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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

あだ名はたっつぁん【生物】

2014年08月15日
竹野
皆さんこんにちは
竹野の酒井です。
暑い日が続きますが皆さんお元気でしょうか?
水田が多く海風が抜ける竹野は都市部に比べると比較的涼しい環境ではありますが、それでも夏の砂浜の見回りをしていると、頭がくらくらとする暑さです。
海水浴に来られる皆さんも、砂浜では特に熱中症に気をつけて下さい。
砂浜でじっとしている時や、海で泳いだ後の、運動によって体が熱を持っている状態のまま砂浜で休憩する時などは要注意です。

さて、そんな暑い話はここまでにしまして、涼しげな海中の話をしたいと思います。

6月の自然学校シーズンと比べると、竹野の海中生物の様子もずいぶん変わりました。
今の時期に見ることができる特徴的な物と言えば、何度かこの日記にも出てきていますソラスズメダイ(空雀鯛)とオヤビッチャ(親美姫)などですね。


(ソラスズメダイ)

それから今年は非常にタツノオトシゴ(竜の落とし子)が多い年のようです。


(タツノオトシゴ)

たまにタツノオトシゴは魚類、両生類、爬虫類のどの生き物の分類になるの?と聞かれることがありますが、タツノオトシゴは”魚”です。
(姿が魚っぽくないうえに、卵胎生に似たような習性も持っているので間違えるのも仕方ないですが・・・)
タツノオトシゴはトゲウオ目という奇妙奇天烈な魚が集まるグループにいます。
このグループの他の生き物として、常に体を逆立ち状態にしているヘコアユ(兵児鮎)やとても長いくちばし状の口を持つヤガラ(矢柄)などがいます。

海でタツノオトシゴに出会ったなら、是非、海中での動きを見て頂きたいと思います。
普通の魚と違って泳ぐのは遅いのですが、タツノオトシゴの泳ぐ姿はまるで宇宙のようなのです。
普通の魚は尾びれと体のくねりで推進力を得て、胸腹背の各ひれで姿勢をコントロールして泳ぐのですが、タツノオトシゴには胸ひれと背びれしかありません。
そのため、タツノオトシゴは尾びれや体のくねりを使わず、胸びれ背びれを羽ばたくように動かして泳ぎます。またその胸びれ背びれも小さく見えづらいため、体を動かしていないのに前に動いているように見え、まるで無重力空間で滑っているように見えます。
なかなかに奇妙で面白い動きですので生きたタツノオトシゴを見る際は是非注目してみて下さい。


海はその日その日によって表情を変えるまさに「水物」ですので、日によっては非常に珍しい生き物を見つけることもあります。

例えばこんな生き物。



これはツノウミフクロウと言うウミウシの仲間です。
漢字名は調べきれなかったのですが、この生き物の仲間に夜行性のウミフクロウという種がいますので、おそらく漢字名は「角海梟」となるでしょうか。
本来は屋久島や沼津、伊豆諸島等の南方もしくは黒潮系列の場所に分布しているのですが、対馬海流にのってこちらまで来たようです。
日本海側で見つかるのは非常に珍しいとのこと。

夏休みもあと少しですが、今夏最後の思い出に山陰海岸国立公園の海で生きもの観察をしてみてはいかがでしょうか?