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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

2022年春の冠島調査に参加してきました

2022年07月14日
竹野 久畑久美子
みなさま、こんにちは。
竹野自然保護官事務所の久畑です。
5月に、京都府舞鶴市にある冠島の調査に参加してきました。
冠島は日本最大級のオオミズナギドリの繁殖地として国の鳥獣保護区や天然記念物に指定され、上陸には舞鶴市教育委員会の特別の許可を得る必要があるなど、厳格に保護されている無人島です。オオミズナギドリは繁殖のために春から夏にかけて日本に渡ってくる夏鳥で、魚の群れを知らせてくれる鳥としてサバドリと呼ばれているそうです。昼間は沖合で魚を捕っている鳥ですが、夜の間は島にある巣に帰ってきます。
地面に巣穴を掘り、平坦な地面からは飛び立つことができず、木に登ったり岩場から飛び立つなんとも面白い生態をしています。
毎年5月と8月に舞鶴市主催で定期調査が実施されていますが、コロナ禍で昨年の調査は中止となり一昨年の夏以来の上陸となりました。前回、私は日帰りだったのですが、今回は3泊4日で参加しました。冠島調査研究会の方をはじめ、西舞鶴高校の生物クラブ、舞鶴市役所の方などが参加されていました。
 
海上自衛隊の協力を得て、艦船からゴムボートに乗り換えて上陸しました。

荷物をテント場に運び、設営が終わったら調査の説明を受け、調査場の確認を行いました。本番は真っ暗闇の中、ヘッドライトのみで動くので、明るいうちに区画を分けるテープや、反射テープを巻いたポールの設置をしました。
1日の調査内容は18時頃から巣に帰ってくるオオミズナギドリの個体数を知るためのカウント調査、20時から個体識別をするために捕獲して足環をつける調査、4時頃から島から飛び立つ個体数を知るためのカウント調査です。捕獲調査には環境省の特別の許可を要するため、参加者はあらかじめ許可を取得し、当日もおのおの許可証を携帯して調査に臨みます。
冠島調査研究会の方から詳しくレクチャーを受け、調査に備えました。

早めに夕食を済ませ、カウント調査がはじまりました。
             
望遠鏡を使って1分間ごとに横切るオオミズナギドリをカウンターで数えていきます。水面スレスレを飛んでいる黒い点がオオミズナギドリです。
少ないうちは1羽1カウントで押せますが、どんどん数が増えていき、押すのが間に合いません。そうなると10羽で1カウントと数え方を変えていきます。島に帰ってくるオオミズナギドリは弾丸のように頭上を掠め、着陸というより墜落してきます。20時頃になると昼の静寂はどこへやら、オオミズナギドリの鳴き声で島は埋め尽くされました。

20時からの足輪調査では2班に分かれ、区画内で捕獲した個体の足輪番号の記録を取り、足輪のないものには新しく装着しました。オオミズナギドリは平坦な地面から飛び立つことができないので、思ったよりはすんなり捕まってくれましたが、捕まえると必ずかぎ針のような嘴で咬まれます。結構痛いのですがだんだん慣れてきました。ただし、新しい足輪を装着するのは難しく、なかなか慣れませんでした。
 
23時頃には全区画が調べ終わり、3時半からの飛び立ち調査に備えテント場に帰り、休憩や仮眠を取りました。テント周辺にも巣穴があるのでとんでもない鳴き声の中、眠っているのか起きているのかわからない状態のままで3時半を迎えます。

先ほど書きましたが、オオミズナギドリは平坦な地面から飛び立つことができません。そのため海が見えるひらけた岩場や木に登り、滑空して飛び立ちます。
     
調査はその飛び立ち場の一つとなっている岩場で行います。
飛び立ち場へ向かう調査隊の隊列に沿ってオオミズナギドリも行列を作っていました。

飛び立ち場調査では20時の調査と同じことを行います。違うのは足元にウジャウジャ集まってきているので捕獲がしやすい事、次々と登ってきて海に向かって飛び立っていく様子が見られる事です。また、飛び立っていくオオミズナギドリの数もカウントしたり、捕まえた個体の体重や体長を測ったりもします。
1時間もすると殆どが飛び立つか、巣穴の中でじっとしているものだけとなり、島は静かになります。朝日の中遠くの海面にオオミズナギドリが筏を作る、足洗いと呼ばれる様子が見られました。1日が終わったなと感じる瞬間でした。

その後は各々休息を取り、島内の鳥の観察をしたり植物の観察をしました。
あっという間に3泊4日が過ぎ、離島する日になりました。各々所持していた捕獲の許可証も、環境省に返却してもらいました。
コロナ禍で調査ができなかった2年間でしたが、今回の調査で2年前とほぼ変わらない営巣状況だったことがわかりました。

一昨年訪れた際に立て直した鳥獣保護区の標柱ですが、また斜めになっていたので真っ直ぐに直しました。
     
また1年間無事でありますように。
 
帰りは冠島の北にあるウミネコやヒメクロウミツバメの繁殖地で冠島とともに国の鳥獣保護区に指定されている沓島をぐるっと回って帰港するコースでした。オオミズナギドリがあれだけいたのにどこへ行ったのか、海上では数羽しか見られませんでした。
陸でよちよち歩いている姿とは違い、オオミズナギドリの名前の由来である水をなぐように水面スレスレを滑空する姿は単純にかっこよかったです。
今回は春ということで営巣、繁殖の季節の調査でしたが、2回目の調査は8月にあり、ひなの調査も行われます。どのような調査結果が出るのか楽しみです。
 
それでは、また次回。