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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

針300本ぐらい【生物】

2014年03月07日
竹野
皆さんこんにちは。

竹野の酒井です。
3月に入り海の波もずいぶんと穏やかになってきました。
1月や12月は波が荒く、白波と漂着物であたりは覆われていました。
それではここで皆さんに漂着物に関する質問を一つしたいと思います。

竹野で冬の間よく流れ着く、これは何だと思いますか?



これは「アバサー」「イラフグ」という別名を持つ、「ハリセンボン」という魚です。
フグに近い生き物(フグ目の生き物)で体中に針を持っていることが最大の特徴です。
この針はうろこが変化した物であり、かなり鋭く尖ります。
普段海中を泳いでいるときは、針は寝ているのですが、危険が迫ったときには水を吸い込んで体を膨らませ、針を立たせ外敵から身を守るのだそうです。



フグ目の生き物はフグ、ハコフグ、カワハギ、マンボウ、モンガラの類ですが、フグ目の特徴として泳力が弱い生き物が多いことと特徴的な生物が多いことがあげられます。
フグといって皆さんが真っ先に思い浮かぶのは恐らくフグ料理か、毒についてのことだと思います。フグやハコフグ、カワハギとモンガラの一部などは外敵から身を守るために毒を体にため込む性質がありますが、ハリセンボンはフグ目ですが卵以外に毒はなく、毒の代わりに棘で外敵から身を守ります。
食べられないために毒を蓄えて、外敵から身を守るか、食べられないために棘を蓄えて、外敵から身を守るかの違いですね。
余談ですが、同じフグ目のハコフグは体の内側に骨板という骨で作った鎧を着込み、体からは毒を出して身を守る、毒と鎧の合わせ技で外敵から身を守っています。

ちなみに「針千本」という名前ですが、実際の所、棘の数は300本程度です。
300本と棘の本数が足りないのは千の意味は1000でなく「一攫千金」「千差万別」と言った「とてもたくさん」という意味合いからとられているためでしょうね。

冬の間に海岸を散策すると大抵何匹かはこのハリセンボンが浜に打ち上がっています。
というのもこの魚は以前の日記で紹介した「死滅回遊魚」であるため、冬になると低水温に耐えきれず、死んでしまいます。その死体が波に流されて、浜に打ち上がってくるというわけです。

ちなみにこのハリセンボンは卵巣に毒がある以外は無毒なので食べることができるそうです。
沖縄ではアバサー汁といって味噌汁に入れたり、唐揚げにして食べたりするそうです。
あとは内蔵や肉を抜いて皮だけにしたのち、膨らませて乾燥させフグ提灯にしたりします。
いわゆる剥製のような物と思って頂ければ問題ないです。

皆さんも海岸散歩を楽しむ際は足下をよく見て歩いてみてはいかがでしょうか?