アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
アベサンショウウオの飼育展示
2018年07月11日みなさま、こんにちは。
竹野自然保護官事務所アクティブ・レンンジャーの派谷尚美(はたちや なおみ)です。
これからどうぞよろしくお願いいたします。
今回は山陰地方にすむ珍しい生き物の「アベサンショウウオ」について紹介いたします。
実はこの写真にアベサンショウウオの幼生(子供)が写っています。
どこにいるか分かりますか?
こちらは成体(大人)です。
おとなしい性質で、ほとんど動きません。
アベサンショウウオは成体になっても10cm程度の小型のサンショウウオで、水のきれいな湿地で生息しています。
森林伐採や道路建設などの開発によって生息地が失われたり、生息地周辺における里地里山の管理方法が変化したことにより生息数が減り、環境省版のレッドリスト2018には「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」として、絶滅危惧ⅠA類に掲載されています。
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(参考) レッドリストのカテゴリー (環境省HP)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/rank.html
アベサンショウウオは京都府、兵庫県、福井県、石川県の一部の地域にしか生息しておらず、生息が確認されている地域においても知らないという方が大勢いらっしゃいます。
そこで、将来みんなでアベサンショウウオを守っていくために、地域住民の方々に知ってもらうことから始めようと考え、種の保存法による「アベサンショウウオ保護増殖事業」に基づき地域の小学校で飼育展示を始めました。飼育に携わった子どもたちから、多くの人たちにアベサンショウウオのことを伝えてもらえればと思っております。
※小学校におけるアベサンショウウオの飼育展示は種の保存法 (絶滅のおそれのある野生生物の種の保存に関する法律) によるアベサンショウウオ保護増殖事業計画に基づき行っているものです。アベサンショウウオを勝手に捕獲等することは、種の保存法で禁止されています。
レンジャーから、アベサンショウウオのことや生態系を守ることの大切さを伝え、飼育方法について教室で説明した後・・・
実際に子どもたちに餌やりに挑戦してもらいました。
餌は冷凍イトミミズです。
細くて小さなイトミミズをピンセットでつまみ、水中の小さなアベサンショウウオにあげる作業は大変ですが、みんな一生懸命お世話をしてくれていました。
子どもたちに大人気のアベサンショウウオ。
まだ幼生のため大きさは2cm程度ですが、少しずつ大きくなっていることが目に見えて分かります。
アベサンショウウオが成体になる前に元の生息地に返してあげるため、数週間程度の短い期間にはなりますが、子どもたちに飼育してもらうことで、身近にいる生き物に関心を持ち、生き物たちのすむ自然環境を守ることの大切さに気付いてもらいたいと考えております。
元気に成長したアベサンショウウオを、山に返す日が楽しみです!