アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
但馬御火浦(たじまみほのうら)のみどころ
2021年08月17日みなさま、こんにちは。浦富自然保護官事務所の澤です。
但馬御火浦は兵庫県新温泉町岸田川河口から香美町井笹岬までの約8kmの岩石海岸です。変化に富む力強い海岸線が魅力ですが、急峻な地形ゆえに陸上からは近づくことができません。
今回は、船上より観察した日本列島形成にかかわる岩石が描くさまざまな模様、洞門や奇岩などがパノラマのように連なる素晴らしい景色をご紹介したいと思います。
浜坂港より東へ向けて出発すると、【鬼門崎】が見えてきます。浜坂の東にあった芦屋城から見て鬼門に当たるので鬼門崎の名がついています。銛の先端のような形の岩です。約7000万年前、日本列島がアジア大陸の東の端にあった頃に噴火した流紋岩で出来ています。
流紋岩は白っぽい色の溶岩で、地表近くで固まった溶岩を火山岩と呼びます。
【龍宮洞門】
一帯は花崗岩でできていますが、一筋の安山岩の岩脈がこれを貫いています。海面付近の洞門から、天に向かって昇る岩脈の様子を龍にたとえ、龍宮洞門と名がつきました。花崗岩は日本が大陸の一部だった時代にマグマが地下深くで固まったもの(深成岩)で、白っぽい色をしています。一方、岩脈は日本列島形成後に花崗岩の岩山を割って吹き出した火山岩で、やや黒っぽい色をしています。
【獅子の口】
黒い岩の間の裂けた穴から赤い岩が見えています。獅子が赤い口を開けているように見えることから、この名前が付いています。日本海ができるころに流れた溶岩が波によって侵食され、獅子が口を開けたような割れ目が出来上がりました。
獅子の口の真っ赤な色に見えているのは岩石に含まれる鉄分が酸化してできた赤さびの色です。
海岸線の色が手前(右)から<黒っぽい~黄土色~黒っぽい>へと色の変化が見られます。手前の黒っぽい岩石が獅子の口があるところで安山岩です。黄土色は流紋岩、奥はデイサイトという火山岩です。こうやって眺めるだけでも、変化に富む景色を見ることが出来ます。
【三尾大島】
島全体に柱状節理が発達しており、とくに南東側の岩壁には無数の柱状節理と、それを横切る板状節理が美しい景観を造っています。
<南西部> <南東部>
【鋸岬(のこぎりみさき)と旭洞門】
新温泉町と香美町境の岬です。岬の頂上部が鋸状になっていることから、鋸岬と名付けられました。岬の中央部の洞門は旭洞門と呼ばれ、洞門から朝日がさす景色の素晴らしさから名付けられていますが、見られるのは5月中旬の数日だけで、この時期の日の出時刻は5時頃。船上からしか見られないので、なかなか難しいですね。漁師さんの特権といったとこでしょうか。
このように但馬御火浦では、日本列島がまだ大陸の一部だった時代から、様々な年代にできた様々な種類の岩石がモザイク状に組み合わさり、岩質によって色や割れ方、崩れ方が違うことでそれぞれ異なる景観を形づくっています。
以上、船上より観察した、但馬御火浦のご紹介でした。