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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

開花前に知ってほしい!吉野山の桜について

2023年03月06日
吉野
みなさま、こんにちは。吉野管理官事務所の濵田です。
少しずつ春の気配が感じられるようになってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
奈良では、東大寺二月堂のお水取りが終われば春が来るといわれています。冬の寒さももう少しの辛抱ですね。
 
さて、春といえば桜ですが、みなさんは吉野山の桜をご覧になったことはありますか。
今日は美しいだけではもったいない、吉野山の桜の歴史やその保全活動について少しお話をしたいと思います。

 
 ↑【吉野山の桜】絶景スポットでもある花見櫓展望台からの写真です。奥に見える茶色の屋根が金峯山寺です。

吉野山の桜の歴史は古く、およそ1,000年以上前、修験道の開祖である役行者が感得した金剛蔵王権現を桜に刻んだ故事から、桜が御神木として献木されたことが始まりだといわれています(金剛蔵王権現は吉野山にある金峯山寺のご本尊でもあります。有名な青いお顔の仏様です)。
吉野山の桜はお花見のために植えられたものではなく、信仰から生まれた景観なのですね。
 
その吉野山の桜は、よく耳にするソメイヨシノではなく、シロヤマザクラという品種です。シロヤマザクラはソメイヨシノとは異なり、接ぎ木では増えません。
そのため、地元の公益財団法人 吉野山保勝会さんが時間をかけ、大切にサクランボから苗木まで育成し、植樹をされています。桜が開花するのは1年の内で1ヶ月にも満たないですが、桜が咲いていない期間も下草刈り、種拾い、苔の除去、植栽、施肥等の作業があり、1年を通じて開花のための作業が行われています。
 
◆吉野山保勝会さんの詳しい活動内容はこちらからどうぞ。
http://hoshoukai.yoshino.jp/
 
 このような作業はおもに保勝会に所属する3名の「桜守」と呼ばれる方々が行っています。たった3名で広大な吉野山の桜を管理されているなんて驚きですよね・・・。
その3名の桜守さんのご活躍はテレビでも取り上げられています!ご覧になった方もいるかもしれませんね。
 
◆MBS毎日放送 情熱大陸『一目千本!世界に誇る吉野の桜を守る男たち』
https://www.mbs.jp/jounetsu/2021/04_04.shtml


↑【保勝会さんの桜の苗育成園】サクランボから苗木を育て、植樹できるまでには5年ほどかかるそうです。

また、環境省も自然公園法に基づき、吉野山の景観に支障を与える行為が無いか普段から確認などを行っています。桜の木に付くヤドリギの除去作業も実施し、景観保護を行っています。

◆詳しくは吉野管理官事務所土屋ARのAR日記をご覧ください
https://kinki.env.go.jp/blog/page_00053.html


 ↑【桜につくヤドリギ】みどり色のポンポンのようなものがヤドリギです。
  環境省事業の一環で保勝会さんに除去をお願いしています。

このように1,000年以上の歴史がある吉野山の桜を後世にも伝えていこうと、陰ながら多くの人が活動しています。私もアクティブ・レンジャーに着任し、半年が過ぎようとしていますが、国立公園などで見られる美しい景色というのは、ただ単にそこに広がっているのではなく、多くの人たちの活動や努力があって、今、目の前で見ることができているのかもしれないなと感じるようになりました。
 
少々脱線しましたが、今年も吉野山の桜は多くの人たちの手によって、美しい姿を見せてくれると思います。
「きれいな桜だな」だけでも十分なのですが、そこにまつわる歴史や、その景観を支える人たちの活動についても知っていると、桜の美しさをより大きな目をもって感じることができるのではないかなと思います。
 
吉野山周辺の道路は、桜の時期は交通規制を行っています。
お花見の際は事前に情報収集をしたうえで、お気をつけてお越しください。
 
◆交通規制や桜の開花状況は吉野町のHPをご参考に。
(平成1年からの桜の開花時期や見頃のデータも公表されています。さすが桜の町ですね。)
http://www.town.yoshino.nara.jp/kanko-event/kanouki/