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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

生きた化石

2013年05月15日
吉野
みなさん、こんにちは!

先日の日記では樹氷を観測したよー!とまだまだ冷え込んでいるかのような記事を書かせて頂きましたが、ここ数日座っているだけで汗ばむような暑い日が続いております。春をすっ飛ばしていきなり夏が到来したのでしょうか?どうも、急に気温が変化してしまい服装に困っている杉本です。

さてさてみなさん「生きた化石」と言うフレーズを聞くと何を思い浮かべますか?やはり王道はシーラカンスでしょうか?それともゴキブリ?カブトガニ?カモノハシ?
と、少し考えただけでも、古くから姿形をあまり変化させていない動物はたくさんいますよね。
では、植物ではどうでしょう?

奈良県には、生きた化石と言われている「トガサワラ」が自生している地域があります。


少し分かりにくいですが、写真中央に写っている針葉樹がトガサワラ


そして、こちらがトガサワラの稚樹

このトガサワラですが、数百万年前の新第三期時代には北半球に広く分布していたそうで、特に日本ではトガサワラの仲間の化石が多く出土していますが、地質時代の気候の変化によってほとんどが絶滅してしまったそうです。
今は、北限を三重県に南限は高知県と、日本の中でも限られた地域にしか存在していません。
トガサワラの名前の由来は、葉がトガ(トガは方言名で、一般的にはツガと呼ばれる)に似ていて、樹幹がサワラに似ていることからこのような名称になったと言われていますが、諸説有るらしいのではっきりした由来はわからないそうです。

先日、奈良県吉野郡川上村の三ノ公でトガサワラを観察してきました。ここはトガサワラ原始林として昭和4年に国の天然記念物に指定されています。三ノ公は吉野熊野国立公園からは少し外れる位置ですが、この原始林は大台ヶ原へと繋がる大切な森林でもあります。


三ノ公には幻想的な原生林広がっています。

トガサワラの多くは先述のとおり気候変動によって分布域を狭めましたが、比較的変動の小さかった日本では生きながらえることができました。しかし、近年(近年といっても数百年単位)は乱獲によってその数が減少したそうです。

このような原生的な自然(もちろん原生的でなくても!!)を大切にしていかなくては!!という思いに駆られた登山でした。

といったところで今回はここまで。