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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

お目覚めの条件は!?

2013年11月11日
神戸
うだるような熱帯夜で眠れないのも困りものですが、だんだん寒くなって布団の中が暖かく感じられるようになると、逆に朝に起きづらくなるのが困りものですね。冬の間は自分の好物を朝ごはんに用意して、布団から這いずり出すモチベーションを上げたりしています、神戸自然保護官事務所の多賀です。皆さん朝はすぐ起きられる方でしょうか。

前回アケビの実の話をしましたので、今回は種子の話でもしようかと思います。植物は根を張ってその場を動きません。むしろ動けません。となりますと、植物が動けるのは根を張る前、例えば種子の段階なります。しかし種だけでは落ちるだけで移動に繋がらないので、より遠くへ移動するための仕組みがあります。

例えば風の力を利用して遠くまで飛ばす方法や、水に浮かんで遠くまで運ばれる方法があります。



マツの種子。羽の形をした付属部分があって、この羽で風をうけてより遠くまで種子を散布します。

動物に引っ付いて別の場所まで移動する方法もありますね。ひっつき虫とも呼ばれています。



キンミズヒキの種子。先端が鉤状になっている無数の小さなトゲがついていて、このトゲで動物の体に引っかかり、遠くまで運ばれます。

動物に食べられて別の場所まで運んでもらう、あるいは動物が食べるためにどこかへ運ばれることもあります。



ツリフネソウの花。

中にはばねの仕組みや水圧を使って、時期が来ると自ら種をはじき飛ばすものもあります。ツリフネソウの実は水圧ではじけると同時に、種子を飛ばします。自動散布は動画で見るととても面白いので、是非「seed self dispersal」や「ツリフネソウ 種子 散布」「ホウセンカ 種子 散布」というキーワードなどで動画を検索してみてくださいね。

さて、新しい場所まで移動しても間違った季節に芽吹いてしまっては意味がありません。そこで、種子は条件が揃わないと発芽しないようにできています。発芽の条件で多分まず想像されるのは温度と水分かと思います。それ以外にも、光と酸素の存在が発芽に影響を与えます。これらの条件が適切に揃ったとき、初めて種子から芽がでるわけですね。

ところが、種子によってはその条件が非常に複雑であったりします。例えば、秋に結実する植物の種子は、気温・水分・光・酸素の4つの条件がそろっていても、すぐに発芽しないようになっています。なぜなら秋に発芽してしまっては冬の間に芽が死んでしまうからです。そこで、秋に実る植物の種子は一定期間休眠しないと発芽しないような仕組みが出来ています。しかも、ただ一定期間休眠するだけでなく、ある程度低い気温に一度さらされないと発芽しない種が多いです。

他にも、動物が果肉ごと種子を食べ、消化の過程で果肉だけがそぎ取られ、種子だけが排泄されることによって、その種子の発芽が促されるものもあります。

一見小さくて単純な構造に見える種子でも、そのお目覚めには沢山の工程が含まれています。奥深い世界ですね。

それでは皆様、また次回まで♪