アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
防鹿柵の成果
2022年01月18日あけましておめでとうございます。
吉野管理官事務所の丸毛です。
11月頃から霧氷や積雪が観察された大台ヶ原も、12月1日に閉山となりました。
今年は大きな台風や豪雨災害が大台ヶ原では起きませんでしたが、緊急事態宣言等により全国からの来山が難しい一年でもありました。
今まで防鹿柵(ぼうろくさく)の紹介をしてきましたが、正木峠などルート上から確認できる限られた防鹿柵しか、中を見ることができません。
防鹿柵はトウヒ(針葉樹)を保護するためのものだけではなく、スズタケ(コマドリが営巣する背の高いササ)や全体的な生物多様性を保護するためなど、保護対象も様々です。
下の写真は歩道外に設置された防鹿柵になります。一般の方々の立入は禁止となっていますが、シカ等の侵入がないか点検したり、植生回復状況の確認のために職員は時折、立ち入ります。
とある防鹿柵の中は、稚樹がところ狭しと生えていて、歩くのも一苦労でした。もしここにシカが侵入すれば、若くておいしい稚樹や実生たちはあっという間に食べられてしまうことでしょう。
そのほか、防鹿柵の内側はシカの食害がないためササの背丈が高くなっているのが観察できますね。
実は、大台ヶ原のミヤコザサはミヤコザサとは別種であると言われていた時期があります。と言うのも、シカに食べられすぎた結果、ササは防御反応として葉を小さくしていたため、普通のミヤコザサとは姿が違うように見えたのです。
シカの捕獲や防鹿柵設置のおかげで、食害に合わなくなった結果ミヤコザサは元の葉の大きさに戻りました。ただそこに生えているだけに見える植物も、意外と大胆に姿を変えて自然環境に適応していますね。
非公開部分の多い防鹿柵ですが、西大台では今年の秋に新しく防鹿柵が設置されました!
なんと!この防鹿柵は皆さんに入っていただくことができます。
既存の歩道上に防鹿柵を設置した形になります。
今の林床はシカが食べないミヤマシキミが優占していて、稚樹や実生も多くはありません。
(△ミヤマシキミ:有毒でシカが食べない種類のため残っている高さ0.3~1m程度の低木。このサイズでも成木です)
この防鹿柵の中も、5年後、10年後には植生が回復して、今とは全く違う景色が広がっていることが予測されます。東大台の苔道以外に防鹿柵の中を歩くことができるのは、この新設された柵だけです。
植生回復、という他の登山では考える機会のあまりない視点を持って歩いていただければと思います。そして、経年で変化していくであろうこれからの大台ヶ原の植生を想像しながら楽しんでください。
※大台ヶ原は植生保護のため、歩道外への立入を禁止しています。ササの薄い道のような跡を見ることがあるかと思いますが、それらはシカ等につけられた獣道になります。西大台は歩道が時折分かりにくくなっていますが、水色のテープを目印に歩くと迷うことがありません。歩道外への立入りはご遠慮いただきますようお願いします。