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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

侵略!アルゼンチンアリ

2013年03月29日
神戸
春爛漫ですね。もうお花見をされたかたもいらっしゃると思います。花より団子、団子より花見酒、そんな神戸自然保護官事務所の多賀です。皆様はどうでしょうか。

サクラといえば街で見かけるサクラのほとんどはソメイヨシノで、しかも自然に増えることが出来なく、人が地道に接ぎ木あるいは挿し木して全国各地で増えたと知ったとき、日本人の並みならぬサクラ好きを思い知りました。さてさて、世の中には人の手によって増え、喜ばれるものもあれば、予期せぬ形で人の手によって増え、問題になっているものがあります。

今回のテーマはこちら、「アルゼンチンアリ防除」になります。防除とは、被害の防止と除去を意味します。

アルゼンチンアリは南米原産で、150年の年月の間に北米、オーストラリア、アフリカやヨーロッパに進出しました。日本では1993年に広島県での定着が確認されて以降、兵庫県、山口県、大阪府、京都府、愛知県、岐阜県、神奈川県へと、徐々に広がっている特定外来生物です。(※特定外来生物とは外来生物法に基づいて指定された生物で、その輸入・飼養・運搬等が規制されています。)




写真左に写っているのは在来アリ、右がアルゼンチンアリになります。写真から見ても分かるように、アルゼンチンアリは全長3ミリ程度と小さく、ぱっと見ただけはそれほど在来種を脅かすようには見えません。ですが!アリというのは自分よりも大きい相手でも群がって攻撃したり捕食したりしますよね。アルゼンチンアリも然り。数を武器に在来種を駆逐してしまいます。アリの巣には通常1匹の女王アリがいますが、彼らの巣には複数の女王アリが存在し、その女王アリはそれぞれ1日60個もの卵を産みます。彼らの繁殖力たるや相当なものなのです。

これでまだエサについてこだわりがあれば良かったのですが、彼らは雑食性ですので、その場その場に応じたエサを見つけられます。

さらに!彼らはおよそ5℃~35℃までの気温の中で活動可能で、コンビニよろしくほぼ365日24時間営業という、まさに勤勉な「働きアリ」なのです。私達が寝ている間も彼らは着々と数を増やし、その分布域を広げ続ける・・・。おそろしい。知れば知るほどこのアリは恐ろしいやつです。

まだまだありますよ・・・アルゼンチンアリは巣の1つ1つが独立し、それぞれの縄張を持っているわけではなく、地域一帯の巣が全て1つの巨大な巣となっているのです!かっこよく言いますとスーパーコロニーを作ってしまうのです。ですからアルゼンチンアリ同士の潰し合いはなく、そのかわりアルゼンチンアリ以外の生物に被害が及びます。

その攻撃力、繁殖力、適応万能性によって在来アリが一掃されてしまった地域もあるとか・・・。ここまで強いと何だか感心してしまいますが、感心している場合ではないのです!

アルゼンチンアリの見分け方


http://www.env.go.jp/nature/intro/5pr/files/r_argentine.pdf

彼らのもう一つの恐ろしさとは・・・その小さな体躯を生かして1ミリ程度の隙間からどこへでも侵入可能なところです。モチロン貴方のお宅も例外ではありません!

砂糖水を含ませた綿に集まるアルゼンチンアリ


家の外だろうと中だろうと、彼らは食べ物に群がります。食べ物が無くとも部屋中行列をなしてワラワラ歩き回り、就寝中に咬みついてきたりします(毒はありません)・・・想像するだけでもげんなりしますね。

人間にとっては不快害虫であり、農業害虫でもありますし、生態系への影響も懸念されております。

世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれたまさに侵略虫!

このような害虫の場合、一番効果的なのはまず侵入を防ぐ、侵入されてしまった場合は早期発見と防除の実施が不可欠になります。

神戸では既にアルゼンチンアリが定着しておりまして、中でもまだまだ分布域が大きくなっていない一区画の防除作業を私どもは始めたところです。詳細について語りたいところですが、少々長くなってしまったので今回はここまで。

続きはまた次回に☆