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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

吉野山シロヤマザクラの保全事業

2023年02月28日
吉野 土屋佳秀
 みなさま、こんにちは吉野管理官事務所の土屋でございます。
 
 今回は、桜の名所「吉野山」で行っているシロヤマザクラの保全に係る事業をご紹介します。
 
 吉野熊野国立公園の吉野山地域は標高差約600m、南北8kmに及ぶ尾根筋を中心とした山域で、山岳信仰の聖地であり、シロヤマザクラの名所です。日本における多くの桜の名所では近代になってから、桜並木を整備したり、古くからある古木を大切に保護したり、いわゆる「花見」のために桜を管理しています。しかし、吉野山の桜はそれらとは異なり、山岳宗教と密接に結びついた信仰の桜として現在まで大切に保護されてきました。

 しかし近年、そのシロヤマザクラにヤドリギが多数寄生し、樹勢の低下が見られたことから、対策が必要となっていました。

 そこで、環境省ではグリーンワーカー事業(注1)により、地域の団体とともにシロヤマザクラに寄生したヤドリギを除去し、景観の再生及び桜樹林の保全事業に取組んでいます。
 
 今年度の事業は(公財)吉野山保勝会によって閑散期にあたる冬期間に実施していただきました。
     【写真左:ヤドリギ除去前】           【写真右:ヤドリギ除去後】
 
 この日、作業の確認に伺った現場では、桜の高い位置に寄生したヤドリギを昇木によって除去していました。ザイルを器用に操って体を安定させ、長柄鋸を使用して安全に作業されていました。
 除去したヤドリギは、みずみずしく見えて、とても美味しそうにも見えます。
※ヤドリギの花言葉は「困難に打ち克つ」「克服」「忍耐」。ヨーロッパでは「ロマンス」だそうです。
 
 すると、ニホンジカが近寄ってきて、ヤドリギを「シャキッ!シャキッ!」と音をたて食べ始めました。
 保勝会の方に話を聞くと、ヤドリギの美味しさを知ったシカたちが、除去したヤドリギを求めて作業をしていると近寄って来るようになり、たくさんのシカたちに取り囲まれたこともあったそうです。
 除去したヤドリギは、シカのエサにならないように作業後には回収しています。

吉野山が桜で満開となる春が待ち遠しいです。
「春よ来い♪早く来い♪♪」