アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
ストーリーを知れば、今よりもっとよしくま(吉野熊野国立公園)が好きになる
2023年08月23日 こんにちは、吉野熊野国立公園管理事務所の湊です。
暑すぎて事務所内での会話も減る今日この頃ですが、先日、ツクツクボウシや鈴虫の鳴き声が聞こえてきました。つい最近までクマゼミの鳴き声が目覚まし時計換わりだったのですが、熊野地域の海岸部では、お盆を境に秋の気配が色濃くなります。あんなに騒がしかったクマゼミの鳴き声が止み、ツクツクボウシや鈴虫が鳴き出し、夕方は幾分か気温も下がり、秋の気配を醸し出します。
熊野地域では、初盆を迎える家庭で、お盆の期間中、迎え火を炊き、お盆が終わると灯籠焼きを行い、花火を打ち上げて供養を行う風習が見られます。盛大さで知られる熊野大花火大会も実は初精霊供養から始まったものなので、8月17日に実施されています(※今年は高波の影響のため延期となりました)。
打ち上げ花火スターマイン 会場の空いっぱいに広がる花火
花火の他にも、熊野那智大社の主祭神である伊邪那美大神(イザナミノミコト)様が火の神を生んで亡くなられた伝承や、護摩炊きや火祭りが多いことなど、アクティブ・レンジャーになって、吉野熊野国立公園には何かと火にまつわる話や行事が多いことに気づかされました。
そんな夏のある日、とあるガイドをされている方から、「近くでヒオウギの花」が咲いているよと言われ、「はあ、ヒオウギですか」と気のない返事をしたところ、「知らないの、那智の扇祭りで飾られる花だよ」と言われ、ハッとなりました。
ヒオウギの花(阿須賀神社にて)
日本三大火祭りの1つと言われる那智の扇祭り。実は一度も見たことがないので、どんな祭りなのか知りませんでした。ヒオウギの花が飾られる扇神輿は、風を起こして災厄を除いて、福を招く、火は生命の源と解され、万物の源を表すという。なるほど花火もそうですが、火を見ると何か血が騒ぐ感じがするのはそういうことか。何気ない会話から、ストーリーを知ることでよしくまの魅力にどっぷりつかっていくなと感じる自分がいました。
ヒオウギの花が飾られている扇神輿 那智の火祭りの見所である大松明
大松明に先導される扇神輿
熊野地方の火祭りですが、那智の扇祭り(熊野那智大社:7月14日)、紀和の火祭り(熊野市紀和町:8月5日)は、今年は終了しましたが、八咫(ヤタ)の火祭り(熊野本宮大社、大斎原(オオユノハラ):11月26日)、本州最南端の火祭り(潮岬望楼の芝:冬季)、御燈祭り(新宮市神倉神社:2月6日)など、まだまだ続きます。それぞれに物語がありますので、まずは知って、見て、「よしくまの火祭り!」を感じてみてください!きっとあなたにとって一生の思い出になることでしょう。