海岸漂着物) | 近畿地方環境事務所 | 環境省)。今回は新たな展示物として、ご厚意で提供いただいたタコブネと、私が拾ったウミガメの卵の殻を追加しました。両方とも、大変壊れやすいためケースに入れての展示です。
タコブネの殻
タコブネの殻(ビーチコーマー:芝崎浩子さんご提供)
ウミガメの卵の殻
タコブネ、みなさん、ご存じですか?海を漂いながら生きているタコの1種です。産卵した卵を守るための「ゆりかご」としてメスだけがつくるもので、特殊な形の腕から出す自らの分泌物で、アンモナイトにも似た形の殻を作ります。殻は一見、巻き貝に似ていますが、巻き貝は身を守るよろいの役割をしているのに対し、タコブネは卵が孵化するまでの短い期間、卵を守る役割をしているため、殻は大変薄く、もろいです。
おもしろいのは、殻をつくらないオスも含め、このタコの生物名が「タコブネ」になっていることです。(名前の由来になった殻だけでも、「タコブネ」と呼んでいるため、解説時は少しややこしい…。地方名:フネダコとも呼ばれる)
 
タコブネや、また、近縁種でタコブネ同様にメスが卵を守るための殻をつくる生き物であるアオイガイも、「タコ」に分類されます。(アオイガイの名前は、2つの殻を写真の下ように置くと、葵の葉に形が似ていることに由来するようです。)
象牙質のタコブネの殻
アオイガイ
透明感のある白いアオイガイの殻(山陰海岸国立公園で採取したもの)
世の中には不思議ないきものがたくさんいるものですね。その痕跡を海岸で探すことができるのも、漂着物の宝探し(=ビーチコーミング)の醍醐味です♪
 
もう一つはウミガメの卵の殻です。ウミガメの卵はよくピンポン球のようと表現されますが、この漂着した殻も、まるで卓球のピンポン球が朽ちたもののようです。
ウミガメの卵の殻は、本来は砂の中に残るため、そう漂着することもないはずですが、昨今、砂浜が痩せることが多く、その際に砂と共に海へ流出したと考えられます。(参照URL:アカウミガメの孵化率調査で感じた衝撃(1) | 近畿地方環境事務所 | 環境省アカウミガメの孵化率調査で感じた衝撃(2) | 近畿地方環境事務所 | 環境省
 
このような自然物とともに、人工物も展示し、人工物のほとんどがプラスチックであることを紹介しました。
どうして生活用品のプラスチックを海で拾うことがあるのか。それは、きちんと処分されずに捨てられたり、知らない間に落とされたものが、…風に飛ばされ、雨に流され…溝に入り、川に流され、海に流され、そして波によって打ち寄せられるからです。
プラスチックは便利で安価で人の生活に欠かせません。では何が問題でしょうか??
自然のものは、人間や動物や虫などの生物に食べられたり微生物の分解によって自然に還すことができますが、プラスチックはそれができず自然に還らないため、地球にどんどん溜まっていきます。そのままにしているといつか人間や生物に影響がでて、いずれ住める環境がなくなるかもしれません。
そうなる前に、人間が出したゴミは人間の手でかたづけましょう!
ビーチコーミングで宝探しを楽しんでもらうことをしながら、ゴミも拾うと、ながら(・・・)で地域の海岸もきれいになります。
宝探し、ゴミ拾い、将来の地球への貢献と、ビーチコーミングは1石3鳥です。
まずは、身近な自然に目を向けて、できることを考えていくことが、地域の自然や国立公園の美しい景観を守ることにもつながっていくと思います。
ビーチコーミングのすすめ
また、生涯学習フェスティバルにウミプラーが遊びに来てくれていたので、ご紹介します。
ウミプラーは、海に流出し海の生き物や人間から邪魔者扱いを受け続けたプラスチックが、これ以上地球を汚し、生き物たちを傷つけたくない、と願い続けたところ、海の神様に命を与えてもらって誕生したものです。
和歌山市友ヶ島のウミプラー
第1号として、和歌山市の友ヶ島で誕生したウミプラーたちに続き、第2号として白浜アドベンチャーワールドでも生まれています。
白浜のウミプラー
各地に流れ着くプラスチックゴミの特徴を捉えたキャラクターで親しみやすく、子どもたちにも大人気でした。
友ヶ島ウミプラーに興味津々
友ヶ島ウミプラーに興味津々!
白浜ウミプラーと記念撮影
きいちゃんと一緒
和歌山県公式キャラクターきいちゃんと一緒
これまでに流出したプラスチックゴミは1度の海岸清掃でなくせるわけではなく、流れ着いたり、離れ去ったりを繰りかえすことから、続けていく必要があります。
和歌山の2つの地で生まれたウミプラーのように、各地の特徴を捉えたウミプラーが各地で生まれることで、ビーチコーミングや海岸清掃に興味をもってもらえるきっかけとなることを願います。
最後に一句。「ウミプラー、楽しくゴミ減、和を増やす♪」