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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

とち餅 【植物】【その他】

2010年12月28日
吉野
 皆さん、こんにちは。
もう今年もあとわずかですね。
正月といえば・・・門松、餅(鏡餅)、凧、お年玉など・・・様々なものが思い浮かぶかと思います。その中でも今回は「餅」についてお伝えします。
ひと言に「餅」と言っても、餅米をついただけの白い餅からヨモギを交ぜた草餅など、たくさんの種類があると思います。私は草餅が好物なのですが、吉野へ来てからもう一つ好物ができました。
それは「とち餅」です。とち餅は、磨り潰されたトチノキの実が入った餅のことです。このように書いてしまうと簡単に作れそうなのですが・・・このトチノキの実は灰汁(アク)が強く、そのままや水に漬けるだけでは、とても食べられるものではありません。灰を入れた水で数日、灰汁抜きをしっかり行って、ようやく食べられるようになります。食べられるようになるまで時間と手間がかかるものですが、昔から食べられている貴重な食料であるとともに、とても栄養価が高いので、病人食でもあったのです。

写真:商品化されたとち餅(赤丸内)

 とち餅は、このような姿(?)をしています。では、原料のトチノキの実はどのようなものかと言うと・・・

写真:上)トチノキが生育している谷筋 左下)殻を取る前のトチの実 右下)殻を取った後のトチの実

 上の写真の右下の様に、トチノキの実はまん丸とした栗のような形をしています。大峯地区では、大きな谷筋に立派なトチノキの大木を見ることが出来ます。しっかり探すと、たくさんの実を見つけることができるのですが、殻を剥かれ、実が無くなったものも良く見かけます。トチノキの実は、イノシシやニホンジカなどの食料にもなっているようです。実を巡った争いは、正に「早い者勝ち」です。誰が先に見つけるか、見つけた者が食料にありつけるといった、動物たちの競争の世界をのぞき見ることができます。
(※)国立公園の特別保護地区内では、動植物の採取(実も含む)も規制されています。このエリアでの木の実については、動物優先でお願いいたします。

 今回のアクティブ・レンジャー日記が2010年の最後となります。1年が経つのは早いものです。つたない文章ではありますが、今年も皆さんに吉野熊野国立公園の素晴らしさ、生物多様性の面白さなどをお伝えしてきたつもりです。読んで下さった皆さん、ありがとうございました。来年も、より面白い・読み応えのある日記にしていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします!
それでは皆さん、良いお年を!!