近畿地方のアイコン

近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

デンジャラスなトレイル

2019年12月04日
吉野熊野国立公園 青谷 克哉

 吉野管理官事務所の青谷でございます。吉野は気温も下がって冬の気配を感じる間もなく、いきなり到来してしまっている感じです。寒くなると暖房器具が手放せませんが、本格的に稼働する前に点検は欠かせませんね。火事には十分気をつけたいものです。

 さて、点検ということでは去る11月13日に天川村にある登山道の点検に行って参りました。その登山道は双門弥山線歩道と言いまして、天川村の熊渡りという所から弥山山頂を目指す登山道になります。我が管内では最も過酷で危険な歩道であると思っています。

 この時期は日暮れも早く気温も下がりやすいのでスタートを早めにしようと早朝4:30に事務所を出発して登山道入り口へ。しかし現地は真っ暗闇でした。流石に早すぎたかと登山道を維持管理している天川村の職員と相談し、これは危険と一緒に一時待機。ヘッドライト無しでも行けるかな?という具合を見計らって出発しました。

 天川村は熊渡りからスタートで、まずは白川八丁を目指します。下の写真は白川八丁にたどり着いてすぐの風景です。

白い石場をどんどんと進んで行きます。最近雨も降っていないので水量は少なく、道中にある釜滝も細々としておりました。

 釜滝からは斜面を登り、山に分け入っていきます。山中はまた過酷な道で、よくもこんな所に道を作ったものだと思いますね。工事をした人々の苦労が忍ばれます。感謝の念に堪えません。そんな道中にある梯子を登り、鎖を掴み、根っこをよじ登ってもう大変です。

鉄梯子鉄梯子

険しい道を進んでいると、いよいよ弥山川に突き当たります。そこからは河原を上流にたどり河原小屋跡へ。

河原小屋跡地付近

昔の台風のせいで岩がごろごろ。開けたところで一休み、昼食をとって英気を養います。河原小屋跡からは岩場を登る道が始まり、こちらもハードな道行きです。

切り立つ崖にある鉄棒だけの足場を越えたりします。怖すぎますね、命を大切に。狼平まで登れば一安心。避難小屋で休憩し、あとは歩きやすい登山道を登るだけです。

 こんな危険な登山道で何を点検するのかというと、梯子や鎖をメインに道の状態などです。施設の破損は危険に直結します。危険な道をさらに危険にするわけにはいかないので見回るわけです。緩みはないか、鎖は無事かを見回り、必要があれば修繕します 。アクティブ・レンジャーは、こういう過酷な場所でも仕事をします。

 双門弥山線歩道は上級者向けのコースであり、体調良く体力の充実した状態の時に二人以上で挑んで下さい。このコースの下りは危険度が跳ね上がりますので下からの登りのみにして下さい。ヘルメットも忘れずに。途中で引き返すということが非常に困難な登山道でもありますので、下調べをしっかりとして無理と思えば行かない選択も必要です。また、引き返すときは早めに決断をしてください。

 しかしながら、過酷な道行きに危険ばかりと脅すだけでは折角の歩道整備も意味が薄れるというもの。双門弥山コースは、吉野管理官事務所管内のどの山とも違った登山が楽しめます。まさしく登っていくという言葉が似合う、足だけでなく両手、時には全身を使っての登山は、すばらしい達成感を与えてくれます。山間を行くので展望は所々しか開けていませんが、それでもはっとする様な景色が見えるときがあります。

こんな感じです。方角はみたらい渓谷、観音峰の方向になります。登った!という満足感が欲しい方には大変オススメのコースですが、これからの時期は冬山になりますので、早速のチャレンジはオススメしません。山小屋も閉まっており、車道も通行止めになります。道中の岩場や鉄梯子も凍結し、積雪があるでしょう 。来年、暖かくなってから挑戦して下さい。

 それでは、今回はこの辺でごきげんよう。