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近畿地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]

冬支度 【動物】

2010年11月30日
吉野
 皆さん、こんにちは。
最近、出勤時に気になるものをよく見かけます。
その気になるものとは・・・「霜」です。毎朝とても寒いのですが、近くの畑一面に霜が降りているのを見ると、寒さに追い打ちをかけられ、活動意欲を奪われてしまっています。皆さんのお住まいの地域は、いかがでしょうか。

 さて、今回はそんな寒さを乗り切ろうとする生き物についてお伝えします。「冬になると虫は居なくなる」という言葉をよく耳にしますが、実際は冬でも昆虫が居なくなることはありません。寒い冬を乗り切るために隠れているのです。成虫や幼虫で冬を越す種類でも、冬はほとんど動けません。つまり、危険が迫っても逃げられないので、隠れる場所はとても重要になってきます。そんな場所が吉野自然保護官事務所のすぐ近くのエノキ(ニレ科)の根元にもありました。

   ↓この幼虫が・・・

写真:上)エノキの葉上のゴマダラチョウの幼虫(11月19日撮影) 下)エノキの根元で越冬するゴマダラチョウの幼虫(11月30日撮影)

 上の2枚の写真は、ゴマダラチョウ(タテハチョウ科)の幼虫です。このチョウは、幼虫で冬を越します。暖かい季節はエノキの樹上で葉をムシャムシャ食べている(※)のですが、冬が近づくと根元まで降りてきて、落ち葉の下で寒さに耐えているのです。しかも!活動中は緑色、越冬中は茶色?と、葉の色に合わせて、目立たないように体の色まで変えてしまいます。
(※)もっと活発な時期のゴマダラチョウの幼虫が見たい!という方は、こちらをどうぞ!『2009年7月28日 あなたはだあれ?【動物】(竹野自然保護官事務所 高田アクティブ・レンジャー)』
http://kinki.env.go.jp/blog/2009/07/28/index.html

 幼虫を見つけたとき、根元の落ち葉の中からクモなどがたくさん出てきました。落ち葉の下は安全できっと暖かいのでしょう。様々な生き物の越冬場所になっているようでした。

 ゴマダラチョウの他にも、チラチラと顔を覗かせる太陽を求めて、キタテハ(タテハチョウ科)が日光浴をしていました。

写真:ヨモギの葉上で日光浴をしていたキタテハ(11月19日撮影)

 キタテハは成虫で冬を越す種類で、翅の裏側(閉じた時に見える面)が枯れ葉そっくりです。安全に生きて行くための知恵でしょうか。昆虫の環境への適応には、いつも驚かされます。
 これから本格的な冬を迎えますが、皆さんも寒さに負けず、昆虫たちの冬の生活を覗いてみてはいかがでしょうか。枯れ葉の中や石の下など、意外と身近なところで越冬していますよ。