アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
2022年 寅(とら)年 スタート!
2022年01月21日田辺管理官事務所の戸口です。
皆さま本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年の元旦は、少し雪が舞う中、雲の合間から初日の出を見ることができる朝からスタートとなりました。
元旦の空 |
今年の干支は「寅」ということで、田辺で見られる「トラ」を一つ、ご紹介したいと思います。
伸び始めたウミトラノオ | 成長したウミトラノオ |
これは「ウミトラノオ」という海藻です。左の写真は昨年12月に観察した、成長し始めたばかりのウミトラノオです。私はこれまで、既に長く伸びたもの(右写真、同じ場所で昨年2月に撮影)は見たことがありましたが、伸び始めの状態を観察したのは今回が初めてでした。
ウミトラノオの名前の由来は「虎の尾」に似ているためであるとされていますが、伸び始めの様子を見ると、確かにトラの尾がしなだれているようにも見えることに気が付きました。
このウミトラノオは、日本各地の沿岸で見られる海藻で、沿岸域の吉野熊野国立公園・田辺管内では天神崎やシガラミ磯などでも見ることができます。
他にも、吉野熊野国立公園で見ることができる海藻には、フタエモク、イワヒゲ、ヒロメなどがあります(写真は2021年2月に撮影)。
海藻の多くの種は、夏場の海水浴や磯遊びではあまりみかけることがありません。夏の間は肉眼で見えない小さな形(配偶体)で存在しているためです。そこから成長していき、12月から4月頃まで、食卓でも見るような海藻の形になります。
上段:シガラミ磯で見つけた"フタエモク" 下段:天神崎で見つけた"イワヒゲ" |
田辺湾の"ヒロメ" |
「かいそう」にはウミトラノオのような「海藻」と、アマモなどの「海草」があります。「海藻」は胞子で増える"藻類"で、「海草」は種子で増える"種子植物"になります。そして、これらが繁茂する場所を「藻場(もば)」といいます。
「藻場」は魚介類の生活の場、産卵や稚仔魚の保育場として海のゆりかごと言われ、また、それ以外にも海中の栄養塩や二酸化炭素を吸収・固定し、酸素を供給するなどの大きな役割を果たしています。そのため、藻場は海の環境において重要な場所です。
田辺には、アマモに代表される海草も、ワカメやヒロメなどの海藻もあります。中でもヒロメは日本でも分布域が限定されていて、「紀州ひろめ」として田辺の名産でもあり地元ではヒロメのしゃぶしゃぶや、ヒロメの巻き寿司「ひとはめ寿司」が人気です。
田辺湾のヒロメは、水温が低いほどよく成長することが確認されています。ヒロメの養殖をされている方に話を伺うと、今年度は田辺湾の海水温が低い期間が長いとのことで、収穫が行われる3月までの成長が楽しみです。
その頃には、内湾の穏やかな海などで、生まれたばかりの魚の仔魚の群れも見られるようになると思われます。海に行った際には、水面を観察して、早めの海の春を見つけるのも楽しいですよ。