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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

寒いのがお好き? 【動物】

2012年03月06日
吉野
 皆さん、こんにちは。
5日の啓蟄を過ぎ、そろそろ昆虫が動き出す季節ですね。私もワクワクしてきます。
さて、「暖かくなると昆虫が這い出てくる」と思いがちですが、今回は寒い時期に逆戻りして、寒い時期に元気?に活動する昆虫をご紹介します。皆さんは、寒い冬の夜の明かりに薄茶色など地味な色をした蛾がとまっているのを見たことがあるでしょうか?「寒い時期にまで蛾がいるのか」と冷たくあしらわれそう?ですが、何とこの蛾たちは、「寒い時期にしか成虫にならない蛾」なのです。その名も、「フユシャク」です!漢字では「冬尺蛾」と書く「(成虫が)冬にあらわれる尺取り虫」のことです。

写真:チャバネフユエダシャクのメス(2011年12月29日撮影)

上の写真は、「チャバネフユエダシャク」というフユシャクです。このフユシャクは、吉野熊野国立公園の北端にある吉野山の公園案内の看板についていました。しかしこのフユシャク、何かおかしいと思いませんか?

そうなのです!「蛾なのに、翅がない」のです!!オスは立派な翅を持っていて自由に飛べるのですが、多くのメスは翅がないのです。「翅があると体温がどんどん逃げてしまうので、翅がなくなった」説や「卵をたくさん抱えているから、飛べない」説など、詳しいことは分かっていないようです。その他にも、フユシャクの成虫は口がなく、成虫になってから食べ物を食べない種が多いなど、とても変わった蛾なのです。
皆さんもよくご存じのカブトムシやモンシロチョウなど、多くの昆虫は暖かい時期に成虫になりますが、中にはフユシャクの様に、寒い時期を選んで?成虫になるものもいるのです。では、なぜ寒い時期に成虫になるのかというと・・・

「寒い時期は、フユシャクの天敵が少ないから」と言われています。確かに、暖かい時期よりも寒い時期の方が生き物の活動が鈍るので、「なるほど!」と納得させられます。これだけいろいろな特徴をもった蛾ですが、まだまだ分からないことが多い昆虫なのです。

秋や冬になると、「昆虫はいなくなる」ということをよく耳にしますが、決していなくなるのではありません。誰にも見つからないように、こっそり隠れているのです。これから暖かくなるにつれて姿を見せ始めますが、昆虫は季節に関係なくいつでも私たちのすぐ近くで生きている「隣人」なのです。