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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

2025年 巳(み)年 スタート

2025年01月08日
田辺 戸口協子
みなさま、新年明けましておめでとうございます。
吉野熊野国立公園 田辺管理官事務所の戸口です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
清々しい初日の出を迎える元旦から始まり、三賀日、気持ちの良い晴れの日が続きました。
初日の出
2025年 初日の出
さて、今年の干支は「巳」。巳年にちなんで、「ヘビ」を名前に持つ生きものを一つ、紹介したいと思います。
紀南の海岸で見られるヘビと言えば…
岩礁部でよく見ることができる生物に、以下の写真のような生きものがいます。
オオヘビガイ
蛇がとぐろを巻いたようなこの貝は、「オオヘビガイ」といいます。ループ状をした殻をもつ生きもので、この見た目はスマホなどで「くるり」を変換した際に出てくる記号にもそっくりです。
北海道以南の日本各地の岩礁で観察することができます。
巻貝の多くが右巻きで、また、蓋持つものが多くいます。オオヘビガイは多くの巻貝と同じく右巻きのくるりですが、蓋を持ちません。蓋を持たないこの口から、蜘蛛の糸のような粘性のある糸を出して、海流や波にのって流れてきたプランクトンや海藻の破片などを、その糸ともに引き寄せて食べます。自らは岩に付着して動けないため、このような方法をとって食事をしているのですね。これらの行動はタイドプールなどで観察することもできます。
蓋なし
蓋がないことがわかる
この中に生息する貝の様子、ちょっと気になりませんか?磯の生物は水産資源であり、むやみに採捕することはできないため、以前、漁協さんによる海産生物の観察会で、水揚げ分として特別にオオヘビガイの中身を見せていただいたことがありますので、気になる方は次の写真をご覧ください。
殻と中身
水揚げ分のオオヘビガイとその中身
大きな殻のわりに、貝本体は意外と小さかったです。卵を持つと、この殻の中に袋を作って孵化するまで守るそうですので、空間に余裕をもった殻の大きさになっているのかもしれませんね。
 
貝がいなくなったあとの殻は、他生物が利用することでいきものの多様性を高める効果もあるようです。海域公園内の海中ではニジギンポ(イソギンポ科の魚類)が流れ着いた漏斗に住み着いているのを目にしたことがあります。専門家の話によると、どうやらギンポ科の魚類などは狭い筒状のものを産卵床としてよく利用することがあるとのことでした。
ギンポさん
漏斗に住み着いて顔を覗かせていたニジギンポ 体の幅くらいの狭い所を好むことがよく分かります
地上で新春を慶ぶ挨拶を交わすころ、海の中では温かい新春を迎えているようで、波が穏やかな水辺では、小さい魚が群れをなして泳いでいる様子をうかがうことができます。
水の中
小春日和の静かな海辺
小魚の群れ
よく見ると、子魚の群れが…
メダカの学校は川の中ですが、海でも小魚の学校が新学期を迎えているようです。そーと覗いてみてごらん♪
みなさまも良かったら、風が穏やかな小春日和に、紀南の海の海岸でオオヘビガイを探してみたり、海の中の世界をのぞいてみたりして、いきものにふれてくださいね。