近畿地方のアイコン

近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

絶滅危惧生物・ヨドシロヘリハンミョウの地域観察会 (幼虫観察編)

2022年08月29日
田辺
みなさま、こんにちは。
吉野熊野国立公園・田辺管理官事務所の戸口です。
残暑お見舞い申し上げます。
今年は日本海側で豪雨となるところが多く、西日本および太平洋側では猛暑と、全国的に厳しい天候となっていますね。この異常気象は地球温暖化に起因するとも言われていることから、カーボンニュートラルとなる生活スタイルへの転換を強く意識する季節でもあります。そんな中ではありますが、過度な節電は避け、熱中症にはくれぐれもご注意ください。
 
先月下旬、和歌山県白浜町において開かれた昆虫の観察会に参加して来ました。
この観察会は地域のみなさんが主催でされている観察会で、観察対象は環境省レッドリストにおいて「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」、和歌山県レッドデータブックにおいて絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)に分類されている『ヨドシロヘリハンミョウ』という、コウチュウ目ハンミョウ科の小さな昆虫です。
 
ヨドシロヘリハンミョウ
ハンミョウの種には別名に「道教え」「みちしるべ」の名があり、歩いていると人の前を跳ねて少し先に着地する、跳ねて少し先に着地するという特徴的な移動方法をとる可愛い虫です。「みちしるべ」という名前から、記憶の中のキャラクターを思い出します。どうやらそれは「こっちだヨウ平」くんという名のキャラクターであることを、今回知りました。昭和61年8月10日、旧建設省(現国土交通省)が道路整備計画の一環で「道の日」を制定した際に、正式キャラクターとして生まれたものだそうです。このキャラクターは色鮮やかな「ハンミョウ」をモチーフにしたもので、昆虫好きの中でもファンの多い種になります。この『ハンミョウ』も和歌山県レッドデータブックにおいて準絶滅危惧(NT)に指定されている昆虫です。(ちなみに、こっちだヨウ平君も最近、近畿ではあまり見ることがないため、レアキャラ。こっちだヨウ平くんもある意味、希少種かも。)
ハンミョウは2cmほどの大きさであるのに対し、今回の観察対象の「ヨドシロヘリハンミョウ」は1cmほどの小型で、体色も落ち着いた灰茶色をしています。甲の部分に白い縁取りがあるため、名前に「シロヘリ」がついているものです。「ヨド」は、大阪府にある「淀川」の河口で採取された個体に基づいて記載された種であることに由来しています。
ハンミョウ ヨドシロヘリハンミョウ
ハンミョウの仲間には内陸性のものと、海辺や河口等に生息する海浜性のものがあり、ヨドシロヘリハンミョウは海浜性の昆虫で、生息域は瀬戸内海沿岸や四国・九州、外国では朝鮮半島・中国中部、台湾などです。しかしながら、「ヨド」の名前の由来である淀川周辺では1959年以降に絶滅したと考えられており、瀬戸内海でもほんの一部、また和歌山県においては白浜町の一部のみに見ることが出来る地域が残っています。
白浜でのヨドシロヘリハンミョウ生息環境
この地域での発見は1975年で、白浜町のある河口で、京都大学の甲殻類専門家がカニの調査中にハンミョウの一種と思われる昆虫を見つけ、京都大学瀬戸臨海実験所(白浜町)のハンミョウの専門家に情報共有したことがきっかけであったそうです。
和歌山県内での他の河川では見つかっておらず、平成28年から生息地の一部が和歌山県の天然記念物として指定され、保護の対象となっています。地域では観察会などを通じて地元の方への周知を広げ、地域の宝として大切にしています。
 
地域の方々が20名程度集まり、観察開始。
前半では、河川敷の砂泥地にいる幼虫のことを教えていただきました。
河口付近のヨシ原の砂泥地表面に2㎜程度の穴が開いているものがあります。縦に伸びるその穴に細い棒を差し込んだ際に、もし動いたら…
その穴(巣孔)にはヨドシロヘリハンミョウの幼虫がいる可能性が高いということを教えていたただきました。
幼虫の巣孔らしきもの
大きな顎を持つ幼虫は、このような縦穴の巣孔入り口近くにひそみ、近づいてくる虫などを捕食するのだそうです。その習性を生かして、巣孔に差し込んだ棒や葉に噛みついてくる幼虫を釣ってみたかったのですが、棒が動く巣孔は見つけられませんでした。試した穴では、多くが既に成虫になっていたのかもしれません。ハンミョウの種類は幼虫も成虫も生きた虫を食べる肉食の昆虫です。
幼虫の巣孔を観察
なお、巣孔は満潮時には水没してしまうような場所にありますが、潮が差す前に幼虫は自ら巣穴の入り口を土で塞ぐことで水の侵入を防いでいるそうです。この巣孔を塞ぐタイミングは体内時計によるものということが研究により分かっています。これには昆虫の本能の奥深さを感じます。
 
ここまではヨドシロヘリハンミョウの幼虫についての観察の様子でした。
後半は来週ご報告いたします。
引き続き、成虫の観察の様子をお伝えしますので、お楽しみに!
 
※屋外で昆虫観察などをするときは水分補給を小まめにし、熱中症にならないよう、くれぐれもご注意ください。
※昆虫採取する場合は、採捕種や採捕場所などの制限の有無を事前確認すると共に、決められたルールを守ってお楽しみください。