生息状況モニタリング調査

個体数調整

シカによる植生への影響調査

区域保全対策・単木保護対策

大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画（第2期）の策定

(1)生息密度調査

　糞粒法による近年の生息密度は、全体的に安定し、大きな変化は見られませんでした。ルートセンサス法では、1990年代後半以降減少傾向を示していますが、西大台での生息密度が東大台と同程度の値となっています。全体的には、依然、高い密度で推移しています。

(2)行動圏調査

　平成17年度にGPS発信機を装着したメス成獣4頭について、解析を実施しました。測位成功率は約6割から7割であり、他地域よりも高い測位成功率を示しました。
　4個体とも12月から3月を除き緊急対策地区を利用し、12月から3月にかけて3個体は東方向の尾根伝いに低標高地域に移動した後再び緊急対策地区に戻りました。残りの1個体は東川付近の谷沿いに移動し、再び緊急対策地区に戻りました。

(1)捕獲状況

　平成18年6月5日から12月5日までの54日間実施し、25頭（オス8頭、メス17頭）を捕獲しました（捕獲目標78頭）。
　 捕獲方法は、アルパインキャプチャー（9頭）、麻酔銃（16頭）及び簡易捕獲ワナ（0頭）を併用しました。
　 捕獲効率（頭数／日数）は0.46であり、平成15年度から減少傾向を示しています（15年度：1.25、16年度：0.75、17年度：0.48）。

(2)捕獲個体分析

　栄養状態（RKFI指数）については、サンプル数が少なく傾向が分かりませんが、夏季と秋季での変化は見られませんでした。成獣メスでは夏季から秋期かけ値が高くなりました。
　 繁殖状況については、胎児による妊娠率は7.1%（2歳以上のメス14頭中1頭）、乳汁の有無及び胎児による繁殖率は85.7％（14頭中12頭）で昨年のよりやや高くなりました（昨年度75.0%）。
　 胃内容分析については、例年通りササが主体でしたが、秋は夏のササ依存から枯葉への依存へ転換していました。また、その他今年度の特徴として、針葉樹と堅果類が少なかったこと等が確認されました。

(1)下層植生調査（緊急対策地区）

　ササ類については、ミヤコザサは被度、高さともに増加しているのに対し、スズタケはいずれも減少していました。

(2)剥皮状況調査（緊急対策地区）

　平成17年度に、剥皮状況と枯死の関係について「剥皮度が大きくなるほど枯死率が高くなる」という整理がなされたため（平成8年～17年度調査結果より）、本調査は一旦休止し、今後はモニタリングのため一定の間隔で実施することとしました。

(3)毎木調査・植生調査（緊急対策地区）

　緊急対策地区において、下層植生調査を実施し、剥皮状況等について確認しました。

(1)区域保護対策（防鹿柵）

　森林生態系の多様性の保全のため、防鹿柵を設置すべく、測量を実施しました。（4箇所　約3.06ha）
　 ※防鹿柵：平成19年7月設置予定。

(2)単木保護対策（ラス巻き付け）

　防鹿柵内の樹木（枯死木・倒木含む）、防鹿柵外の枯死木及び倒木に巻きつけられていたラスを撤去しました。（ラスを撤去した樹木本数：約2,000本）

(3)パッチディフェンス

　ギャップ内の稚樹・幼木などの後継樹の保全のため、試験的にパッチディフェンスを設置すべく、測量を実施しました。（5箇所12基　約0.09ha）
　※パッチディフェンス：平成19年7月設置予定。
　※大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画（第2期）案では、ニホンジカによる採食等に起因する直接的な影響を排除することを目的とし、植生保全対策を実施することとしています。森林生態系の多様性の保全のための防鹿柵、ギャップ内の稚樹・幼木などの後継樹の保全のためのパッチディフェンスについては、森林生態系部会での検討事項に移行します。

　ニホンジカ保護管理部会及び個体数調整、植生保全対策ワーキンググループを開催し、現行計画の実施結果の評価を行うとともに、大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画（第2期）の内容について検討を行いました。
　さらに、計画案について近畿地方環境事務所ホームページにて意見募集を行うとともに、奈良県吉野町において説明会を実施しました。