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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

干潟は鳥たちの楽園

2021年05月11日
神戸 中村高也

 皆さまこんにちは。神戸自然保護官事務所の中村です。神戸では春の心地よい風はすでに過ぎ去ってしまい、いつの間にか夏日になる日も出てきました。これからの季節の野外活動は熱中症対策のため、帽子・給水が欠かせません。私も気を付けていきたいと思います。

 そんな照り付ける太陽がまぶしい中、先日は国指定鳥獣保護区である甲子園浜に行ってまいりました。

【甲子園浜から見える六甲山系】【甲子園浜から見える六甲山系】

  4月に甲子園浜を取り上げた記事(干潟再生に向けて)では、干潟のあちらこちらでカモ達の姿がみられましたが、今ではそのほとんどがすでに日本での越冬を終えて、甲子園浜を飛び去っておりました。日本で越冬するコガモやヒドリガモ等のカモ類ははるか遠方の北国(ロシア等)から渡ってきているということが調査研究によりわかっております。また来シーズンに元気な姿を見せに来てくれると嬉しいですね。

 カモ達は去ってしまいましたが、甲子園浜には他にもたくさんの鳥たちを観察することができますので、今回はその一部をご紹介させてください。

魚を追いかけるサギ達(左) コサギは足指の色(黄色)で判別可(右写真の赤丸部分)【魚を追いかけるサギ達(左) コサギは足指の色(黄色)で判別可(右写真の赤丸部分)】

 アオサギ、コサギ等のサギ類は、干潟に生息する豊富なエサ(魚など)を求めて移動する姿を観察することが出来ます。大型の鳥類なので、羽を広げて飛んでいく姿は迫力があります。

【コアジサシ(絶滅危惧Ⅱ類)】  【魚を捕まえたコアジサシ】【コアジサシ(絶滅危惧Ⅱ類)】 【魚を捕まえたコアジサシ】

 夏鳥として4月頃から日本に飛来し、繁殖するコアジサシ。高度経済成長期の埋立等によって繁殖に適した河川敷や砂浜が減少し、個体数を減らしたため、環境省の鳥類レッドリストにおいても絶滅危惧Ⅱ類の指定を受けております。ここ甲子園浜の干潟では、コアジサシが水中の魚を捕まえる華麗な採餌シーンを見ることが出来ますよ。

【キアシシギ(左)  チュウシャクシギ(右)】【キアシシギ(左)  チュウシャクシギ(右)】 

  4月から5月は甲子園浜にシギ科、チドリ科に代表される渡り鳥が訪れるシーズンです。春から夏にかけて、繁殖地である北半球の高緯度地域を目指して長距離移動をする鳥類であることが知られており、例年、休息や栄養補給のためにこの甲子園浜に立ち寄る姿を見ることが出来ます。渡り鳥の休息・餌場の確保のために西宮市の条例により、4から5月の間は一部干潟の立入りが制限されておりますが、干潟に入らずとも、周辺遊歩道から見ることが出来ますので、鳥たちの邪魔にならぬ様、静かに観察してみてはいかがでしょうか。

 

 いかがでしたか。甲子園浜には今回紹介した鳥類以外にも多数の動植物が生息しております。人の暮らしに近い環境でも、このようにたくさんの生物たちが暮らしているということを少しでも知っていただければ嬉しいです。