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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

糞と足跡といろいろ【動物】

2012年05月31日
竹野
こんにちは。
山陰海岸竹野地区より酒井がお伝えします。

さて、先日猫崎半島に巡視に行ってきました。
猫崎半島というのは竹野浜の海岸沿いにある岬のことで
このような場所です。




標高は最高141M。
実際歩いた感想ではややきつめの散歩コースもしくは極々軽い登山くらいの運動強度ですが、ところどころに危険箇所があるため、岬の先端まで歩かれるときはしっかりとした装備で必ず複数人で登ることようにしてください。

そんなところを歩いて行くと
道にぽつぽつと見つかる

糞。



そして猫崎半島を降りて竹野浜を歩いていて見つかる・・・


あしあと。



実はこれ、すべてシカの忘れ物です。

こういった糞や足跡といった物はフィールドサインと呼ばれており、自然の中で動物がいたことを示す役割を持っています。

フィールドサインというものは糞や足跡以外にもたくさんあります。
かじられた木の実の殻、歯形が残る樹皮、歯で引きちぎられた木の葉、散らばる動物の骨等の食に関するフィールドサインや
巣や、横になって寝た後などの住に関するフィールドサイン、
樹皮に残る爪痕や、角をこすりつけた後といった生活に関するフィールドサイン

ざっと考えただけでもこれぐらいあります。

今回なぜ、このフィールドサインのお話を書いているかと言いますと
このフィールドサイン実は自然観察をするときの楽しみ方として大事なポイントになるからです。


さて、突然ですが、読者の皆さんに質問です。
「森のエビフライ」、「森のパイナップル」という言葉を聞いてどのような想像を皆さんはされるでしょうか?


「森のエビフライ」というのはリスの食事の後のフィールドサイン、「森のパイナップル」というのはムササビの食事の後のフィールドサインのことを言います。
どちらも松ぼっくりの中にある松の実を食べるのですが。
松の実という物は松ぼっくりの松かさの中にあるのでリスもムササビも歯でがりがりと松かさをかじり、松の実をほじくり出します。
リスは地面の上で松の実がなくなるまで、言い換えれば松かさがなくなるまで松ぼっくりをかじるため見た目がひょろっとしたエビフライのそっくりの松ぼっくりができあがるのです。

ムササビも同じように松かさをがりがりかじるのですが、リスとの違いは、ムササビは木の上で松かさをかじるため、食べている最中に松ぼっくりをうっかり地面に落とします。
そして落とした松ぼっくりを拾いに行きません。そのため、中途半端に松かさが残る松ぼっくりが地面に残り、それがちょうど葉を茂らせたパイナップルのように見えるのです。

このように再現性のあるフィールドサインは、その地域の生物相を把握する貴重な「ネタ」を提供してくれるのです。


さて、「エビフライ」と「パイナップル」について文章で延々説明しましたが
ここまで読まれてきて
「文章説明はわかったから、写真を見せてほしい」
と思う読者の方もいるでしょう。
そういった方は・・・

是非、野外に足を運んで実物を見つけてみてください。
松がある森の中なら結構簡単に見つかるものですし
各地の森林で行う自然観察会などに参加してみるのも良いと思います。

もうすぐ6月。野外に出るのにはいい時期です。