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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

宇久井の森で植物三昧

2022年07月20日
熊野 東希穂
こんにちは、吉野熊野国立公園管理事務所の東です。
多雨地域の熊野では非常によく雨が降っています。
6月某日、晴れているうちにと、「環境省 宇久井ビジターセンター」に行きました。
 
宇久井ビジターセンターは和歌山県那智勝浦町宇久井(うぐい)の、環境省の所管地内にあります。環境省が設置し、自然ふれあいスタッフの方や、ボランティア団体「宇久井海と森の自然塾」の皆さんが運営しています。
維持管理のためときどき施設を見に行くのですが、私にとって宇久井の森の自然は、ほとんど未知の領域です。
南国らしい多様な植物でいっぱいの静かなところですが、木々や生き物の気配から、不思議と賑やかに感じられます。
 
環境省自然公園指導員の榎本さんが、植物の名前と特徴を教えながら、宇久井の森を一緒に歩いてくださいました。植物の知識がほとんどない私ですが、気合いは充分。
 
園地内は遊歩道となっています。利用者が安全に歩行できるよう、いつも自然塾の皆さんが見て下さっていますが、設備面を支えるのは環境省の職員です。実際に歩くと、安全面の状況もよく分かりました。
 
しっかりと歩道の安全確認をしつつ、今回憶えた植物をシェアします。
 
 ヒメユズリハの葉
ヒメユズリハ
「譲り」葉、「ユズリハ」。正月飾りなどに用いられてきました。10mくらいまで大きくなるようです。
 
 ハマセンダンの幹
ハマセンダン
本州では珍しい南国の木です。こんな大木がミカン科とは意外でした。
 
他にも、平賀源内がオリーブと間違えた「ホルトノキ」、キウイフルーツのなかま「ヒメサルナシ」など、個性的な植物がたくさん見られました。
 
どうして榎本さんはそんなに植物をたくさんご存じなのでしょうか。
意外にも、大人になってから植物を憶えたそうで、
まずは「100種」憶える。
身近なものから憶えていく。
そうすると基礎ができて、沢山分かるようになっていくのだそうです。
 
野草が分かるようになってきたら、今度はもっと下にも目が行くようになります。まだ育ちきっていない小さな芽から、何の植物か、どんな木になるのか、考えるのだそうです。そして次第にコケや地衣類にも興味がわいてきます。
 
 足下のコケ
足下のコケ
 
ところで、南方熊楠という偉人は、熊野では有名人です。那智山の原始林に分け入り、粘菌などの研究をしていた期間があります。植物を探して宇久井ビジターセンターをうろうろしていると、時間を忘れてしまいそうです。はじめて熊楠の気持ちが分かるような、そんな体験でした。
 
カメラを「顕微鏡モード」にして、至近距離で葉っぱを撮影してみると・・・。
 
葉っぱの裏側ズーム
網目模様が出現します。植物の命を感じて、怖いような、美しいような、不思議な気持ちです。
 
シイの葉
シイは、葉の裏側を見ると黄色いので、見分けることができるようになりました。(宇久井のシイは「スダジイ」が多いそうです。)
写真には分かりにくいですが、「“きんきら”やろー。」と榎本さんが言うほど、シイの葉は素敵な色をしています。
 
また、葉の上をよく見るとかわいい「あおむし」がいました。竹林の中を動くアナグマの影も、私たちのすぐそばまで来ていました。植物だけでなく、森の生き物の姿も間近に感じることができる、宇久井ビジターセンターの魅力。あなたもどっぷり浸かってみませんか。
 
宇久井ビジターセンターHP:https://www.ugui-vc.jp/
 

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