アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
環境省・山陰海岸ジオパーク推進協議会協働事業 新温泉町有識者視察
2021年12月23日みなさま こんにちは。浦富自然保護官事務所の澤です。
12月5日、6日に3名の有識者(地域振興、エコツー、観光)と、兵庫県新温泉町の現地視察を行いました。現地ガイドの案内で新温泉町の見どころを視察、そして地元の方々と交流、意見交換を行い、エリアの活性化のためのアドバイスをいただきました。
2日間新温泉町の国立公園とその周辺の魅力的な場所を回りました。
一日目
○浜坂駅前のまち歩き案内所「松籟庵」(しょうらいあん)。
松籟庵には、新温泉町や周辺地域の観光情報、浜坂の歴史紹介やお土産物、レンタサイクルもあります。そこで1番びっくりしたのが奥の展示コーナーにある蓄音機でした。
【浜坂駅前 松籟庵】
【蓄音機】
なぜ、新温泉町に蓄音機、と思われませんか。
そこには、新温泉町と針の関わりにありました。
冬は雪と荒波に閉ざされる新温泉町では、江戸時代後期より縫い針の生産が始まり、明治期には住民の多くが針製造に従事したとされています。
縫い針からはじまった技術は、現在レコード針製造へ発展し、特にオーダーメイドで生産される蓄音機の針は評判が高く、世界中から注文が来るとのことでした。受け継がれてきたすばらしい技術に感動しました。
○三尾(みお)地区
浜坂駅前から車で20分ほど山道を走った所にある小さな漁村です。地元で取れるわかめの加工や海上タクシー(小さな漁船による海上ツアー)、地区の抱える問題など、次のようなお話を聞かせてもらいました。
・わかめは収穫後水で洗わず冷凍することによって、解凍後大変おいしく頂くことができ、東京の有名な寿司店でも提供されていること。
・海上タクシーは小船のため、少しでも天候が荒れると出港できないので、予約があってもおことわりをしなければならないことも多いこと。
・漂着ゴミのこと。
○諸寄(もろよせ)地区
諸寄を見渡せる城山園地より諸寄港を一望。ここから見る日本海に沈む夕日は絶景です。
どんなに大荒れの日でも、大きく入り込んだ湾のおかけで、港内はいつもおだやかです。恵まれた地形から北前船の風待ち港として昔より栄えている港町です。
国道から一歩中に入っていくと、昔からの歴史を感じる建物が残り、道はどれもまっすぐ海へ向かっています。諸寄基幹集落センターでは貴重な江戸時代の航海図や諸寄出身の芸術家の作品などもあり、見応えたっぷりでした。
【城山園地展望所より見た諸寄港】
○夜の意見交換会
地元活動団体の活動報告と有識者との意見交換会がありました。
荒天で海のアクティビティが実施できない場合の代替策、
インバウンド対応などについて質問がでました。
有識者からは、次のようなご意見をいただきました。
・各地区に休憩ポイント、カフェなどが欲しい。
・雨天時対応は代替プランを提案。
・外国人にはガイドが英語を話せなくても、紙芝居形式の解説・資料を用意して対応。
・すばらしい資源がたくさんあるので、もっとアピールしよう。
・フェノロジーカレンダー(月ごとの見どころ、味覚、行事などをまとめたもの)をみんなで議論して作成するとよい。
二日目
○漁港の競り(せり)見学
関係者以外立ち入りできない浜坂港の競り売りを、特別に見学させていただきました。松葉ガニシーズン本番ということもあり、大変活気がありました。今年のカニも大変おいしそうでしたが、例年と比べて漁獲量がとても少なく、かなり高値となっているとのことでした。
この2日間の訪問先でご対応いただいたみなさんが、大変生き生きと活躍されていて、どうやったら町が活気づくか真剣に取り組んでおられる姿が印象的でした。
ご協力ありがとうございました。
新温泉町には多くの見どころや、温泉、豊富な海の幸、町を大好きで魅力あふれる人たち、伝統を受け継いできた素晴らしい技術がありました。有識者との意見交換等がきっかけとなって、地域の連携や魅力の発信がより一層進むことを期待し、私たちも国立公園としての利用促進に、一緒に取り組んでいきたいと思います。