皆さん、こんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。
先日、環境省が主催する「子ども農山漁村体験プロジェクト」の一環で子ども向けふれあいイベント「夜のアカテガニ自然観察会」を開催しましたので、その様子をご紹介いたします。
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受付の様子 |
今回イベントの会場にもなった瀬戸内海国立公園淡路地域に指定されているこの由良(ゆら)地域は、周辺の山地にはウバメガシ、シイ等の常緑樹林が広がり、砂浜にはハマゴウやハマボウ等の海浜性植物など、豊かな自然環境が残る貴重な場所です。環境省では、この自然や景観を守り、皆様に知ってもらうべく、成ヶ島や生石(おいし)公園に展望地や看板等を整備し、利用できる環境を整えています。
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成ヶ島の展望台から見る景色 |
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生石(おいし)岬展望台から見る紀淡(きたん)海峡 |
さて、話しは戻って今回のイベントの主役であるアカテガニ、みなさんは見たことがありますか?どんな生き物なのか知っていますか?
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アカテガニ、甲羅の笑顔マークが特徴です |
海のイメージが強いカニですが、アカテガニは陸上で暮らす珍しいカニで、昔話のサルカニ合戦のモデルとなったカニともいわれています。しかし陸上で生活するのに子どもは海でしか育たないため、夏の大潮のタイミングでおなかに卵を抱えたアカテガニが一斉に陸上から海に移動し、波打ち際で体を震わせて卵を放す(これを放仔(ほうし)と言います)という習性を持っています。
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国立公園について説明をしました |
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アカテガニの赤ちゃんを顕微鏡で観察しました |
説明をしていると、次第に日が落ちてきて、観察できる環境が整ってきました。参加者みんなで、アカテガニがいる海岸沿いの砂浜に向かいます。
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暗い中、みんなでアカテガニを探します |
砂浜に広がるハマゴウ群落の下には、おなかに卵を抱えながら、潮が満ちてくるのを待っているアカテガニが観察できました。
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アカテガニのメス お腹に黒い卵をたくさん抱えています |
カニを刺激しないようにじっと観察していると、実際にアカテガニが海に向かって卵を放す、放仔(ほうし)行動を観察することができました。この時期でしか見られない貴重な瞬間を子どもたちに見せることができ、主催者側として、ほっと一安心した瞬間でもありました。
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放仔の瞬間は歓声が沸きました |
アカテガニが生息し続けるには、森と海がつながった環境が重要と考えられています。昔は日本の全国にそういった場所がありましたが、森林の開発や海岸整備の影響もあり、そのような場所はだんだんと少なくなっています。淡路島でも長年開発が進んでいるので、そのような環境は減ってきています。今回の自然観察会を通して、自分たちの住んでいる地域の自然や生き物に関心を持ち、大切にする気持ちを子ども達に持ってもらえれば、とてもうれしいです。