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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

鳥の巣半島観察会~里山と里海のつながり~開催!(こぼれ話編)

2025年11月27日
田辺 戸口協子
みなさま、こんにちは。 
吉野熊野国立公園田辺管理官事務所の戸口です。 

前回までの2回で、鳥の巣半島で実施した自然観察イベントをご紹介してきましたが、今回はこぼれ話としてハカマカズラをご紹介します。 

イベントで里海周辺の道を歩いていたら、途中の生垣にハカマカズラのツルがからまっていて、実を付けていました。ハカマカズラはマメ科の植物で、このあたりの地方名ではワンジュとよばれています。観察会をした鳥の巣半島のすぐそばにある神島にも昔から生息の記録があり神島では、南方熊楠がこの保全を強く推したことでも知られており、それがきっかけで国の天然記念物なったことは地元では有名です。 
ハカマカズラがからまっている
ハカマカズラの実
ハカマカズラの実と房
ハカマカズラの種子
昔、この地のハカマカズラの種で大数珠が作られ、今もお寺の祭事に使われているという話から、今回、地元の方のご厚意により、急遽見せてもらえることになりました。 
地域の大数珠をみんなで触る
ハカマカズラ(地域名:ワンジュ)の種で作った大数珠
沖に浮かぶ神島
鳥の巣半島から望む神島
豆の中にはへそと呼ばれる鞘とくっついていた部分があるのを見たことがあると思いますが、ハカマカズラのへそはへそというより「帯」や「ベルト」を思わせるように周囲を包むほどです。種はどら焼きの縁をベルトで巻いてキュッと絞めたような形で、少し周囲に角がついていて大変硬いです。ハカマカズラの実を使って作られたこの大数珠は、地元の方々に長年使われてきて、ベルトの段が摩擦により磨かれ、丸まっていました。この大数珠は、室町時代の鳥の巣半島に建立された東光寺(今は田鶴に移転)の和尚さんにより祀られた子安地蔵で使われているもので、今も変わらず地元の方に使われているそうです。地元の方の思いと共に、長年大切に使われてきたものであることが参加者さんたちにもよく伝わったようで、感動されていました。貴重なものを見せていただき、ありがとうございました! 

来年の2月で、吉野熊野国立公園は国立公園指定90周年を迎えますが、ハカマカズラにゆかりのある神島も、国の天然記念物に指定されて90周年。10年後にもお揃いで100周年を迎えます。 

これらの場所は10年後も保護地として、生物多様性の高い場所として、地域で維持し続けたいと改めて思います。 
鳥の巣半島俯瞰
鳥の巣半島