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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

野生生物への餌やりについて

2013年08月30日
神戸
とうとう夏休み最終日ですね。皆様楽しい夏を過ごされましたでしょうか。
弊所が関わっている夏のイベントが無事終了してほっとしております。神戸自然保護官事務所の多賀です。

今回は以前から少々気になっていたことを書こうかと思います。
それは、こちら。




猫ですね。撮影場所は摩耶山の掬星台という展望台です。スペースたっぷりのこの展望台にはテーブルやベンチ、東屋があり、神戸市を見下ろしながらちょっとしたピクニックにもってこいの場所となっています。ちなみに1000万ドルの夜景としても有名な展望台です。付近に住宅はないはずですので、野良猫でしょう。六甲山にはこの展望台以外にも、各所で野良猫が見られます。聞くところによりますと、この野良猫の一部は阪神・淡路大震災の際に住宅街から六甲山逃げこみ、そのまま人による餌やりで山に住み着いた猫たちの子孫だそうです。ほかは迷い猫が住み着いたものや、山に捨てられた猫もいるようです。

たまにハイカーの方が、このような山中の野良猫にお弁当の中身を与えている所を見かけます。私も猫が好きなので、猫がご飯をおねだりしてくると餌を与えたくなる気持ちはとても良く分かります。その気持ちは良くわかりますが、野良猫といえども野生生物ですので、どうか、安易にエサを与える行為は慎んで頂きたいと、この場を借りてお願い申し上げます。

といいますのも、六甲山と付近住宅街では、猫のために置かれたエサにつられてイノシシが出没することがあります。このようにして現れるイノシシはやがて人に慣れ、人を恐れなくなるようになり、しまいには人を襲うようになります。これはイノシシにとっても人にとっても良い結果にはなりません。現に、イノシシが人を襲う事案が多く発生したために、いまでは神戸市の一部と西宮市でイノシシへの餌やりや、餌となるゴミ(食べ物)を捨てる行為が条例によって禁止されています。



日中に市街地でくつろぐイノシシたち

すべての野生生物に言えることではありますが、市街地でも自然の中でも、野生生物を見かけたときは、たとえその生物がとてもかわいらしく見えても、ひどくお腹を空かせているように見えても、衝動的に餌を与える前に、それがその生物にとって本当に良いことなのか、今一度考えて頂ければと思います。

野良猫に関しましては、どこの地域でもボランティアの方々が野良猫のための募金、一時保護、去勢・避妊手術の施術や、里親探し、地域猫として猫が寿命を全うできるような手配を整えるなど、様々な活動が行われています。もしも野良猫のことを思うなら、目にとまった猫へ気まぐれに餌をあげるのではなく、はっきりとした意思を持ってボランティア活動にご参加いただくのが本当の意味で猫とその命を大切にすることに繋がるのではないでしょうか。

前回に続き、少々お説教くさい内容でしたね。
それでは皆様、また次回まで。