アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
多様性云々
2012年06月22日
神戸
神戸自然保護官事務所の多賀です。梅雨が始まりましたね、それ以上に、台風が上陸しましたね。神戸自然保護官事務所は街中の大きい建物の中にあるおかげか、あまり台風の影響を受けませんでした。
保護官事務所とはどこか国立公園の中にポンとあるイメージではないでしょうか。国立公園内の交番のような。少なくとも私はそうだったので、アクティブレンジャーを始めた時に「えっ!事務所本当にここでいいの!?」などと思ったりもしました。しばらくしてから、神戸自然保護管事務所には国立公園内に関する相談に来られる方がかなり多いので、それこそ交通の便の悪いところにあっては良くないのだなと思い直しましたが。
さて、でっかい建物の中にいるわけですから、当然ほかの事務所も入っております。で、他事務所の皆様はしっかりオフィスらしい服装をされている中、私達だけが公園内巡視用のがっつり山歩きグッズで身を固めて歩き回っていると、サラブレッドな馬達の群れの中に、一頭だけシマウマが混じっているような気分になります。
まさに珍獣!
なんてね!
脱線はここまでにしておきましょうか。
前回の日記で生物多様性について書こうかなと後先考えずに予告してしまいましたが、考えてみれば生物多様性とはかなり話が広く深く長くなりそうなので、軽はずみに書いてしまったことを後悔しております。
もう、先に断っておきます!今日は長文です!
そもそも、生物多様性って言葉が長いですよね。文字にしても言葉にしても。かといってほかにしっくりくる言葉も思いつかないのですが。そもそも意味は?となれば、すごーく、ものすごーく、単純にいうと、「いっぱいいろんな生きものがいること」ですかね。こんな風に書くと誰か偉い人に怒られそうで実はビクビクしています。
こんなチャドクガ(威嚇中)の幼虫もまた地球の多様な生物のひとつ。
なんで生物多様性が大事なの?なんでそんな色んな生き物が居た方がいいの?と問われれば、それは「その方が全体的に安定するから」と答えたいところですが、それだけじゃ分かり難いですよね。
とても極端な話をしましょう。
とある孤島には、1種類の草と、1種類のウサギと、1種類のオオカミしかいなかったとします。ところがある日、草に病気が流行り、草は激減してしまいました。飢えたウサギは草の根まで食べつくしてしまい、とうとう島には草1本なくなります。すると、あっという間にウサギは餓死、それに続いてオオカミも餓死し、最後に島には何も残らなくなるわけです。
ところが、もしここで草が1種類じゃなくて2種類あったら、もしかしたら片方の草は全然病気の影響を受けなくて、草もウサギもオオカミも全滅することが無かったかもしれません。それが多様性のもたらす安定性ってやつです。
本当はこの例え、極端で単純すぎるのであまり良くはないのですが、いずれにせよ、生き物の種類が少ないということは、それだけ「もし」「なにか」あった場合に代用がきかず、すぐに破綻を迎えてしまうということです。
ここまで書いてやっと生物多様性の入口あたりってところでしょうか・・・。生態の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性ともっと話は広がります。
多様性とは安定性をもたらすとともに人に奇貨を与えてもくれます。特に多くの植物が生成する化学成分は薬効があったり(キナの木から精製されるキニーネはマラリア原虫の特効薬として広く使われていましたね。今も使われているみたいです。)、除虫菊みたいな蚊取り線香の原料になっている、殺虫効果をもつものもありますし、ヘビやクモの毒については神経系の病気に対する薬として研究が続けられています。生物が多ければ多いほど、そういった予期せぬ恩恵が人に与えられる可能性は高まるわけですね。
話が終わらないのでここら辺で止めるとしましょう。とりあえず予告した分だけの責任は果たした・・・のだと思いたいです。
最後にちょっと変わったお花を紹介します。これは私が気に入っている花で、「ギンリョウソウ」といいます。銀の竜の草でギンリョウソウ。別名オバケグサとかユウレイタケとも呼ばれているらしいです。森の中のちょっとじめっとして暗い所でよく見かける気がします。この写真は2週間ほど前に撮影しました。
この植物は草なのに光合成できません。
その理由は見ての通り、葉緑素が無いためです。じゃあどうやって生きているのかというと、樹木と共生している菌に寄生して、木が生成した栄養をパクっています(笑)。
昔、私が読んだ本では腐葉土から栄養を得ていると書かれていましたが、今回調べ直したららどうやらそれは間違っていたようです。侮るなかれ、植物学の進展を。
なにはともあれ、この森の片隅に生える、透明感ある白い花が好きで、そういう意外で面白いものがあふれている世界がとても好きなので、もうそれだけの理由だけど生物多様性ってのを大事にしたっていいじゃないかと思う時もあるわけです。
寄生と共生の話がでたので、次はそっち関係の日記でも書きましょうか・・・なんてことをするからまた後で後悔することになるのですが。
それではまた次回まで☆
保護官事務所とはどこか国立公園の中にポンとあるイメージではないでしょうか。国立公園内の交番のような。少なくとも私はそうだったので、アクティブレンジャーを始めた時に「えっ!事務所本当にここでいいの!?」などと思ったりもしました。しばらくしてから、神戸自然保護管事務所には国立公園内に関する相談に来られる方がかなり多いので、それこそ交通の便の悪いところにあっては良くないのだなと思い直しましたが。
さて、でっかい建物の中にいるわけですから、当然ほかの事務所も入っております。で、他事務所の皆様はしっかりオフィスらしい服装をされている中、私達だけが公園内巡視用のがっつり山歩きグッズで身を固めて歩き回っていると、サラブレッドな馬達の群れの中に、一頭だけシマウマが混じっているような気分になります。
まさに珍獣!
なんてね!
脱線はここまでにしておきましょうか。
前回の日記で生物多様性について書こうかなと後先考えずに予告してしまいましたが、考えてみれば生物多様性とはかなり話が広く深く長くなりそうなので、軽はずみに書いてしまったことを後悔しております。
もう、先に断っておきます!今日は長文です!
そもそも、生物多様性って言葉が長いですよね。文字にしても言葉にしても。かといってほかにしっくりくる言葉も思いつかないのですが。そもそも意味は?となれば、すごーく、ものすごーく、単純にいうと、「いっぱいいろんな生きものがいること」ですかね。こんな風に書くと誰か偉い人に怒られそうで実はビクビクしています。
こんなチャドクガ(威嚇中)の幼虫もまた地球の多様な生物のひとつ。
なんで生物多様性が大事なの?なんでそんな色んな生き物が居た方がいいの?と問われれば、それは「その方が全体的に安定するから」と答えたいところですが、それだけじゃ分かり難いですよね。
とても極端な話をしましょう。
とある孤島には、1種類の草と、1種類のウサギと、1種類のオオカミしかいなかったとします。ところがある日、草に病気が流行り、草は激減してしまいました。飢えたウサギは草の根まで食べつくしてしまい、とうとう島には草1本なくなります。すると、あっという間にウサギは餓死、それに続いてオオカミも餓死し、最後に島には何も残らなくなるわけです。
ところが、もしここで草が1種類じゃなくて2種類あったら、もしかしたら片方の草は全然病気の影響を受けなくて、草もウサギもオオカミも全滅することが無かったかもしれません。それが多様性のもたらす安定性ってやつです。
本当はこの例え、極端で単純すぎるのであまり良くはないのですが、いずれにせよ、生き物の種類が少ないということは、それだけ「もし」「なにか」あった場合に代用がきかず、すぐに破綻を迎えてしまうということです。
ここまで書いてやっと生物多様性の入口あたりってところでしょうか・・・。生態の多様性、種の多様性、遺伝子の多様性ともっと話は広がります。
多様性とは安定性をもたらすとともに人に奇貨を与えてもくれます。特に多くの植物が生成する化学成分は薬効があったり(キナの木から精製されるキニーネはマラリア原虫の特効薬として広く使われていましたね。今も使われているみたいです。)、除虫菊みたいな蚊取り線香の原料になっている、殺虫効果をもつものもありますし、ヘビやクモの毒については神経系の病気に対する薬として研究が続けられています。生物が多ければ多いほど、そういった予期せぬ恩恵が人に与えられる可能性は高まるわけですね。
話が終わらないのでここら辺で止めるとしましょう。とりあえず予告した分だけの責任は果たした・・・のだと思いたいです。
最後にちょっと変わったお花を紹介します。これは私が気に入っている花で、「ギンリョウソウ」といいます。銀の竜の草でギンリョウソウ。別名オバケグサとかユウレイタケとも呼ばれているらしいです。森の中のちょっとじめっとして暗い所でよく見かける気がします。この写真は2週間ほど前に撮影しました。
この植物は草なのに光合成できません。
その理由は見ての通り、葉緑素が無いためです。じゃあどうやって生きているのかというと、樹木と共生している菌に寄生して、木が生成した栄養をパクっています(笑)。
昔、私が読んだ本では腐葉土から栄養を得ていると書かれていましたが、今回調べ直したららどうやらそれは間違っていたようです。侮るなかれ、植物学の進展を。
なにはともあれ、この森の片隅に生える、透明感ある白い花が好きで、そういう意外で面白いものがあふれている世界がとても好きなので、もうそれだけの理由だけど生物多様性ってのを大事にしたっていいじゃないかと思う時もあるわけです。
寄生と共生の話がでたので、次はそっち関係の日記でも書きましょうか・・・なんてことをするからまた後で後悔することになるのですが。
それではまた次回まで☆