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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

完成検査 【利用・施設】

2011年11月21日
吉野
 皆さん、こんにちは。
11月9、10日に大峯地区の防鹿柵の完成検査のため、弥山に行ってきました。前々回、前回と連続で弥山への登山ですが、今回は巡視ではなく、完成検査のために行ってきました。

 今回もいつもの登山道を進んでいきます。天気は曇、気温も低すぎない登りやすい状態でした。時間に余裕があったのでゆっくり登る予定でしたが、思いのほかスイスイ進み、予定よりも30分早く山頂に到着できました。山頂についてすぐ、今回完成検査を行うもののひとつが目に入りました。

写真:左)テーブルの間に見慣れたものが! 右)近くで見るとこんな形

 皆さんは、上の写真のものが何かお分かりですか?


正解は、「グレーチング」です。グレーチングとは、板が十字に組まれているものです。では、これが何の役にたつのかと言うと・・・


正解は、「ニホンジカにとって足場が悪くなる」です。私たち人間にとっては何の問題もないのですが、足が細いニホンジカにとっては、このグレーチングが「歩きにくくてしょうがいないもの」になるのです。もし、このグレーチングの溝に足が挟まって骨折などしてしまえば、動けなくなって死んでしまう可能性があるので、このグレーチングを嫌がって近づかないのです。まだグレーチングに苦戦する姿を見たことはありませんが、誰も引っかかることなく避けているニホンジカもなかなか賢い生き物だと感心してしまいます。

 翌日、別の場所の完成検査を行いました。その際に、新しく設置された防鹿柵に沿ってニホンジカの足跡が見つかりました。

写真:左)新しく設置された防鹿柵 右)柵の際にはシカの足跡が!

 今まで通っていた場所に柵ができ、戸惑っていたのでしょうか。柵に沿って随分長い距離に足跡が見られました。ニホンジカにとっては困った出来事かもしれませんが、山全体の自然環境を考える場合には、増えすぎてしまったニホンジカの食害を防ぐためのこうした取組みも、とても大切です。「自然環境」を考えるときには、一つの生き物のみに焦点を合わせるのではなく、全体を見渡さなければいけないと再認識させられました。