アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
春の熊野古道・大辺路『長井坂』の巡視
2021年03月30日鳥がさえずり、野山から花が香る季節となりました。
みなさま、こんにちは。田辺管理官事務所の戸口です。
先日、すさみ町にある長井坂の巡視に行ってきました。長井坂というのは、世界遺産『紀伊山地の霊場とその参詣道』にも登録されている熊野古道のうち、紀伊半島南部の沿岸部を通っている大辺路(おおへち)の一部です。
JR周参見駅からしばらく国道沿いを歩き、和深川沿いの里道に入ると、道端や山の中腹にヤマザクラなどのサクラが咲いているのが見られました。
緑の山に彩り添えるサクラ |
里道の両脇にある田んぼや水路からは、タゴガエル(和歌山県レッドデータブック準絶滅危惧)の鳴き声が多く聞こえ、冬眠から目覚め、求愛時期に入っていることがうかがえました。また、長井坂西登り口近くに流れる和深川では、夏には涼しげな澄んだ声で鳴くカジカガエル(和歌山県レッドデータブック準絶滅危惧)を見ることができます。
和深川 |
和深川を渡るところから長井坂に入ります。入口からすぐ坂が始まり、「長井」坂の名前のとおり、急勾配の坂道がしばらく続きます。
植林されたスギ林の間を、息を切らしながら登りきると、稜線にさしかかります。
長井坂 |
(上)広葉樹の多い稜線の古道 (下)古道沿いのヤブツバキ |
稜線に沿った道の右手側には吉野熊野国立公園の枯木灘海岸が位置しており、所々にある展望地点からは海岸線から遠くまで広がる太平洋を見渡すことができます。
沖の黒島・陸の黒島方面の眺望 | 江須崎方面の眺望 |
稜線沿いには広葉樹が多く、積もった落ち葉やその下にある腐葉土により歩道はふかふかで、歩いていて気持ちがよかったです。
落ち葉の中には、和歌山県の県木であるウバメガシが多くありました。ウバメガシは海岸沿いに多く自生する照葉樹で、この地域では特に冬の厳しい西風が吹き付けるため、斜面にへばりつくような形に木が育ちます。「枯木灘」の名前は、その様子が枯れ木に見えることが由来とも言われています。
古道沿いのサクラの中には、花芽一つ当たり2輪ずつ、ほんのりピンク色の花びらを持つ花が咲いている木もありました。 2018年に103年ぶりに新種として発見され話題になったクマノザクラの特徴と似ています。もしかしたらクマノザクラかも⁉︎(雑種もあるようなので、断定はできません。)
古道沿いに咲くサクラ | (参考)公園外で咲いていたクマノザクラ |
また、途中でこんなものが見つかりました。
これ、何に見えますか?
これは...天然のエビフライ?? | 巨大松ぼっくり |
全長が約12cmもあり、大きさからしてもエビフライそのもの...に見えますが、これは植林された外国のマツ「テーダマツ」の松ぼっくりをリスが食べた跡です。見事な大きさの森のエビフライには、テンションが上がりました。
最後の急な坂を下ると、見老津駅付近の海岸に降りてきました。
見老津の海岸 |
稜線を歩いている間は海岸を望みながらの眺望に(花粉も多かった!?こともあってか)少し陶酔したような感覚でした。
今はまだ感染症対策が欠かせませんが、安心できるようになった際の訪れたいところリストに追加してみては?海を見ながらの古道歩き、おすすめです。