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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

5月 新緑の奇絶峡

2025年05月22日
田辺 戸口協子
みなさま、こんにちは。
吉野熊野国立公園 田辺管理官事務所の戸口です。
田辺地域の稲は台風に備えて早生の品種が多いようで、既に田植えも終わり、水面に映り込む逆様の青空がきれいです。特産品である梅の今年の収穫量は、記録的に少なかった昨年より多いものの、雹の被害で傷が付いてしまったものが多いこともあり、例年の平均比では多くはないそうです。最近はセミの鳴き声もチラホラと聞こえてきているところ、これからの季節、梅を食べて熱中症を防ぎたいものです。
 
先日、田辺市にある奇絶峡に巡視に行ってきました。奇絶峡は田辺市内を流れる会津川のうち、右会津川を中心に高尾山、三ツ星山、竜神山に囲まれた峡谷です。峡谷沿いには大小の奇岩や急崖地形がみられ、素晴らしい峡谷景観が見られます。
奇絶峡の風景
滝見橋の上流側
奇絶峡の風景
滝見橋の下流側
滝見橋を渡ったすぐ先には、赤城の滝が季節を問わず心を和ませてくれます。
奇絶峡の風景
滝見橋
奇絶峡の風景
赤城の滝
シジュウカラの鳴き声「ツツピー、ツツピー」などが聞こえるなか、出会った生物と風景を少しご紹介したいと思います。
 
奇絶峡の玄関口で、春には綺麗な桜を咲かせていたソメイヨシノが、サクランボを付けていました。
奇絶峡の風景
サクランボを付けたソメイヨシノ
奇絶峡の風景
春は桜景色が美しい
秋には紅葉が美しいイロハモミジですが、この季節は緑色の葉が鮮やかで、その上にはピンクに染まった羽根つきの種子を付けていました。
奇絶峡の風景
緑鮮やかな種付きイロハモミジ
幼虫が、柵の天板部に集まっていました。円形になった端をグルグルと回っていて、幼虫のステージのようでした。
奇絶峡の風景
虫たちのステージ
奇絶峡の風景
尺取り虫は蛾の幼虫
奇絶峡の風景
イモ虫は蛾・蝶の幼虫
新緑の葉を食べて育つ虫たち、おそらく葉から落ちた幼虫がこの柵に登ってきたようです。
赤城の滝のそばでは、ソメイヨシノの葉に止まり、ハート型になっているトンボの交尾が見られました。
奇絶峡の風景
交尾中のアサヒナカワトンボ(上がオス)
川沿いは1匹のヒグラシの鳴き声も。
 
このように、奇絶峡では多くの生物を身近に感じることができます。
温かい春に動き出す虫と芽吹く植物、新緑の頃にふ化・羽化する虫たち、虫たちが動き出し増える頃に子育てをする渡り鳥を含めた鳥たち、これらは長い歴史のなかで自然環境に合わせ、それぞれの生物にプログラムされた絶妙なもので、知れば知るほど興味が湧きます。
 
ちょうど、5月22日は、国連で定めた「国際生物多様性の日」になります。新緑を楽しみながら、吉野熊野国立公園で多様な生物に出会っていただき、新緑の心地よさと精巧な動きをする生物たちを観察しながらつながりを探すのもおすすめです。