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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

~太古の堆積物が眠る海跡湖大池とにほんの里須賀利巡り~

2011年02月07日
熊野
 先週末の5日、穏やかな暖かい日差しが差す好天の中、吉野熊野国立公園内の三重県尾鷲市須賀利にて自然観察会~太古の堆積物が眠る海跡湖大池とにほんの里須賀利巡り~を開催しました。
 
 本観察会の開催地となった大池は、陸の孤島と呼ぶに相応しい場所で、船以外での訪問が困難です。今回のイベントでは、このような場所にある海跡湖※1大池にて自然観察をした後、にほんの里100選※2に選ばれた須賀利にて、人と自然との営みについてお話を聞いたり町並みを散策しました。
※1海跡湖
かつて海だった所が砂丘、砂嘴、砂州の発達により海岸の湖となったもの。
※2にほんの里100選
朝日新聞社と森林文化協会により、人々の暮らしによって育まれてきた、すこやかで美しい里を100ヶ所選出した事業(環境省は後援)。対象となる「里」は集落と、その周辺の田畑や野原や草地、海辺や水辺、里山などの自然からなる地域で、1.景観、2.生物多様性、3.人の営みの3点の評価基準により選定された。


 普段は尾鷲と須賀利両港を結んでいる巡航船に乗って尾鷲港を出発しました。
 大池に行くまでの間、船から見えるこの付近の特徴的な景観について講師の方が説明して下さり、船内でも内容の濃い観察会となりました。
沿岸域は遠浅の海なので、巡航船で沿岸まで行き、動力付き、手漕ぎと2回小船に乗りかえて大池に到着しました。

合わせて3槽使用して上陸

 ハマナツメは海跡湖周辺や海岸部でも直接海水の影響を受けないかなり限定的な場所に生育する植物で、全国的に生育できる環境が減少しており、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類になっています。大池の湖畔にみられるハマナツメの群落の規模は日本有数です。近年シカ等による食害を受けています。現在環境省では詳細を把握するための調査中なのですが、ここ2~3年の短期間に急激に減少してきたようです。

シカの採食からハマナツメを保護するための網

 シカは、地面近くの植生(下層植生)にも大きな影響を与えています。シカが忌避する植物だけが残り、あとは全て食べられてしまっています。

シカが食べないチョウジソウ以外、ほとんど下草は確認できません。(2010.8.25撮影)

 講師のお話によると、今ではシカが採食できる高さまでの植物がほとんど無くなったブラウジングライン※3ができているのですが、以前は歩行が困難なくらい下草に覆われていたそうです。
※3ブラウジングラインについては、吉野の青谷ARが以前の日記で分かりやすく解説していますので、こちらをご覧下さい。http://kinki.env.go.jp/blog/2008/05/14/index.html


 この続きは次回に投稿しますので、よろしくお願いします。