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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

オオヤマレンゲ保護防鹿柵の巡視と補修

2023年02月14日
吉野 土屋佳秀
 みなさま、こんにちは吉野管理官事務所の土屋でございます。
 今年度、長野県松本市から参りました。主に吉野山・大峯山・大杉谷地域を担当してあります。
 体を動かすことが好きで、休日は登山やランニングをしています、どうぞよろしくお願いします。
 
 現在、奈良県大峯山系の多くの登山道は閉山していますが、今回は、令和4年度春と秋に行った大峯山脈に自生しているオオヤマレンゲの保護に係る作業についてご紹介します。
 
 近畿最高峰の八経ヶ岳(1,915m)と明星ヶ岳(1,894m)周辺のオオヤマレンゲ自生地は1928年(昭和3年)に国の天然記念物に指定され、そこに至る登山道(大峯奥駈道)は「紀伊山地の霊場と参詣道」としてユネスコ世界文化遺産に登録されています。
 オオヤマレンゲの花はハスの花(蓮華)に似た清楚な白い花を咲かせる、ファンがとても多い植物です。しかし、ニホンジカの食害による衰退が著しく、奈良県の絶滅寸前種(絶滅の危機に瀕している種)にも指定されています。

 ニホンジカの食害からオオヤマレンゲを保護し、植生を復元させることを目的に環境省では大規模な防鹿柵(ぼうろくさく)を設置しています。この防鹿柵ですが積雪や暴風雨等による倒木や落枝によって破損したり、その端部からシカがネットを解いてしまい柵内に侵入してしまうこともあります。そのため、施設状況確認の巡視と補修を環境省と地元の奈良県天川村役場の方と定期的に行い機能維持に努めています。
     (写真左:防鹿柵の破損の様子 写真右:職員による簡易修繕後)
 
 令和4年4月頃の巡視の途中、一つの柵内にシカが4頭侵入しているところを見付けました。このままでは十数年保護した柵内の植生が一気に失われるため、複数の職員でシカの追い出し作業をおこないました。結果、すべてのシカを柵外へ追い出すことに成功し、ひと安心しましたが、縦横無尽に飛び回るシカたちが相手なのでとても苦労しました。

 また、登山道上にも防鹿柵が設置してありますが、登山者用の扉の閉め忘れもたまにあるようです。通過後はシカの侵入防止のために扉をきちんと閉めていただくよう、ご協力をお願いします。(今回は周知看板を設置しました)

 また、紀伊山地はツキノワグマの生息地です。山中での業務のため、ツキノワグマの痕跡(糞や熊棚など)を見かけることがあります。「クマ鈴」を鳴らして人間の存在を気づかせ、クマの方から遠ざかってもらうようにしていますが、万が一遭遇したときのために「クマ撃退スプレー」を手元に用意しながら行動しています。
     【クマの糞:木の実を食べた色】         【熊棚:真ん中のモサモサ】
 
 紀伊半島のツキノワグマは冬眠しない個体も多いと地元の方から聞いています。雪山登山やスノーシューハイキングへお出かけの際は十分お気を付け下さい。