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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

海の生き物観察会~すさみ町の天然記念物の島・江須崎で磯遊び

2022年09月28日
田辺 戸口協子
キンモクセイの香りに遭遇する度に心地よい気分になる今日この頃。朝夕は秋の空気に包まれる季節となり、澄んだ空には秋雲の芸術が目を楽しませてくれます。
みなさま、こんにちは。吉野熊野国立公園、田辺管理官事務所の戸口です。
 
先日9月24日に、田辺管理官事務所で開催した、海の生き物観察会の様子をご報告いたします。
この日は台風15号の通過直後ではありましたが、すさみ町江須崎では快晴、穏やかな海で観察会日和に恵まれました。
台風一過の江須崎
今回の観察会はすさみ町立「エビとカニの水族館」の館長・平井厚志さんを講師にお招きし、ご応募いただいた小学校3年生から大人までを対象にすさみ町江須崎の海岸で、海の生き物について教えていただきました。
高台となっている日本童謡の園公園駐車場に集合し、安全対策の話などをしてからいざ出発!国の天然記念物になっている江須崎を望みながら階段を下りると海岸に出ます。
日本童謡の園公園から海岸目指して
江須崎周辺の海岸線は砂浜と磯が混在する海岸です。
江須崎の海岸の様子
平井館長のお話によると、この海岸では新種の生物が何件も見つかっていて、館長や、水族館主催の観察会参加者により見つけられたものが新種であったこともあるそうです。今回の参加者からも、自分も新種を発見したい!との声があがっていました。
潮間帯での観察は、波打ち際から30m程度のところから始まりました。一目には湿っているところがなさそうな、生物なんてどこにいるの?と思うところでした。
ここに生物がいるの?
よく見ると、…
いました!そんな乾いたようなところにも生物が。「タマキビガイ」という5mm程度の巻き貝です。
アラレタマビキ
次に、付近にある波のかかっていない石をひっくり返して観察しました。
石をひっくり返すと… 発見!ナマコ!!
石をひっくり返すとその下には少し海水で湿っている場所で、この場所では、ムラサキクルマナマコやイシダタミガイなどが観察できました。
 次に、少し海に近づいた場所の石をひっくり返すと、海水が浸っていました。この場所ではナマコ以外にもイソカニダマシやオウギガニなども見られました。
海水の下に砂があるところ 捕まえたカニ
海水が浸っている砂を掘り起こすと、ゴカイの仲間がたくさん出てくることを教えていただき、石の下に見えている生物だけでなく、砂を掘り起こして生物探しをしました。何か出てくるか、どんなところにゴカイ類が多いかなどが徐々に分かるようになり、より面白くなってきたようです。
砂の中、何が見つかるかな?
さらに海に近づいた海水の差す静かな水辺では、これまでも確認できた生物以外にエビやウニ、小さな魚が3種程度見つけることができました特に魚は動きがすばしっこく、写真さえうまく撮ることができません。小さなタイドプールでも捕まえるのは至難の業でしたが、一人の小学4年生の女の子は、オヤビッチを7尾も捕まえている様子に感服しました。
参加者は みんな夢中!

波打ち際では、何種類もの稚魚なども泳いでおり、底の方にはエビ・カニ・カイがたくさん確認できました。
熱中して、生物と格闘すること1時間半。
名残惜しくはあったのですが、観察を一旦終了し、今回、見つけることのできた生物を振り返ってみました。すると、31種類程度の生き物を見つけられていたことが分かりました。
みんなで見つけた生物

 また、今回は岸側から徐々に、波打ち際に近づきながら生物の様子を観察しましたが、その様子を振り返る中で、波打ち際に近づくほどに観察できる生物の種数が多く見られるようになっていた変化に気づきました。
これは、潮間帯上部ほど生物にとって生存環境は厳しい(水からの露出時間や水温、波浪など安定しない環境である)ためであるということを講師からご説明いただきました。これにより、海に近づくほど生物種が多くなる理由がよく分かりました。

今回見つけた生物の中に、白い色をした小さくてかわいいナマコがいました。
小さな白いナマコ

これはナマコの子どもで、種がわからなかったため、一度水族館に持ち帰って調査することになりました。
今回は許可を得て、調査のためにこの白いナマコを持ち帰りましたが、漁業法でナマコは全ての種で採取を禁止されています。
海岸で遊ぶときは、危険生物への注意に加え、採取禁止の生物や海藻もあるため、事前に調べてから遊んでくださいね。