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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

アクティブレンジャーは山へシバ刈に

2012年12月07日
神戸
最近神戸の街中ではよく木枯らしが吹いています。子供の頃からビル風で上へ上へと吹き上げられる木の葉を見たり、道端の枯葉が積もった部分をわざと音を立てて歩いたりするのが好きな私のような人間には楽しい季節です。どんどん冷え込む毎日ですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか、神戸自然保護官事務所の多賀です。

冒頭の話とはうって変わりますが、皆様「おじいさんは やまへしばかりにいきました」というフレーズを一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。昔話で良くある一節ですよね。

お恥ずかしながら私、この年になるまで何の疑問も持たずにおじいさんは「芝刈り」に行っていたのだと思いこんでおりました。しかしながらよく考えてみると妙な話で、一体おじいさんは山の中で草を刈って何をするつもりだったのでしょう。早速グーグル先生に尋ねてみたところ、おじいさんは「芝刈り」に行っていたのではなく「柴刈り」に行っていたのだとか。この場合の「柴」とは雑木を指し、雑木を刈って燃料などにしていたのではないかとのことです。なるほど。

さて、昔話のおばあさんは川へ洗濯に行き、おじいさんは柴刈りをしていたわけですが、だからといって日々の営みにおいて草を刈る方の芝刈りが行われていなかったわけではありません。といいますのも、昔は畑の肥料や家畜の飼料にするために草原で芝刈りが行われておりました。さらに場所によっては茅場と呼ばれる茅葺屋根や炭俵材を得るための草原が維持されていたそうです。とはいえ、時代は移ろい、人の生活も変わり、肥料や飼料、屋根の姿形も変わっていきました。川で洗濯物をするおばあさんも、山へ柴刈に行くおじいさんの姿も今はなく、茅葺屋根の家屋もあまり見かけなくなった昨今、定期的な芝刈りなどの管理が行われなくなった草原は減少し、草原自体が希少なものになっています。

瀬戸内海国立公園 六甲地域の東お多福山も、国立公園に指定された当時はススキ-ネザサ群落がありましたが、やはり人の手が入らなくなってからは草原は狭まり、主要植生はネザサへと変わりました。そんなネザサ群落を、ススキ-ネザサ群落へ再生させよう!という活動が現在「東お多福山草原保全・再生研究会」によって行われております。ということで、非常に長い前置きになりましたが、私も先日その活動に参加し、「山へ芝刈り」に行って参りました☆

当研究会は、六甲地域や兵庫県内で活動されている様々な市民団体によって構成されており、いずれの方も自然について造詣が深く、いつも様々な事を教えて下さいます。そんなメンバーの方にお聞きしたところ、東お多福山のネザサ草原は、数年前までは背丈よりも高く、さらに密生していたことから、地表に光が届かず他の植物が成長出来ない環境だったそうです。そんなネザサ群落の一部を2007年より実験的に刈取り、光が地表まで届くようにしたところ、草原性植物が芽を出すことが確認されました。以来定期的にササ刈りを行いススキ-ネザサ群落へ回復させる試みが続けられております。




今回は秋の全面ササ刈りということで、参加者60名以上、刈払機も10台以上と気合が入っておりました。で、実際の作業ですが・・・刈払機は経験者しか取り扱えませんので、私は皆さんと一緒に鎌と剪定バサミで草を刈り、そして刈られた草を集めてひたすら運んでおりました。たかがネザサなのですが、それなりに量があると重くなるものです、刈取ったネザサ運びは結構汗をかきました。

そうしていつしか日も傾き始めたころには・・・・・




いかがでしょうか!?

随分サッパリしたと思われませんか?

こうして地表が光に当たるようにしておけば、来年はより多くの草原性植物が芽吹いてくれることでしょう。今から来年の秋が楽しみです!




それではまた次回まで☆