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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

フェスティバル・ブース出展(前編:海岸漂着物)

2022年12月15日
田辺 戸口協子
みなさま、こんにちは。冬らしく冷え込む日が増えてきましたね。
吉野熊野国立公園 田辺管理官事務所の戸口です。
さて、先月11月26日・27日に、田辺市主催イベント『生涯学習フェスティバル』が、3年ぶりに開催されました。
このイベントは、田辺市が11月を“学び月間・学びの日”としており、その記念事業としてテーマに~学びからはじまる人づくり・地域づくり~を掲げたイベントです。今年度は各展示ブースがSDG'sに関連した企画となっていました。
クイズ、わかるかな?
田辺管理官事務所では「海岸漂着物」と「漁具の古今の変化」の、大きく二つのことをテーマにした展示をさせていただき、ブースには2日間で総勢747名の方にお越しいただきました。
今回、前半では展示の中の「海岸漂着物」についてご紹介します。
展示にはまず①自然物を、次に②人工物を展示し、最後にそれらを通して自分事として考えてもらうきっかけとしてもらいたいという思いを込めたものです。
漂着物のなかの自然物
漂着物のなかの人工物
展示の中ではクイズを出題し、皆さんに興味を持ってもらえたものは、人工物の氷菓子の容器と、生活の中で見たことのあるプラスチック製品の欠片でした。
氷菓子の容器には、同じくらいの大きさの四角い穴が3つ空いています。
この穴はどうやってできたか、だれが開けたのでしょうか。
この穴の正体は…
…これはフグの歯形で、噛まれて開いたものです。
このクイズには、ヒントなしに正解にたどり着いた方はいらっしゃらず、正解をお聞きいただいたみなさんが驚かれていました。
「フグの歯形!?」
氷菓子を食べたあと、容器がなんらかの経緯で海にたどりつき、その海で、フグが餌と間違えて噛んだものであると推察されています。陸(海岸)にいながらにして、海の中での動物の行動を知ることができる、おもしろいものの一つです。
もう一つ、興味をもっていただいたのが、みなさんの生活の中で見たことのある何かの「かけら」です。これは何か分かりますか? 
どこかで見たことのあるもの、これなんだっけ…
これは、洗濯ばさみの「かけら」と、人工芝の「かけら」です。
洗濯ばさみも人工芝もプラスチックでできており、日光によって劣化して割れたり、また摩擦により小さな破片が出てきてしまいます。大きなかけらは拾って捨てますが、小さなかけらはどうでしょう。散らばってしまったそれらを全て見つけ、全てを回収できる人は少ないかもしれません。これらプラスチックは軽く、雨が降ると水に浮いて流されます。庭やベランダから流されて排水溝へ、排水溝は地域の小さな川へ、小さな川は大きな川へ、川は海へと、つながっています。そして波に運ばれ海岸へたどり着いたのでしょう。
生活をしていると、実は『ポイ捨てしたものではない』ものを気づかないうちに、出してしまっているものです。
ポイ捨てしないように!と思ってポケットにしまったはずのキャンディーの袋、トイレを利用したあとハンカチを取り出すときに…あれれ…気づかない間にポロッと。
ブースの入り口に展示したおもちゃたちも誰かの宝物だったかもしれません。知らないうちにどこかに置いてきてしまったり、落としたり…。
ブース入口の展示
 
クイズの2問目として、「海岸に流れ着くものの中に、もしかしたら自分が出してしまったかもしれないものはある?」を出題していましたが、展示をごらんになられた方、解説をお聞きくださった方からは「あるかもしれない・ある」というご回答を多くいただきました。
出てしまうゴミや落とし物は気にかけて回収できるようにするのはもちろんですが、全てを追いかけて拾いきるのは現実的に無理なものもあります。プラスチック製品の多くは、劣化してしまうと細分化され無数の破片になって散らばるため、回収は非常に困難になります。
知らず知らずのうちに出してしまったゴミは、その代わりとして、ビーチクリーンアップや地域の清掃活動でゴミ拾いすると、地球上のゴミはプラスマイナス「0」となり、少なくとも今以上には増えないハズ!ちょっと頑張ったら、地球上のゴミは減少に傾くかもしれません。
ご来場いただいた方の中には、ビーチクリーンアップに参加してみたい!というご感想を持たれた方もいらっしゃいました。多くの方と、プラスマイナス「0」の意識を共有できるといいなと思います。
展示のなかでは、ウニの殻やシーグラスや外国語の文字が書かれた漂着物が人気でした。
漂着物の中にはこのようなおもしろいものがたくさんあるので、宝探しをしながら、漂着ゴミ拾いもできたら一石二鳥の楽しい時間をすごせますよ♪
 
「大きな塊のうちに」、そうでなくとも「拾うことができるうちに」、できることから1歩ずつ。

後編では漁具の素材の移り変わりについて、紹介します。お楽しみに♪