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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

大台ヶ原のササ刈り業務

2021年10月26日
吉野 丸毛絵梨香

吉野管理官事務所アクティブレンジャーの丸毛です。

前回8月の続きで、大台ヶ原の自然再生事業をご紹介します。9月に正木峠にある地樹防鹿柵内のササ刈り業務を行いました。

正木峠から正木ヶ原にかけて歩いていると、黒い柵がたくさん建っているのが見えることかと思います。

これらは、針葉樹(主にトウヒやウラジロモミ)の稚樹をシカの食害から守るために設置されたものです。稚樹は柔らかく、シカにとってはごちそうだからです。

正木峠は現在、樹木の次世代の生育が、林床がササに覆われているため非常に難しくなっています。そのため、数少ない稚樹をこのように保護して昔の森林の姿に戻そうとしているのです。

 1936年の大台ヶ原の様子 2021年10月の正木峠の様子

(1936年の正木峠の姿、菅沼孝之氏撮影)    (2021年10月の正木峠)

 稚樹防鹿柵の中の様子(ササ刈り前) 稚樹防鹿柵の様子(ササ刈り後)

(防鹿柵内 トウヒ稚樹・ササ刈り前後。分かりにくいですが刈った真ん中にある緑が稚樹です。)

ササ刈りをしないと、稚樹は光や水分を獲得しにくく、うまく成長ができません。一般に、ササの根から冬に蓄えた養分を葉に戻したあとの6月頃と、夏に生産した栄養が根に戻る前の9月頃に行うことが良いとされています。

生命力の強いササに一面を覆われてしまうと、他の植物が生育することは非常に難しくなります。正木峠には140基近くの稚樹防鹿柵があるため、重労働となりますが環境省職員が一丸となって刈り作業を行っています。今年度はコロナの関係で実施できませんでしたが、一般ボランティアの募集イベントも例年開催しておりますので、ご興味ある方は来年度の9~10月頃、ご応募してみてくださいね。

※大台ヶ原は多くの部分が国立公園の特別保護地区になっており、一般に植物の採取や損傷が規制されています。刈り作業などができるのは防鹿柵内などで環境省事業として行う限られた範囲や状況のみとなりますのでご注意ください。