アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
近畿地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、吉野熊野、山陰海岸、瀬戸内海国立公園があります。
地域園児のヒラメ放流体験
2022年06月07日
田辺
近畿地方環境事務所
皆さま、こんにちは。
田辺管理官事務所の戸口です。
この時期、山々には白い花を付けた木をよく目にします。中でも和歌山の里山では、時折、ミカンの花の甘い香りが漂うことがあります。さすが和歌山、収穫量日本一(18年連続)です。
また、沿道ではアジサイの花が色づいてきています。
先日、みなべ町教育委員会の企画で、山手に住む子どもたちに海の生き物に触れてもらう機会として、地元漁協協力のもと、ヒラメの放流体験が実施されました。その際に、田辺管理官事務所からは海のお話をさせていただきました。
はじめに、この日、放流するヒラメについて、漁協の方からお話がありました。
今回、放流するヒラメは、(県栽培漁業センターから漁協に提供されたもので、)4月当初は3.5cm程度でしたが、漁協の水槽でエサをやり、約2ヶ月かけて育て、今では3万4000尾のヒラメが約8cm以上に成長しているとのことです。
(このサイズになってから海へ放流することで、海での生存率が上がり、ヒラメの漁獲高をあげることができるということも、後に漁協の方から伺いました。)
漁協の方は、「ヒラメは海へ放してあげたあと、自分の力で餌を摂らないといけません。餌を探すことを頑張れるように、放流前にお腹いっぱいにして力をつけてあげましょう」とのお話をされ、子どもたちは、2班に分かれ、1班ずつ水槽で泳いでいるヒラメに餌やりをしました。
その間、もう一班の子どもたちに、私から海のお話を紙芝居で紹介しました。
物語は、『魚と僕たちは繋がっている』というもので、「食物連鎖」のお話と「海をきれいにしよう!」という内容です。
子どもたちは一生懸命お話を聞いてくれ、魚をたくさん食べること、ポイ捨てなどせず、きれいな海にすることなどを約束してくれました。
その後、園児たちは近くの「森の鼻」まで移動し、数尾ずつのヒラメを入れてもらったバケツをもって、嬉しそうに砂浜まで運びました。そして、波打ち際に一列に並び、先生のかけ声に合わせて、ヒラメの稚魚を一斉に海に放しました。園児たちの「大きくなって帰ってきてね」と、手を振るその姿は、とても愛らしく感じました。
漁協ではこの他に、船から沿岸へヒラメを放流しており、成長したヒラメを漁師が獲ります。その際、資源保護のため、400g以下のものはリリースすることにしているそうです。
この放流の取り組みにより、みなべ町の漁協では安定した漁獲量を維持できているのだそうです。
子どもの頃に、名前の知れた魚を間近で見て触れて放流する経験は、将来、海の環境のことを考えるためのベースとなってくれることと思います。
ヒラメの成長もですが、子どもたちの成長も楽しみな1日となりました。