近畿地方のアイコン

近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

ソハヤキ要素 【動物】【植物】

2012年01月11日
吉野
 皆さん、明けましておめでとうございます。今年もAR日記をよろしくお願いいたします!

 さて2012年の最初は、紀伊半島とその他の生き物の関係についてお伝えします。皆さんは、「ソハヤキ要素」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 漢字では、「襲速紀」と書きます。このそれぞれの言葉の意味はというと・・・
南九州の古い呼び名「襲の国(そのくに)」と九州と四国の間の豊予海峡の「速吸瀬戸(はやすいのせと)」、紀伊半島の「紀伊の国(きいのくに)」のそれぞれの頭文字を取って「襲 速 紀」なのです(※)。では、何を意味しているかというと・・・

九州と四国、紀伊半島のそれぞれの南側に共通の生き物がいる!!というものなのです。
(※)名前や呼び名は、他にも説があります。


図:中央構造線(赤線)と「襲速紀要素」の範囲(緑線内)

 上の図に出ている「中央構造線」とは、「1000㎞にもなる長い谷」であり、長い断層のことです。この「中央構造線」より南の場所では、共通の生き物が暮らしているのです。『それぞれが海に隔てられているのに、なぜ?』と気になるところですが、はるか昔に陸続きになっていたなど、地形の変化などの出来事が関係しているようです。私たちの目では「今」しか見ることができませんが、何千年、何万年と「長い目」で見ることができれば、もっと分かりやすいのかもしれません。

 では、どんな生き物がいるのかと言うと・・・


写真:大峯や大台ヶ原でよく見られる植物たち

 上の写真に出ている4種類の植物たちが「襲速紀要素」の植物たちの一部なのです。名前をよく見てみると、「ツクシ(筑紫)」や「ヒコサン(英彦山)」といった九州の地名が付いていて、私も初めて見たときは『なぜ?』と思っていたのですが、「襲速紀要素」を知ってからは『なるほど!』と納得できました。
 「襲速紀要素」は主に植物(植生)を指すようですが、動物にもあるようです。その中には・・・


写真:この青光りする生き物と言えば・・・

 何と、大台ヶ原のマスコットキャラクターにもなっている「オオダイガハラサンショウウオ」も紀伊半島だけではなく、四国、九州にも分布しています。今では研究が進み、別種や亜種とされているようですが、元は一つの種だったようです。
 このように、離れている土地でも思わぬところで共通点がある場合があります。私は、普段見ている動植物が他の土地でも見られることに、過去の出来事などを想像してとても楽しくなります。皆さんも、この動植物たちの観察に吉野熊野国立公園に足を運んでみてはいかがでしょうか。新鮮な気持ちで動植物たちを見ることができるかもしれません。