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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

Nature and nurture

2012年04月03日
神戸
結局前回の日記では動物の話にほとんど触れませんでしたので、今度は動物の話の中でも、動物の行動に関わる話をしましょう。
ま、あまりお堅い話ではないので、「ふーん、そうなんだー」とか「あー、知ってたし」なんて程度の内容ですが・・・。

さて、4月に入りました。入学、入社、転勤などで新しい土地で新しい生活をはじめられた方も多いのではないでしょうか。私は4年前に関西に引っ越して来たのですが、何よりも当初は結構関西弁に戸惑いを覚えました。最初の数ヵ月はそれこそ「なるほどそういう言い方になるのか。へぇえ。」と思うことが多かったものです。「捨てる」が「ほかす」、「いじる」が「いらう」、「見ないと」が「見やんと」等々。今ではエセ関西弁を話しながら日々を過ごしておりますが、やはり地元の方には違和感のある発音をしているみたいですね。

で、なんで方言の話をしているかというと、実は動物の世界にも方言があるのですね。例えば都会のスズメと田舎のスズメの鳴き声といいますか、鳴いているときのメロディを比較すると違いが出てくるそうです。ですから、都会のスズメを田舎に連れて行くと、田舎のスズメには「なにコイツ、音痴?」みたいなことになって、同じように田舎のスズメを都会に連れて行ったらこれまた都会のスズメから「どっからきたの?」みたいな扱いになるのかもしれません。
音でコミュニケーションをとるのは鳥だけではなく、例えば海中の生物もそうですね。イルカやクジラの鳴き声は、皆さん一度は何らかの形で聞いたことがあるのではないでしょうか。彼らの鳴き方にはパターンがあって、それぞれ意味があるらしいです。いわゆる言語のようなものが存在しているのですね。しかも、その言語というのはその群れによって異なるとか。となると、異なる場所で生まれ育った同種のクジラの群れが2つあったとして、そのクジラの群れはお互い出会った時にお互い何を言っているのかよくわからない状態になるのでしょうか。

それにしても、この鳴き方の違いはどこから生まれるのでしょう?

皆さんは動物行動学という言葉を聞いたことはあるでしょうか?その名の通り、動物の行動を研究する学問で、動物行動学では上記のような題材をよく取り扱います。たとえばウグイスの鳴き方は本能なのか、それとも学習したものなのか。学習したものなら、その鳴き方を教えるのは親鳥なのか、それ以外なのか。ちなみに鳥の鳴き声については多くの研究がされていまして、例えば生まれてから一度も同じ種の鳥の鳴き声を聞いたことが無い鳥でも、多少調子はずれでも大体同じようなメロディで鳴くことが実証されています。つまり、鳥の鳴き方はある程度、本能によって決まっていて、後は環境によってその鳴き方の完成度が変わってくるのですね。
周りの鳴き声を記憶して、その記憶の鳴き声に自分の鳴き声を合わせてゆくので、地方によって鳴き方に微妙な違いが生まれるのでしょう。
クジラの場合も、自分の群れの仲間の鳴き方を主に聞いて育つので、自然と他の群れの鳴き方と違いが出てくるわけです。

また、鳴き方だけでなく、例えば捕食の方法、渡り鳥や大型草食動物の大移動、あらゆる種の求愛行動や、共生等々、どこまでが動物の本能で、どこまでが学習されたものなのか考えを巡らせてみると面白いですよ。

それでは雑多な日記になりましたが、また次回まで☆