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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

摩耶詣

2012年03月29日
神戸
水辺に関連する話が続きましたので、今回は山の話です。
摩耶山の春山開きを兼ねた「摩耶詣」に参加してきました!

この摩耶詣、ちょっと変わったところがありまして、詣でるのは人ではなく馬になります。聞くところによれば、江戸時代から続く馬と人の無病息災を祈願する行事なのだとか。今では移動であれ作業であれ、馬を使うことはほとんどないのですが、昔は馬の無病を祈願するほど馬が重宝されていたのが分かる風習ですね。

さて、桜の花や菜の花を背に乗せた六甲山牧場の馬2頭が摩耶山天上寺でお祓いをうけ、お巫女さんや、はるばる大峰からいらした修験者方々らに囲まれ、掬星台へと練り歩いていきます。みなさん伝統的な衣装を着用されているので圧巻です。




掬星台にたどり着くと、まずは山開き宣言が行われ、次に柴燈(さいとう)護摩が焚かれます。私自身は伝統行事等に非常に疎いので、最初「ゴマをたく」と言われて私は胡麻の木でも焼くのかしらとえらい勘違いしてしまいました。護摩供は歴史の長い儀礼の一つらしく、その一連の流れはとても興味深いです。

私たちが掬星台に到着した頃には既に正方形の縄による結界が張られ、その中央に護摩が設置され、北側と南側の両方に護摩にお供えものらしきものが置かれていました。ちなみに、縄には紙垂(あの正月の鏡餅の前にぶら下がってるヤツです)が飾られているのですが、方角ごとに色が違っていたので、そのあたりにも何らかの由来がありそうです。

すぐに結界の中に入って護摩焚きが始まるのかと思いきや、そうではなく、しばらく結界の手前で修験者達による問答が繰り広げられていました。全部は聞こえなかったのと、聞き慣れない言葉がかなりあって、内容がほとんど理解できなかったのですが、どうやらその地に在住している大師(?)のもとに修験者達が訪れ、その山(?)に入山したいと押し問答をしているようでした。途中、大師らしき人が修験者に対し「仏道にありながらなぜ獣の皮をかぶるっているのか」という問いをしたので、なるほど何故だろうと思わず考え込んだせいで答えを聞きのがしたのが残念です。

さて、この問答が30分ほど続いた後に初めて大師らしき人が結界の中へと修験者たちを招き入れ、今度は修験者たちが護摩の周りで様々な儀式を行います。中でも一番目を引いたのが、結界の四方に矢を射る儀式でした。おぼろげですが「○(東西南北いずれか)方にまします~○万○先の眷族をつらなう龍神~」といったフレーズの後、矢が放たれました。どうも四方の龍神とともに邪悪を祓っていたようです。この矢は受け取ると厄除けになるらしく、取りに行った人もいました。他にも護摩の前で刀を用いて印を切ったり、斧で空を切るしぐさがありましたが、多分邪を払う行為かなと思います。

このあたりで体が冷えてしまったので摩耶鍋をいただきました。粕汁をお味噌で味付けしたものと思われますが、少し冷え込む春先の山頂にはぴったりで美味しかったです。皆様も機会がありましたら是非摩耶詣の摩耶鍋を☆

そうして一通りの儀式が完了して初めて護摩に火が入れられます。ここから大師らしき人が念仏(?)を唱え始め、修験者さん達もそれに倣っていました。最初は護摩から白い煙がもうもうと出るだけですが、最後のあたりではかなり強い炎になり、修験者の方々はあんなに近くに居て大丈夫なのだろうかと思わず心配してしまいました。護摩を焚いている間はお供え物や、祈願内容が書かれたお札が次々とくべられ、終わりにはお祓いをうけた厄除けの昆布が参加者に配られるそうです。また紙垂も持ち帰りが出来、これもまた厄除けになるのだとか。



 
残念ながら別件で最後まで見学はできませんでしたが、代々受け継がれてきた風習が楽しめるイベントでした。皆さんも興味がありましたら、来年是非ご参加ください!