アクティブ・レンジャー日記 [近畿地区]
旅をするチョウPart3 【動物】
2010年10月22日
吉野
皆さん、こんにちは。
日に日に寒さが増していますね。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
10月14日に国道309号線沿いにある弥山(みせん)の麓にあるモノレール駅舎まで行ってきました。麓とは言え、標高が940mほどにあるので、気温は低く、少し風も出ていました。そんな中、キク科植物の花にシジミチョウが飛んできているのが目に付きました。
写真:上)キク科植物で吸蜜するウラナミシジミ(シジミチョウ科)のメス
下)翅の内側は綺麗な青色
※上下とも同じ個体(10月14日撮影)
上の写真のシジミチョウは、「ウラナミシジミ」という名前のチョウです。このチョウの名前の由来は、「翅の裏(外側)に白い波状の模様があるチョウ」なので、「ウラナミシジミ」なのです。このチョウは、都会や荒れ地など、どこでも見られるヤマトシジミ(翅の表は灰色、裏は青色の小さなチョウ)やベニシジミ(オレンジ色の小さなチョウ)よりも一回りほどの大きいので、比較的分かりやすい種類です。また、この幼虫はクズなどのマメ科植物の花や蕾、実を食べます。同じマメ科のエダマメやソラマメなど皆さんの食卓を飾るマメ類を一足先に食べてしまうこともあるのです。秋頃にはクズが生い茂る場所やマメ畑で飛んでいる姿を見ることができます。
何と、この小さなチョウも旅をするのです!「旅」と言っても、一方通行の「旅」なのです。行くだけの片道切符で大丈夫なの?と思いますが、これが大丈夫ではありません。本来南の暖かい地域のチョウなのですが、毎年気温が上がった頃に少しずつ北上します。北上した個体は、夏や秋など暖かい時期は良いのですが、冬を迎えると寒さによって死に絶えてしまいます。しかし、また暖かな季節になると南で繁殖していた個体がまた北上するのです。
冬になれば死んでしまうのに、なぜ北上するの?と不思議に思いますが、理由など詳しいことはよく分かっていません。しかし、移動をすることで新しい生活の場所が見つかる可能性もあります。小さな昆虫ですが、こうやって環境の変化に適応し、命を繋いできたのでしょう。このような移動で、いろいろな環境に適応することが、長い年月を経て新しい種類を生み、生物多様性に繋がるのです。
このように、ウラナミシジミの様な体が小さな生き物でも、活動範囲が大きい生き物にとっては、広い生活場所が必要です。私たちが身近な場所にどんな生き物(動物、植物)が棲んでいるかを知ることが、私たちと生き物の共存について考える第一歩になるはずです。
日に日に寒さが増していますね。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
10月14日に国道309号線沿いにある弥山(みせん)の麓にあるモノレール駅舎まで行ってきました。麓とは言え、標高が940mほどにあるので、気温は低く、少し風も出ていました。そんな中、キク科植物の花にシジミチョウが飛んできているのが目に付きました。
写真:上)キク科植物で吸蜜するウラナミシジミ(シジミチョウ科)のメス
下)翅の内側は綺麗な青色
※上下とも同じ個体(10月14日撮影)
上の写真のシジミチョウは、「ウラナミシジミ」という名前のチョウです。このチョウの名前の由来は、「翅の裏(外側)に白い波状の模様があるチョウ」なので、「ウラナミシジミ」なのです。このチョウは、都会や荒れ地など、どこでも見られるヤマトシジミ(翅の表は灰色、裏は青色の小さなチョウ)やベニシジミ(オレンジ色の小さなチョウ)よりも一回りほどの大きいので、比較的分かりやすい種類です。また、この幼虫はクズなどのマメ科植物の花や蕾、実を食べます。同じマメ科のエダマメやソラマメなど皆さんの食卓を飾るマメ類を一足先に食べてしまうこともあるのです。秋頃にはクズが生い茂る場所やマメ畑で飛んでいる姿を見ることができます。
何と、この小さなチョウも旅をするのです!「旅」と言っても、一方通行の「旅」なのです。行くだけの片道切符で大丈夫なの?と思いますが、これが大丈夫ではありません。本来南の暖かい地域のチョウなのですが、毎年気温が上がった頃に少しずつ北上します。北上した個体は、夏や秋など暖かい時期は良いのですが、冬を迎えると寒さによって死に絶えてしまいます。しかし、また暖かな季節になると南で繁殖していた個体がまた北上するのです。
冬になれば死んでしまうのに、なぜ北上するの?と不思議に思いますが、理由など詳しいことはよく分かっていません。しかし、移動をすることで新しい生活の場所が見つかる可能性もあります。小さな昆虫ですが、こうやって環境の変化に適応し、命を繋いできたのでしょう。このような移動で、いろいろな環境に適応することが、長い年月を経て新しい種類を生み、生物多様性に繋がるのです。
このように、ウラナミシジミの様な体が小さな生き物でも、活動範囲が大きい生き物にとっては、広い生活場所が必要です。私たちが身近な場所にどんな生き物(動物、植物)が棲んでいるかを知ることが、私たちと生き物の共存について考える第一歩になるはずです。