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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

2023年夏の冠島調査に参加してきました

2023年10月03日
竹野 久畑久美子

みなさまこんにちは。
竹野自然保護官事務所の久畑です。
少し前になりますが8月に、京都府舞鶴市にある冠島の調査に参加してきました。
冠島は日本最大級のオオミズナギドリの繁殖地として国の鳥獣保護区や天然記念物に指定され、上陸が禁止されているなど、厳しく保護されている無人島です。春から夏にかけて日本に渡ってくるオオミズナギドリは、地面に巣穴を掘り、平坦な地面からは飛立つことができないので、木に登ったり岩場などの高いところから飛立つなんとも面白い生態をしています。 毎年抱卵期の5月と雛の生育期の8月に調査が実施されています。 自衛隊支援の下、ゴムボートに乗り換えて上陸します。

ゴムボートで上陸
     (ゴムボートに乗り換えて上陸します)

調査隊の調査道具や荷物をバケツリレー方式でテント場に運び、テントの設営が終わったら調査の説明を受け、調査場の確認を行いました。 本番は真っ暗闇の中、ヘッドライトのみで動くので、明るいうちに調査区画を分けるロープを張りました。
夏調査の1日の内容をご紹介します。
18時頃から巣に帰ってくるオオミズナギドリの個体数を知るためのカウント調査、20時から個体識別をするために捕獲して足環をつける調査、28時(午前4時)頃から島から飛立つ個体数を知るためのカウント調査と足輪をつけた個体の計測調査、巣に残された雛の計測調査と、決められた区域内の巣穴の深さや利用状況などの調査を行いました。
夕方、島に帰ってくるオオミズナギドリは島のまわりを反時計回りに飛びます。それに合わせて水面ギリギリを飛ぶオオミズナギドリを数えるカウント調査を行います。今回の調査では2日目、3日目にたくさんのオオミズナギドリが島の近くで柱のように旋回する鳥柱という現象を見ることができました。 時間が経つにつれどんどん数が増え、旋回しながら上昇を続け、島に戻ってきました。

  
  (双眼鏡をのぞきながら鳥を数えます)      (鳥柱が大きすぎて写真に収まらない)

20時からの足輪調査に向かう頃には昼の静寂はどこへやら。 巣穴に戻ってきたオオミズナギドリは飛立つまでけたたましい声で鳴き交わしています。 暗闇の中、ヘッドライトの明かりを頼りに昼間に張ったロープの区画内で捕獲した個体の足輪番号の記録を取り、足輪のないものには新しく装着する区画調査を行いました。

  
   (何もいなかった島がこの状態に)            (調査の様子)

全区画を調べ終わると、4時からの飛立ち調査に備えテント場に帰り、休憩や仮眠を取りました。 オオミズナギドリは平坦な地面から飛立つことができません。そのため海が見えるひらけた岩場や木に登り、滑空して飛立ちます。 飛立ちのための調査場に向かう途中で行列を作って木に登っているオオミズナギドリを見つけました。飛立ちに使われている木は昼間に見るとオオミズナギドリの爪痕で道のように削れています。

 
   (飛立つために木に登る)        (飛立ちに使われる松の木は道
                        のように樹皮が剥がれています)

飛立ち場調査では20時の調査と同じことを行いますが、飛立っていくオオミズナギドリの数をカウントしたり、捕まえた個体の計測も行いました。 1時間もすると殆どが飛立ち、島は静かになります。 その後は各々休息を取り、昼間には鳥獣保護区の標柱のチェックと整備などを行いました。
雛の計測調査も行いました。 ノギスで体長などの身体測定と体重を量りました。 明け方の雛のおなかは水風船のようにパンパンで、夜の間に帰ってきた親鳥からたっぷりと餌をもらったのだなと微笑ましかったです。


        (重さを計測している様子)

あっという間に3泊4日が過ぎ、離島する日になりました。
後の調査報告では今年も例年どおりの生息状況だったようです。

それでは、また次回。