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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

前鬼と靡(なびき)と紙幣と私と

2012年11月27日
吉野
みなさん、こんにちは。
私が言うまでも無くみなさんも感じていると思いますが、最近めっきり寒くなりましたね。
大台ヶ原ではもう雪が降っているそうです。
昨日、大台ヶ原に出張する機会があったので雪を期待しながら行ったのですが、見事なほどの台風のような大雨と風でした。
どうも、雨男疑惑がある杉本です。

先週、奈良県下北山村の前鬼に行ってきました。
前鬼山は七十五靡(なびき)の二十九番目の靡になります。
なびきって何?と思われた方も多いと思います。以前の私の日記にて「靡については別の日に詳しく書きまーす」と書いておりましたが、今日がその日です。
覚えていらっしゃる方はこのまま続きをどうぞ。覚えてない方はこちらをどうぞ→link

大峯奥駈道は言わずと知れた修験の道であり、多くの修験者が今も修行をされています。
この奥駈とは、熊野本宮大社の本宮証誠殿から吉野川の栁の宿まで七十五個ある修行場を巡る修行のことです。
もうお分かりだと思いますが、奥駈中に巡る七十五のポイントのことを靡と言います。
つまり、前鬼は熊野本宮から数えて二十九番目の修行場になるわけですね。

ちなみに熊野本宮が一番で吉野が七十五番であり、一番から順々に巡る奥駈を順峯(じゅんぷ)、七十五番から巡る奥駈を逆峯(ぎゃくふ)と言います。現在は逆峯が主流となっています。

靡って日常会話では「ススキが風に靡く(なびく)」などといった場面で使う言葉です。国語辞書で言葉の意味を調べてみますと、「他の力に従う」や「衰える」、「派手で美しい」「ぜいたく」「おごる」といった、修行とはかけ離れているような意味でした。
では、なぜ修行場を靡と呼ぶようになったのでしょうか。

実は、七十五靡中に七十五箇所の修行場があるのは歴史の整理上そうなった(そうした?)だけであって、昔はもっと多くの修行場があったそうです。
元々は靡とは言わず、縄引(なわびき)と言っていました。縄引が転訛し、靡になりました。縄引とは距離を表す言葉で、熊野本宮から吉野川までの七十五里の道のりを七十五縄引(靡)と呼んでいたそうです。
それが時代の変化と共に意味合いも変わってしまったのでしょうね。

靡の話はこの辺にしておいて、続きまして前鬼で撮った写真を紹介したいと思います。

こちらは、前鬼山登山口に向かう林道からのビューポイントで不動七重の滝です。
水量の多さから、遠くからでも迫力のある力強い滝でした。カメラマンも数名来ており、どうやら人気スポットのようです。


こちらは、三叉という植物で、繊維が強く虫害が少ないことから高級和紙の原料にもなる植物です。前鬼山にはなぜかこの三叉がたくさん群生していました。さらに、なんと三叉は紙幣の原料にもなるそうです。この辺一帯の三叉を使って一万円札を造ったらいったいいくらぐらいになるのだろうと、とてつもなく品の無いことを考えておりました。
いやはやお恥ずかしい・・・


最後はこちら、閼伽坂峠(あかさかとうげ)の双子の木。この~木 なんの木? 気になる木~♪
さて、この双子はスギ?ヒノキ?
実は、右側がスギで左側がヒノキなんです。なんとも仲良くおもしろい成長を遂げた針葉樹達でした。

といったところで今回はここまで。